- プロフィール
- 国立大学文学部で英語を研究し、留学や長期インターンを経て、大手人材サービス会社に就職。求人広告とスカウトサービスの法人営業を担当。1年弱の勤務後、人材系ベンチャーに転職。同社で異動により情報セキュリティに従事。3年後再び転職活動を行い、リーベルの支援でNTTデータの内定を取得。
最終的に就職したのは大手人材サービス会社。就職活動で自分自身が支援を受け、人のキャリアに携わる仕事に興味を持ったからだ。
求人広告など法人営業を担当した。営業成績は良好だった。だが、若いうちにもっとスキルの幅を広げたい。1年を待たずに転職し、2社目で人材紹介の仕事に携わった。
転機は、異動の打診を受け、情報セキュリティ担当になったことだ。“守り”を重視する自分の性格と合っていた。何より、面白かった。やっと見つけた自分の天職。
こうなったからには、とことんセキュリティを極めたい。活躍の場を社外に求めた。そして、リーベルの支援を受け、NTTデータの内定を獲得した。
セキュリティの実務経験は決して多くはなかった。そうした中、SIer最大手のセキュリティコンサルタントのポジションを掴み取れたのはなぜか。転職成功の顛末を追った。
キャリアを模索する中、運命を変えた異動の打診
大学時代、関心を寄せたのが、英語の勉強だった。1年にわたる米国留学も経験した。だが、就職活動では、「自分が何をやりたいのかわからず、特にできることもない」という悩みも抱えていた。
—— 大学時代は英語に磨きをかける日々を送っていたようですね。
Iさん:英語は昔から好きな教科で得意でした。国立大学文学部英語専攻に進学したのも得意な領域を極めたかったからです。米国の名門大学への1年間の留学も経験しました。しかし、一方で悩んでいたのが、卒業後、どんな仕事に就くかという問題です。長期インターンや就職活動を行ってはみたものの、進むべき道はなかなか見えませんでした。自分にとって、就職は大きな課題になってしまったのです。
ただ、悪戦苦闘する中で、少しずつ興味を持ち始めたのが人材業界でした。自分自身も就活の時に支援を受け、人のキャリアに携わる仕事に価値を見出したというのが理由の一つです。また、人材サービスのような無形商材で営業などの経験を積めば、将来的なキャリア形成に有利になる可能性もあります。そんな思いもあり、大手人材サービス会社に就職することになったのです。
—— その会社ではどんな仕事を。
Iさん:求人広告やスカウト系サービスの法人営業です。会社からリストを手渡され、一件ずつひたすらテレアポ営業を行い、商談自体も自分自身で訪問してクロージングする仕事でした。多忙な毎日だったのですが、「一社一社丁寧に向き合って長期的な関係を築く」という自分のスタンスを貫き、その甲斐もあって営業成績は良好でした。
—— そうした中、1年経たないうちに転職を決断されています。
Iさん:ひと言でいえば、若いうちにがむしゃらに働いてスキルの幅を広げたいと考えたからです。営業の仕事は好きだったものの、若いうちは他にもさまざまな分野で経験を積みたいというのが私の考えでした。そこで、第二創業期を迎え、事業拡大を目指す人材ベンチャー企業に入社し、新たなキャリアを切り拓いていくことにしたのです。
—— 実際、人材紹介の仕事はどうでしたか。
Iさん:職歴のない、あるいはあっても浅い若手人材の就職支援がメイン業務でした。紹介する求人はシステムの保守運用やプログラマーなどIT系の仕事が中心で、そのポジションから会社に入って、キャリアアップしていくというのが主に行っていた提案です。そうした求職者と企業をマッチングさせる仕事は、候補者と話す機会が多い分、前職の法人営業に比べると手触り感があることが利点でした。
—— では、当時はその仕事を続けていこうと思っていましたか。
Iさん:いえ、迷っていたというのが本音です。転職して1年半ほどが経過し、成果も出始めていた時期でした。この人材紹介の仕事で個人的に成績を向上させていくのか、そうではなく、部下を持ってマネジメントを行っていくのか。しかし、自分の性格や適性を考えると、若いうちに他の領域にも挑戦してみたいという漠然とした気持ちもありました。そんなさなか、転機が訪れます。バックオフィス系の業務を担当する責任者から、「うちの部署に異動しないか」と打診されたのです。
「情報セキュリティ」に出会い、2度目の転職を決意
キャリアに関して悩んでいた時期に声が掛かった。今までの営業や人材紹介の仕事とは畑違いの管理部門の業務。情報システム担当として主に情報セキュリティの強化を担うことになるという。キャリアチェンジをするべきか否か、人生の岐路に立たされた。
—— 異動の打診を受けてどう思いましたか。
Iさん:他の領域が経験できるチャンスがあるなら受けてみたいと思いました。それに、情報システムや情報セキュリティの領域は未経験でしたが、率直に面白そうだと感じました。自分は攻めより「守り」を重視する性格で、その点もセキュリティ向きです。ただし、適性として何となく合いそうというだけで、確信はありません。それでも、新たに挑戦するには絶好の分野とタイミングだと気持ちに踏ん切りを付け、異動する決心をしたのです。
