- プロフィール
- 理工系国立大学大学院を修了後、ゲーム会社に入社。プラットフォームのパフォーマンス改善、アプリ開発に従事。その後、リーベルの支援を受け、事業会社の情報システム子会社に転職。さらに、フリーランスのエンジニアを経て、ITコンサルタント会社に入社。今回、再度リーベルの支援を受けてアシストの講師職として内定を獲得。
大学院修了後、好きなゲームの開発会社か、困っている人たちを助けられるITコンサルタントか、道を悩む。結局前者を選び、2年半、ゲーム作りに没頭し、心は満たされた。
だが、今のままでは将来が不安。次のステップに進みたかった。選んだのが大手事業会社の情報システム子会社。リーダーやマネージャーを経験し、成長を遂げる。
しかし、自分には技術力が足りない。自身を鍛えるためにフリーランスのフルスタックエンジニアとして活動した。さらに、ITコンサルタント会社にリファラル採用で入社。ITコンサルになりたかった願望も叶えた。
ただ、何か違うと感じていた。自分が本当にやりたい仕事は何か。見えてきたのは原点。塾講師だった時の思い、そして、人を助けたいという気持ち。
「自分は教育がやりたい」。再び、リーベルの門戸を叩いた。転職活動を経て、アシストで技術講師の職を得た。
紆余曲折を経て、本当になりたかったキャリアにたどり着いた、その顛末を追う。
ゲーム作りに満足し、技術と経験を広げるため次のステップへ
ゲームが好きだった。人気のアーケードゲームの大会で優勝するほど腕前も飛び抜けていた。大学院で情報工学を学び、修了後の就職をどうするか。ゲーム作りか、ITコンサルタントか、2択で悩み、結果、ゲーム会社を選んだ。
—— 2つの道で悩み、どのように結論を出したのですか。
Kさん:ゲームの世界にのめり込み、大会で優勝するほど腕も上げ、ゲーム業界で働いてみたいと思う一方、ITの開発で困っている人たちを助けられるITコンサルタントにも興味を持ち、どちらの道に進むかはかなり迷いました。ただ、後者の方は、ITの開発経験がないのにいきなり人助けができるのか、不安があったのです。そこで、ゲーム会社で働くことを決め、中でも開発のサイクルが短く、短期間で数多くの経験が積めそうなソーシャルゲームの会社を選んだのです。
—— 実際、ゲーム会社で働いてみてどうでしたか。
Kさん:研修後、大規模ゲームでプラットフォームのパフォーマンス改善や負荷軽減などを行い、新人ながら様々な経験を詰めたことは大きな収穫だったと思います。ただし、周囲の先輩エンジニアは皆忙しく、教えてもらえるような雰囲気ではなかったため、自ら知識を身に付け、考え、手を動かすしか方法はありませんでした。いわば、サバンナに一人放り込まれたような感覚で、生き残るために頭を使い、戦っていく日々を過ごしたのです。そんな状態は2年半続き、思ったことは、「やってやれないことはない」ということ。サバンナという過酷な環境が短期間で自分を成長へと導き、仕事に対して自信を持つことができました。
—— ただ、ゲーム業界で働き続けるのではなく、転職という道を選びました。
Kさん:理由の一つは、大規模なタイトルで様々な機能開発・運用に携わった結果、ゲームを作るということに対し、ある程度満足してしまったことです。もう一つは、このままゲーム業界で働き続けるキャリアに不安を覚えたことです。IT業界で通用する技術や経験を幅広く積むためには、他の領域で仕事をすることも必要だと考えました。そこで、20代半ばではありましたが、転職へと舵を切ることに決めたのです。
—— 転職活動ではリーベルに支援を依頼しました。
Kさん:リーベルの担当者には、私がインフラ、サーバーサイド、フロントエンドと、幅広く知識と技術を身に付けているため、20代という年齢を考えれば、「そのスキルセットがあれば、どんな領域のどんな会社でも受かる可能性がある」と、言われたことを覚えています。そして、今でも忘れないのですが、可能性のある100社近くの求人票を私に示し、「この中から応募先を決めていきましょう」と、長時間にわたり延々と選ぶ作業を一緒に行ってくれたのです。転職希望者の中には行きたい領域や会社が明確に決まっていない人もいて、私もその一人でした。それに対して、時間をかけて共に考えてくれるのがリーベルの良さではないかと思います。
