- プロフィール
- 有名大学文学部を卒業後、広告・イベント会社に就職し、プロデューサーとして活動。社会にインパクトを与え、存在意義が大きい仕事を求め、2次請けのシステム会社に転職。さらに1次請けのプロジェクトを担うため、転職活動を行い、NTTデータの内定を獲得。
だが、社会に出て仕事をする中で、より存在意義があり、人々の生活に役立つことに力を注ぎたいと思うようになった。転職活動を経て、入社したのが2次請けのシステム会社だった。
同社は公共系の仕事が多く、社会のインフラを作っている実感があった。しかし、1次請けのずさんな管理を目の当たりにして疑念が生じた。自分ならもっとうまくできる――。
1次請けのシステム会社への転職を目指し、再度転職活動に挑んだ。支援するパートナーはリーベルだ。現職が忙しい中、リーベルの担当者は寄り添ってスケジュールを調整。面接に集中することができ、見事NTTデータの内定を勝ち取った。
全く異なる業種から未経験でIT業界に入り、2次請けから1次請けの最大手、NTTデータへのキャリアはどのように作られ、転職に成功できたのか。一部始終を語っていただいた。
イベント会社からIT業界への転職を目指す
大学では東南アジアの農村部を研究した。卒業後、国外で働き出した同期もいた中、自身は国内のイベント会社で働き始めた。郷里の父が地域活性化に汗を流していた姿を思い出し、自分もイベントのノウハウを得て力になりたい。そんな思いからだった。
—— 大学で東南アジアの農村に泊まり込み、現地の生活を研究するフィールドワークに力を注いでいたそうですね。
Yさん:地域学という学問を専攻しており、地形の測量や生活の調査、在住者のインタビューなどを通じて、地域の特性から文化の成り立ちを紐解く研究に従事しました。ただし、その研究を活かした仕事に就くことはなく、卒業後に就職したのはイベント会社でした。私は郷里の商店街で生まれ、過疎化していく中で地域活性化に懸命に力を注ぐ父の姿を見てきており、イベント運営や広告、プロモーションのノウハウを得て、少しでも力になりたいという思いがあったからです。
—— 就職後はどのような活動を。
Yさん:都内にある科学系の施設のトータルプロデュースを担当しました。展示物の企画、営業交渉、チラシなどの制作進行、講演会、子供向けイベントの企画・運営など、様々な活動を行いました。単に広告や制作、イベントを担うだけでなく、企画から営業、そして実際にお金を動かすところまで一貫して経験でき、「一通り自分は何でもできる」と自信が付いた点が大きかったと感じています。
—— その会社には3年半勤めましたが、なぜ転職を。
Yさん:子供にプログラミングを教えるイベントを行うなど、一定の意義を実感できる仕事もありました。しかし、大規模でないため、社会へのインパクトという点では小さいと思っていたことも事実です。それは決してゼロではないのですが、自分の目が届く範囲までしか影響力を与えられないことにもどかしさを感じていました。そこで、より社会的意義を見出せる会社に転職しようと思うようになりました。
—— 考え方としては、同業他社への転職を目指すのが一般的かと思います。
Yさん:私も同じような考えで、最初はイベントや広告の会社を中心に応募先を探していました。けれども、たとえより大きな会社に入ったとしても、社会への影響力という点では今とそれほど変わらないのではとも考えるようになりました。では、どんな仕事が自分には向いているのか。そう突き詰めていく中で、ふと脳裏をよぎったのが、ものづくりを担う仕事です。自分はイベントの業務の中でも制作物を作るのが好きだったからです。特に子供たちと一緒に携わったプログラミング教室が印象に残っており、漠然と「IT業界がいいのではないか」と思うようになりました。
—— イベント業界からIT業界へと全く畑が違う仕事への転職になります。
Yさん:確かに今までのキャリアとは異なる道になります。ただ、少子高齢化で労働人口が不足する中で、どの業界もシステムによる自動化やAIの活用は必須であり、プログラマやエンジニアの意義や役割は今後さらに大きくなっていきます。私が考える社会的意義という視点にも合致している職種です。「自分はまだ20代半ばであるし、他の仕事に挑戦するなら今しかない」。そんな思いで、IT業界で転職先を探すことに決めたのです。
突如リーダーに指名され、壁を乗り越える
未経験でのIT業界への転身。転職エージェントに支援を依頼したが、有効なサポートは受けられなかった。そうした中、自力で見つけたのが2次請けのシステム会社だった。
—— 初めての転職活動です。どのように進めましたか。
Yさん:転職エージェントに支援を依頼しましたが、単に求人票を送ってくるだけで、「このレベルであれば自分で調べるのと大差ない」というのが率直な思いでした。履歴書など書類も担当者に修正されましたが、「なぜそのように修正したのか」と尋ねて、納得する回答が得られなかった点にも不信感を抱きました。そこで、自力で探すことにして、中堅システム会社に応募して内定を取得することができたのです。2次請けの会社でしたが、金融や国のインフラなど公共性の高いプロジェクトを手掛けており、社会的意義が大きい仕事を担えることが決め手となりました。