—— 情報システム担当としての新たなキャリアがスタートしました。
Iさん:最初に取り掛かったのが、個人情報保護に関する一定の要件を満たした事業者が使用できる登録商標「プライバシーマーク」の認定を受けることです。さらに、個人情報保護の社内ルールの整備、社内のセキュリティ研修の実施、インシデント発生時の対応も私の業務でした。こうした情報セキュリティ関連の業務を行う中で気付いたのが、予想通り、この守りの仕事は私の性格に非常に合っていたということです。さらに、全くの知識ゼロの状態から技術的な知見をインプットしていくことは苦ではなく、むしろ面白いと感じました。そうして身に付けた知識やスキルを活かしながら、社内でアウトプットしていく仕事に私はやりがいを見出すようになったのです。「探し続けていた自分に合う仕事にようやく出会えた」――当時、そんな気持ちを抱いたことを今でも覚えています。
—— 異動を受け入れたことで、自分の進むべき道が見えました。
Iさん:しかし、問題がなかったわけではありません。というのも、当時、管理部門は人数が少なかったため、情報セキュリティに関する業務以外にも、総務や労務の仕事も兼業していました。異動したばかりの時は、幅広い社内業務を理解することが、セキュリティ対策を検討するにあたっても役に立つと考え、むしろ前向きに捉えていました。しかし、経験を積んでいくと、せっかく見つけた自分に合ったセキュリティの仕事に集中したいという気持ちが強くなりました。ただ、その会社にいる限り、それはすぐには難しいように思えました。
—— そこで、再度転職をしようと考えたわけですね。
Iさん:そうです。少しインターネットで調べてみると、セキュリティ分野では米国の企業や団体が提供するサービスやガイドラインが多く、英語を読めたり、話せたりする方が有利だということも分かってきました。海外進出を推進している大企業を中心に英語力がある人材も求められています。これは英語のスキルを磨いてきた自分にとって追い風になるはず。そう考えて、私は2回目の転職に向けて準備を進めることにしたのです。
リーベルが助言した転職の正しいタイミング
自分のキャリアをセキュリティの領域にシフトすると決断し、そのために再度の転職に踏み切る決断をした。だが、それは決して平たんな道ではない。セキュリティに特化して転職活動を行うのは初めての経験であり、セキュリティの実務経験がそれほど豊富なわけでもない。ハードルは高い。どう克服したのか。
—— 前回の転職先は人材業界内の同業他社でしたが、今回は情報セキュリティという異業種です。どのような考えで臨みましたか。
Iさん:自分が人材紹介サービス会社に勤めていた経験からいえるのは、転職活動の支援を受けるパートナー選びが重要ということです。私自身、IT業界で働いた経験がなく、いざ自分がセキュリティ業界を目指すとなった時にどんな選択肢があるのか、見当がつかない状況でした。そこで、まず着手したのが、人材紹介会社に面談を申込み、実際に話して最適なパートナーを見極めることです。セキュリティ業界で働くことを考えた場合、社内SEとして勤めるか、コンサルやSIerの立場で顧客のセキュリティを支援するかの2択だと思っていたので、それぞれの求人に強そうな人材紹介会社をピックアップし、連絡を取りました。面談したのは約10社に上ります。1社で2回面談した会社もありました。それだけ、大切なプロセスだと考えていたわけです。
—— その中で、支援を受けたのがリーベルでした。選んだ理由は。
Iさん:IT業界、セキュリティ業界に抜きん出て詳しかったからです。「セキュリティ業界に行くなら、コンサル、SIer、セキュリティ専業ベンダー、監査法人、事業会社の5つの選択肢があります」などと冒頭から的を射た説明を受け、それが非常に分かりやすく頼りになりそうだと感じました。実際、IT業界で働いた経験を持つエージェントであることにも好感を覚えました。
—— その後、リーベルからはどんな話がありましたか。
Iさん:リーベルの担当者には「今は転職活動すべきではない」と明確に告げられたのです。「まだセキュリティ関連の資格を一つしか持っていないので、もう半年頑張って追加して取得した方が良い」「実務経験をもう少し積んだ方が良い」というのがその理由でした。他の人材紹介会社からは「今のままでも受けられる会社はいくつかある」と言われていたのですが、はっきりと転職を止められたのはリーベルの担当者だけでした。しかし、それは戦略的で正しいアドバイスだと思いましたし、私としても、もう少しこの会社で知識や実務経験をつけたいという気持ちがありました。私はリーベルの担当者を信じ、一旦活動をストップして資格取得と実務に全力を注ぐことにしたのです。
—— それから半年、状況はどのように変わりましたか。
Iさん:資格を新たに5つ取得し、実務経験も積むことができました。勉強すればするほどセキュリティへの興味が強くなり、やはり自身にマッチした仕事だと感じました。一方で、その時点で会社を辞めると、プロジェクトを中途半端な状態で引き継ぐことになるため、もう少し仕事を続ける選択も考えていました。一方、自分は27歳になり、異業種・異職種への転職は、年齢的に徐々に難しくなると感じており、あまり先延ばしすべきでもないと考えていました。どうするべきか。私はリーベルの担当者に相談することにしました。