—— 選んだ結果、5社程度が応募先候補となり、その中に内定を取得した事業会社の情報システム子会社も含まれていたのですね。
Kさん:その情報システム子会社の面接では、私が事業会社も含めたグループのカルチャーにフィットするかが主に問われていたと考えています。そのカルチャーは独特で、自ら考えて動ける人材を重視する傾向が非常に強く、それにフィットする人材でないと活躍できないからです。私は、先述のサバンナの例でも分かる通り、そのカルチャーにフィットする要素を持っていました。さらに、先方の面接官の心を捉えたのが、私がゲーム大会で優勝経験があったことです。「何らかの領域で1位になる人間は人とは違う何かを持っている」と直感的に察したのではないかと思います。そうした要因もあり、私はその情報システム子会社の内定を勝ち取ることができたのです。
困難なプロジェクトを転機にフリーのエンジニアになる
事業会社の情報システム子会社で2社目のキャリアをスタートさせた。入社3か月でリーダーに抜擢され、期待に応える努力もした。だが、その後厳しいプロジェクトを任され、体調を崩す。その経験が転機となり、また違う道を模索する“旅”が始まった。
—— 転職し、2社目の仕事が始まりました。
Kさん:最初はチャットボット開発のプロジェクトにデータベースエンジニアとしてアサインされました。しかし、3か月後にチームのリーダーが休職することになり、上司に「リーダーをやってみないか」と思いもよらぬ打診を受けました。私はそのオファーを受諾し、事業会社の中でチャットボットを様々なサービスに実装していくディレクションを担う立場となったのです。
慣れない仕事で苦戦はしたものの、複数のサービスで採用され、成果をウェブメディアに寄稿するなど、一定の実績を出すことができました。ただ、自分としては満点ではなく、「もっとできたはず」と反省をする側面もありました。
—— その後もいくつかのプロジェクトを経験されています。
Kさん:同社は社員の裁量が大きい会社で、仕事は与えられるのではなく、自分自身でやり方を決めて行うというのが社風です。逆に与えられた仕事だけやっているのでは価値がないと判断されてしまいます。そうした刺激的な環境の中で、私も自身の力を発揮するために精一杯仕事に打ち込みました。
そして、そんな中で、私にとって運命を決める仕事が舞い込んできました。障害が多く発生し管理ができていないインフラを改善するプロジェクトのリーダーに着任したのです。それが実に厳しいプロジェクトでした。私たちから様々な提案をするのですが、社内で納得されず、何度やり取りしても進捗が出ない日々が続いてしまいます。そんな毎日が数か月続き、私は体調を崩してしまったのです。
—— 結果を出そう、進捗させようと思っても、困難な状況が続いたのですね。
Kさん:今思えば、私がプロジェクトを進めるために割り切りができなかったのが原因だと思います。最適解を求め過ぎたばかりに、判断に迷い、いつまで経っても答えが出ず、負の無限ループに陥ってしまった。スケジュールを前に進めるために70点でもいいから妥協することが必要だったと思います。
その後、体調が戻り復帰したのですが、この一件は自分の仕事を見つめ直すいい機会となりました。改めて同社での仕事を振り返ってみると、リーダー職を任されることが多く、技術に触れたり自分で手を動かしたりする頻度が圧倒的に減っていることに気付きました。そこで、「自分の技術はITの世界で通用するのか」を確かめたくなり、退職してもう一度技術を磨く日々を送る決心をしたのです。
—— 興味深いのが、会社に勤めるのではなく、フリーのエンジニアという選択をしたことです。
Kさん:当時は30代前半で、会社に入ってしまうと年齢的にリーダー職を任される可能性が高く、組織に入ると甘えが出て、ストイックに技術を突き詰めることができなくなると思ったからです。それに対して、フリーは実力が全てであり、必要なければ切られる非常に分かりやすい世界です。