—— エンジニアとしての仕事に戸惑いはありませんでしたか。
Yさん:金融機関のシステム更改やアプリケーションの開発のプロジェクトにアサインされましたが、自分でも驚くほどすぐに業務に順応できたのです。というのも、最初の案件はテスト工程からの参画で、顧客との交渉や資料作成の担当となったため、自分の今までの経験を活かすことができたからです。次の案件ではプログラミングなどの作業が発生し、キャッチアップするのに多少時間はかかりましたが、それでもあまり苦労せず、「気が付いたらできていた」というのが正直なところ。難しいプログラムは他のベテランにもカバーいただき、案件も遅延せずに仕事は順調でした。
—— 壁やハードルもなかったのですね。
Yさん:ただ、それは最初の2年間だけでした。次のプロジェクトで途中でリーダーが抜け、多くのベテランエンジニアも他の案件に移ってしまった結果、自分がリーダーに指名され、若手主体のメンバーをまとめていく立場になったからです。若手主体になったことで、今までのように「難しい作業はベテランに助けてもらう」ということもできず、早急な技術力の向上が要求されました。また、管理する立場になり、マネジメント力も必要になります。そこで、初めて本気になって、プログラミングも管理も行えるように努力する日々を送ったのです。
—— 苦しい毎日だったのでは。
Yさん:それが、苦しいというより、新しく色々なことができるようになり、楽しかったというのが率直な気持ちです。片道1時間半かかる通勤時間を利用してプログラミングの本やプロジェクト管理の本を片っ端から読み、改善案を作っては試すことを繰り返しました。チームが担当している作業以外も巻き取り、自分もメンバーもできることを増やしていきました。そうして積極的に仕事を行った甲斐もあり、プロジェクトはうまく回り、顧客の信頼を勝ち取ることができたのです。
—— その後は順調にステップアップできましたか。
Yさん:それが、次の案件も非常に難しい条件が多く大変でした。国の機関向け業務支援アプリの開発プロジェクトでチームリーダーとして途中から参加したのですが、非常に専門的な業務知識が要求され、どう進めたらよいか頭を悩ます日々を過ごしました。しかし、何とかまとめていかねばなりません。そこで、資料を率先して徹底的に読み込み、要件定義後の設計のフェーズでも自ら手を動かして設計書を書き、まずは自分が知識ややり方を確立してからメンバーに落とし込んでいくことを徹底して行っていきました。こうして、常に自らが先頭に立って作業を行うことによって、メンバーも付いてきてくれるようになり、難局においてもチームがうまく動く体制を整えることができたのです。
リーベルに出会って思った「話が通じる」という実感
技術力が向上し、チームの管理もできるようになり、エンジニアとして自信が付いた。だが、そのまま所属する会社で力を発揮するのではなく、再度転職の道へと進む決心をした。どんな思いがあったのだろうか。
—— IT業界に入り、システム会社で約6年働き、再度転職を決心しました。
Yさん:ものづくりは楽しかったのですが、その中で自分は何に一番向いているかと考えた時、顧客との会話の中からニーズを引き出したり、調整をしたりするのが得意であり、面白いと感じるということに改めて気付きました。また、プロジェクトを進める中で、1次請けの担当者のやり方に違和感を抱いていたことも転職をしようと思った理由の一つです。進め方に関して問題意識があり、「これは周知してください」「周知する場合、ここは気を付けてください」と、2次請けの私から1次請けに進言する機会が多かったからです。その方が2次請けも3次請けもやりやすくなるのに、1次請けが主導しない状況を煩わしくも思っていました。であるなら、自分が1次請けの立場になって自ら理想的な進め方をする方が合理的であると考え、1次請けの会社に入ろうと考えたわけです。
—— 2次請けの会社は「1次請けに言われた通りやればよい」と考える傾向もあり、より良いやり方を進言する人は少ないと思います。それに気づく力があり、より効果的に実行したい思いがあったからこそ、転職という決断に至ったのですね。実際に転職活動はどのように進めましたか。
Yさん:まずは転職エージェントに相談しようと考え、転職サイトに登録しました。ただし、前回、自分が望むようなサポートを受けられなかったため、今回も同じような状況になったら、自力で探すつもりでした。登録した当初は、前回同様、大量のオファーメールが届き、どれも自分の要望を満たすものではなく、結局変わらないなと思って半ばあきらめていました。
そうした中、数多くの求人票のうち一つだけ、自分に合いそうな企業が目に留まりました。調べてみると、その企業に多くの転職者を紹介し、内定を得ている有望なエージェントがあることを知りました。それがリーベルだったのです。
—— そこで、早速コンタクトを取り、面談をしたのですね。
Yさん:そうです。面談した第一印象は「話が通じる」ということでした。これまで会ってきたエージェントの担当者は、そもそも私の要望に見合った求人票を提案することなく、SEの仕事にも詳しくないため、不満を感じていました。それが、リーベルの担当者はSE出身者であり、私の要望も丁寧に拾って提示する求人票も的を射ており、初めてエージェントに対して信頼感を持つことができたのです。