—— リーベルからの返答は。
Iさん:私が「もう少し続けようかと思っている」と口にすると、担当者は「いや、転職活動を今こそやるべきです」とはっきりと言ったのです。ある会社がグローバル領域特化のセキュリティコンサルタントの求人をしたり、NTTデータがグループ再編に伴い本格的に海外進出に注力したりするなど、セキュリティ業界に変化が見られ、今が私にとって転職活動を行う絶好のタイミング、というのがその理由です。私にとっては難しい判断でしたが、ここは業界動向に詳しい担当者の進言を信じようと思い、転職活動を行うことに決めました。
意気込みとポテンシャルの訴求で難関の面接を突破
資格取得、実務経験を上積みし、タイミングを見計らって再開した転職活動だった。リーベルが提示した応募先は、NTTデータも含めいずれも大手企業で、その数は6社に上った。さて、結果はいかに。
—— NTTデータの面接はいかがでしたか。
Iさん:1次面接は、結論から言うと、他社に比べて難しかったというのが私の印象です。セキュリティコンサルタントのポジションで受けていたため、関連する技術的な質問は多少ありましたが、それ以上に多かったのがロジカルな思考力を見極めるような問いだったのです。それは、今までの仕事の中で、自分自身がどのように考え、またその考えに基づきどう行動したのか説明してくださいといった内容だったと記憶しています。私はコンサルティングの経験がなかったため、営業時代の話をしましたが、一瞬答えに詰まってしまいました。あまり良い回答にならず、落ちたと思ったほどです。
—— それが、NTTデータからは1次面接通過の報告がありました。評価されたのはどの部分だと思いますか。
Iさん:一つは、自分の性格も含めて、セキュリティ領域の業務に自分が向いており、今後も長く携わっていきたいという強い気持ちが伝わったのではないかと考えています。また、気持ちの面だけでなく、異動を受け入れ、以後、社内のセキュリティ業務に熱心に取り組むなど、実際に行動に移してきたことも評価していただけたのではないかと思います。そして、自主的に勉強する習慣があり、持ち前の英語力に加え、資格を積極的に取得し、ポッドキャストでセキュリティ関連の番組を聴くなど、過去から現在に至るまでの日々の努力をアピールしたことも奏功したのではないでしょうか。実務面の経験が少ない分を、自分の意気込みやポテンシャルでカバーするしか方法がなく、それを迷うことなく貫いたことが面接を突破した要因の一つだと考えています。
—— その後、NTTデータの2次面接も通過し、内定を勝ち取りました。その他、3社からも内定を受け、計4社の中で転職先を選ぶことになりました。
Iさん:最終的にセキュリティ専業の会社とNTTデータのどちらを選ぶかで迷いました。決め手となったのは、NTTデータの方が幅広く大規模な案件を経験できそうなことと、金融や公共などさまざまな分野のセキュリティの専門家が在籍し、私の目標となるロールモデルが見つかる可能性が高いと考えたことです。同社であればキャリアの幅が広がり、長く働くことができそうなイメージも沸き、現時点で最良の転職先だと思いました。
—— では、最後にご自身と同じ若い世代に向けてメッセージを。
Iさん:20代前半や半ばくらいまでは、キャリアの幅を広げる行動をした方がいいのではないかと思います。私も営業、エージェント、バックオフィス、情シスなどさまざまな業務を経験したことで、本当に自分に向いている情報セキュリティの仕事に巡り合うことができ、今に至っています。もし、2社目で異動の声が掛かった時に断っていれば、このような自分が望む展開にはなっていないでしょう。そうした意味で、既存とは違う仕事に携わるチャンスがあればやってみること、あるいは、興味がある他の分野があれば少しでもいいので勉強してみることは、若いうちにこそチャレンジしてみるべきだと思います。それがきっかけで、私のように自分に合ったキャリアが見つかることもあるのです。
—— 若いうちに、キャリアの幅を広げる行動を選択して色々と試してみることは有効と言えそうです。ご自身の成功体験からのアドバイスは説得力があります。ありがとうございました。
ライター プロフィール
- 高橋 学(たかはし・まなぶ)
- 1969年東京生まれ。幼少期は社会主義全盛のロシアで過ごす。中央大学商学部経営学科卒業後、1994年からフリーライターに。近年注力するジャンルは、ビジネス、キャリア、アート、消費トレンドなど。現在は日経トレンディや日経ビジネスムック、ダイヤモンドオンラインなどで執筆。
- ◇主な著書
- 『新版 結局「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(荒濱一氏との共著)
『新版 やっぱり「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(荒濱一氏との共著)
『「場回し」の技術』(光文社)など。