早速、フリーのエンジニアとしてエージェントに登録するとスクラム開発のプロジェクトにアサインされ、インフラからフロントエンドまですべて引き受けるフルスタックエンジニアとして発注元に常駐する日々が始まりました。スタートしてすぐに戦力として仕事ができるようになり、2か月目には主要開発メンバーと同程度のハイレベルな業務がこなせるようになって、高い評価を受けました。私は自分の技術がまだ通用することを確認できたのです。
本当にやりたい仕事への気付き、そして再びリーベルへ
フルスタックエンジニアになり、自信を取り戻した。そんな時、友人から「ITコンサルティング会社で働かないか」と誘われた。就職活動の時、一度は目指した職業。興味を持ち、その誘いに乗ることにした。
—— フリーのエンジニアになってから、またキャリアが変遷するのが興味深いところです。
Kさん:そうなのです。ITコンサルタント会社で働く友人に「リファラル採用制度を使ってうちの会社に入らないか」と言われ、その誘いに乗って、入社することにしたのです。同社はものすごい勢いで伸びているベンチャーで、技術的なバッグラウンドがしっかりしていて、上流工程に提案できることが強みです。私が就職活動の時に目指した職業でもあることが、背中を後押ししました。
—— どのような仕事をされましたか。
Kさん:PMOの立場でプロジェクトに入ることが多く、本当に様々な案件を経験しました。例えば、あるプラットフォームのシステム刷新の技術顧問、生成AIを活用したサービス開発、システム間を連携するハブの運用などです。私が提案する技術やシステムは柔軟性が高く、ミスが起こっても軌道修正しやすいため、顧客の評判が非常に高かったというのが誇れる点です。これまでの経験から、何か起こっても大事は至らないシステムを作る勘所が付いたのだと思います。社内の評価も高くなり、給与もうなぎ登りに上がっていきました。
—— しかし、そのまま勤めるのではなく、転職を選択されました。
Kさん:当初、同社はベンチャー気質で会社も社員も理想に燃えていましたが、規模が大きくなるにつれて安定志向になり、与えられた仕事しかやらない人が増えたことに違和感を覚えました。毎月中途採用で増員される中、ITや技術が分からない人も増え、変わっていく会社の雰囲気にもギャップを感じました。「このままこの会社で頑張ってもモチベーションが保てない」と思うようになったのです。
—— そこからどのように行動を?
Kさん:今後自分は何をするべきか、改めて考えてみたのです。今までの人生を振り返ってみると、大学時代は塾の講師を務め、教え子たちが成長していく姿を喜んで見ていた自分がいたことを思い出しました。社会人になってからも、新卒のメンバーの面倒をみるのが好きで、若手を育てることに面白みを感じていました。そうして考えていくと、「人を助けたい」という昔からの自分の思いは、ITコンサルタントで叶えられるのではなく、人に教え、成長に貢献することによって実現できるものであり、「自分が本当にやりたいのは教育を軸にしたITの仕事だ」と気づくことができたのです。
—— 色々な仕事に携わり、数多くの経験もしたからこそ、自分の進むべき道が見えてきたのですね。
Kさん:そうだと思います。では、方向性は決まったが、誰に相談すればよいか。そこで、パッと頭に浮かんだのがリーベルの担当者です。早速連絡を取ると、支援を快諾してくれて、再度、リーベルと共に転職活動に臨むこととなったのです。
—— 前回と違い、今回は教育を軸にIT関連の転職先を探すという方向性が明確です。
Kさん:ただ、ITの教育系の仕事ということで領域が狭いため、求人票を探すのが大変なのではと思いました。そんな中でも、リーベルの担当者は複数の求人票を提示してくれました。メインは、ストレートにITの技術講師を派遣したり、自社で研修を行ったりする会社です。しかし、それ以外の周辺領域の求人票もピックアップして提示するのがリーベルの秀逸な点です。今回もファシリテート型のコンサルティングを提供しているITコンサルティング会社を候補として挙げてくれました。解決策を提案するのではなく、伴走しながらクライアントに考えさせて答えを引き出す、育成型のコンサルテーションを武器としています。