—— その後、リーベルの支援を受けることに決めて、転職活動が始まりました。
Yさん:リーベルでは履歴書、職務経歴書の添削や模擬面接も丁寧に行っていただき、事前に着実に準備することができました。特に有難かったのが、応募する会社を話し合いながら5社に絞れたことと、多忙な私の業務に配慮して面接のスケジュールを調整していただけたことです。前回の転職活動では数多くの会社に応募し過ぎて、仕事が忙しかったため準備もできず、面接をこなすのも大変でした。リーベルの支援はどれも今までのエージェントでは受けられなかったものであり、気持ち的にも余裕を持って面接に臨むことができたのです。
—— 5社の中に今回内定を取得したNTTデータの求人票もありました。同社の面接はいかがでしたか。
Yさん:リーベルの担当者から、事前に想定質問リストを提供されており、回答も考えていたので、答えに困るような場面はありませんでした。質問も実績や私の仕事に対するスタンスを問うようなものが多く、自分の気持ちを素直に話せば答えられるものでした。「社会的意義のある仕事がしたいこと」「2次請けでありながら1次請けの担当者に対して進言してきたこと」「その思いを1次請けの会社のプロジェクトで活かしたいこと」など、自分が軸としてきた考え方や仕事への向き合い方をしっかりと伝えることができたと思います。また、元々私は筋道を立てて話すのが得意な方であり、論理的に会話を組み立てて説明できる点は評価されたと考えています。
—— 実績だけでなく、考え方やその説明の仕方も面接では問われたということですね。
Yさん:加えて、直近で携わった、国の機関向けのプロジェクトで得た専門的な業務知識がNTTデータでの案件で活用できる可能性がある点も大きかったと思います。そうしたいくつかの評価があり、NTTデータから内定を取得することができたのです。
大事なのは「何をしたいのか」を明確にすること
NTTデータから内定を取得した。さらに、他の大手SIerからも内定を得ることができた。どちらも1次請けのプロジェクトで自分が考えてきたことを実践する機会がありそうだ。どちらの道に進むべきかは、内定後に設けられたオファー面談で判断することにした。
—— 両社のオファー面談を受け、どのように考えを整理しましたか。
Yさん:私はこれまで様々な業界のプロジェクトを担当し、多くの業務知識を蓄積してきました。しかし、2次請けのため、案件ごとに業界が変わることが多く、せっかく覚えた知識を活かせないことに歯がゆさを感じていました。転職後はそうして蓄積した業務知識をできるだけ活用できる会社に行きたいというのが望みです。
その点で見た場合、NTTデータは私が携わった国の機関向けのプロジェクトと関連性の深い部署に配属が決まっており、業務知識を活かす道が開けます。一方、他の大手SIerは今までと同じように頻繁に業界が変わる可能性が高いということが、面談を通じて分かりました。
—— NTTデータの方が自分が理想とする働き方が実現しそうだということが見えてきたのですね。
Yさん:それに加え、NTTデータは会社の規模が大きく、様々な業界の案件が豊富にあることも利点です。最初は1つの領域で継続して実績を積み、将来的に他の業界に移ってそこで業務知識を深めるというキャリアも視野に入ってきます。すなわち、現状、将来ともに自分が求めている環境がNTTデータにはあると考え、同社への入社を決めました。
—— 今回、転職が成功した一番の理由は何だと思いますか。
Yさん:一番大事だと思ったのは、自分が何をしたいのかを明確にすること。私の場合、社会的にインパクトのある仕事を1次請けの会社で行いたいという目標があったため、面接ではその考えを軸に話を組み立てることで、説得力のある回答を返すことができました。これが、「今の会社が嫌だから転職したい」「年収を上げたい」「ワークライフバランスを重視したい」といった思いだけでは、熱意のこもったアピールはできないのではないでしょうか。もっと深く自分の心を見つめ、「こうしたい」「こうなりたい」という自分の原点や欲求を突き詰めて言語化することが重要です。それさえできて軸が定まれば、転職活動はきっとうまくいくと思います。
—— 自分の本当の思いを自ら引き出し、軸ができるかどうか。それが転職活動では重要ということですね。ありがとうございました。
ライター プロフィール
- 高橋 学(たかはし・まなぶ)
- 1969年東京生まれ。幼少期は社会主義全盛のロシアで過ごす。中央大学商学部経営学科卒業後、1994年からフリーライターに。近年注力するジャンルは、ビジネス、キャリア、アート、消費トレンドなど。現在は日経トレンディや日経ビジネスムック、ダイヤモンドオンラインなどで執筆。
- ◇主な著書
- 『新版 結局「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(荒濱一氏との共著)
『新版 やっぱり「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(荒濱一氏との共著)
『「場回し」の技術』(光文社)など。