—— それらの中に今回内定を取得したアシストの求人票もあったわけですね。
Kさん:アシストは、研修などAWSの人材育成を行うチームを立ち上げ、そのチームの技術講師の募集をしていました。私はAWSの案件に携わった経験があり、その他のベースとなる知識や技術も豊富で、求人票のポジションとマッチしていたため、「欲しかった人材」という評価をいただき、内定を取得することができました。リーベルの企業と人材とをマッチングする力が奏功したのだと思います。
大切なのは、何のために仕事をしているのかを常に考えること
社会人になってちょうど10年。アシストから内定を取得し、第2の人生が始まる。紆余曲折はあったが、今は、“天職”と思える仕事に就くことができたと感じている。転職成功に秘訣を聞いた。
—— 今回、転職によって自分が求めていたキャリアを掴みとることができました。成功の要因は何でしょう。
Kさん:何のために仕事をしているのかを常に考えることです。私の場合、新卒の時に就きたかったITコンサルタントになり、給与も高くなっていっている状況でした。しかし、自分はお金のために仕事をしているのではないと思い、原点に立ち返っていたからこそ、本当にやりたい仕事に出会うことができたのです。それが早く見つかる人もいれば、私のように少し回り道をする人もいると思います。大切なのは、思い立った時に転職という手段を含めて、すぐに行動に移すことです。
また、私の1回目の転職は将来への「不安」が動機となりましたが、今回は「希望」です。やりたいことが見つかって転職できたわけですから。将来に希望を持って転職ができて本当に良かったと考えています。
—— 前回同様、今回もリーベルが頼りになったのでは。
Kさん:それは間違いないですね。常に転職者のことをよく見てくれて、転職の方向性が決まっていても、決まっていなくても、伴走してより良い転職先を一緒に見つけてくれます。先ほども少し触れましたが、自分が希望するど真ん中の領域から少し逸れた求人票を提示してくれる点も有効だと思っています。要は、「あなたの経験ならこの会社でも活躍できるかもしれない」という可能性を示してくれているわけです。自分一人では探せない複数の道が見えてくる点でも、リーベルの支援を受ける価値は非常に大きいでしょう。
—— 最後に転職を考えている方々にメッセージをお願いします。
Kさん:転職は、面接時に相手にどれだけ納得感を与えられるかが勝負です。大事なのはしっかりとしたストーリーとして成立しているかどうかということ。私の場合であれば、技術と知識が幅広く、AWSの経験もあるが、大学時代に塾講師をやっていて、新卒の面倒も見ており、教え子たちが成長する姿にやりがいを持っていた。だから、AWSのエンジニアではなく、人に教える技術講師のポジションがマッチしているという論理的なストーリーです。この納得感をいかに高められるかを考えて、面接の準備をしていただければと思います。
—— 今までの実績やその時の思いを振り返り、ストーリーとして伝えられるように準備することが肝心ということですね。ありがとうございました。
ライター プロフィール
- 高橋 学(たかはし・まなぶ)
- 1969年東京生まれ。幼少期は社会主義全盛のロシアで過ごす。中央大学商学部経営学科卒業後、1994年からフリーライターに。近年注力するジャンルは、ビジネス、キャリア、アート、消費トレンドなど。現在は日経トレンディや日経ビジネスムック、ダイヤモンドオンラインなどで執筆。
- ◇主な著書
- 『新版 結局「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(荒濱一氏との共著)
『新版 やっぱり「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(荒濱一氏との共著)
『「場回し」の技術』(光文社)など。