- プロフィール
- 有名私立大学のキャリアデザイン学科を卒業後、ITインフラに強い中堅システム会社に入社。短期案件に次々とアサインされ、詳細設計書や作業手順書の作成、構築、テストなどに携わる。名古屋への転勤後、比較的規模と期間が長いプロジェクトに参画。エンドユーザーと連携して案件を進捗させる成功体験が転機となり、入社3年目、26歳の時にプライムへの転職を目標に活動開始。リーベルのサポートを受け、IIJからの内定を勝ち取った。
そうした中、巡ってきた比較的規模が大きいプロジェクトへの参画。リーダーとして、ユーザーとの折衝や案件管理を担う醍醐味を知り、次第に大きくなるプライムへの思い。
そして、将来のキャリアを切り拓くため、踏み切った転職への道。だが、面接では、プロジェクト管理の経験の少なさが、大きな不安材料だった。
その不利な状況をどう覆し、大手のインターネットイニシアティブ(IIJ)から内定を手にしたのか。ビハインドな状況からの逆転劇を、本人が自ら語った。
力も資格もあるのに下請けではもったいない
切り出された2次請け、3次請けの案件。次々にアサインされ、数カ月単位の短期案件に追われる日々。入社2年目以降に頭をよぎったのは、このまま続けていては、将来のキャリアに希望が持てなくなる危機感だった。
—— 新卒で入社した当時のことを聞かせてください。
Nさん:就職した中堅のシステム会社は、2次請け、3次請けの案件がメインで、私もそうした短期案件を次から次へと担当することになりました。ITの知識やスキルがゼロからのスタートだったので、1年目は無我夢中。しかし、2年目以降、「こうした、私以外でもできそうな短期案件が今後も続くのではないか」と、キャリアに不安を感じるようになったのです。そこで、少しでも将来につながるように、必要な資格を積極的に取得していくことにしました。仕事の後、夜遅く帰宅しても資格の勉強に打ち込み、夜中まで長引くことも珍しくありませんでした。
—— 取得資格は3年弱で10以上に及び、その多さが目を引きます。仕事の方も転機があったようですね。
Nさん:2年目の途中から名古屋に転勤になりました。そこで、上司や先輩の営業社員に、規模が大きく長期に関われるような案件にアサインしてほしいと、自分からアピールしたのです。すると営業社員が、大学へのサーバー導入とクライアントPCの統括管理を実現するシステム開発の案件を回してくれました。この案件では、途中からリーダーも任され、大学側の担当者と話し合い、要望をかなえるための詳細設計書や作業手順書を作成。メンバーに作業を振ったり、自ら構築する充実した日々を過ごしました。期間は8カ月に及び、無事にシステムの立ち上げを完了。プロジェクトを自分なりの創意工夫で回していく醍醐味を初めて味わい、とてもやりがいを感じた仕事になったのです。
—— その後も8〜9カ月の比較的長期のプロジェクトにアサインされ、従来の短期案件中心の仕事とは違う働き方ができるようになりました。しかし、そうした中でなぜ転職を決意されたのですか?
Nさん:以前一緒に働き、今は転職した元同僚に、「案件を回す力があり、資格も頑張って取得しているのに、2次請け、3次請けの会社で続けていくのでは、もったいない。もっと上を目指すべき」とアドバイスされたのがきっかけです。自分の中でも、上流工程に携わり、より案件全体を考えたシステムの構築を、もっと主体的に行いたいと思っていたところでした。そこで、転職活動にチャレンジしたい意向を伝えると、「自分も支援を受けた人材紹介会社に依頼してみてはどうか」と、その元同僚が提案。その人材紹介会社がリーベルだったのです。
面接では、弱点をあえて前面に出す
リーベルからの支援を受けてスタートした転職活動。しかし、上を目指すために必要な「プロジェクトを回した実績」が乏しいのが、大きな不安材料だった。その懸念を抱えたまま臨んだ面接。Nさんはどのように切り抜けたのか。
—— リーベルの担当者にはどう希望を伝えたのですか?
Nさん:プライムの立場で、作業ではなく実際にプロジェクトを回す役割を担いたいこと、合わせて技術もしっかりと身に付けていきたいことを伝えました。それを受けて、担当者がリストアップした会社が7社程度だったと思います。その中にIIJも入っていました。ただ、担当者が懸念していたことが、まだ入社して3年と年次が浅く、大半が作業の案件で、プロジェクト管理の経験が少ないこと。面接でいかに自分をアピールできるかで勝負が決まる。そんな状況だったと記憶しています。
—— IIJの面接ではどのようにアピールしましたか?
Nさん:1次面接では、「力を入れて頑張った案件は何か」と聞かれ、前述した大学のプロジェクトをアピール。エンドユーザーと直に接する中で、できる限り要望を実現するために力を注いだことを、具体例を挙げながら言及しました。さらに、資格を率先して取得していったことも訴求。そうして、経験が少ないながらもポテンシャルがあることが伝わるように話を進めていったのです。
—— 顧客に寄り添う姿勢があること、向上心と行動力があることのアピールに力点を置いたわけですね。
Nさん:また、面接官からは「今の自分に最も足りないことは何か」と聞かれたので、率直に「経験です」と答えました。案件を本格的に回したのは先に述べた大学の案件が唯一で、その他は作業的な仕事が多いことを自ら明言。その上で、浅い経験に関して非常に危機感があり、今後のキャリアの中でカバーしていきたいと意気込みを語りました。つまり、弱点を隠すのではなく、あえて前面に出すくらいの気持ちで強調し、モチベーションの高さをアピールしたのです。
—— ポテンシャルやモチベーションの高さが伝わり、面接官からも好印象を得て、1次面接を突破しました。実績が不足していても、仕事への姿勢ややる気をしっかりと伝えることで、ビハインドを跳ね返すこともできるわけですね。
Nさん:IIJは技術に関する社内勉強会が多く、それにも積極的に参加したい意思を伝えました。もちろん本心から言ったことですが、知識やスキルを貪欲に求めていく姿勢も、好感を得たのではないかと考えています。
残留を求められ、次に行くか、残るかの分かれ道
IIJの1次面接を切り抜けたNさんは、最終の2次面接に臨んだ。しかし、待っていたのは、和やかな雰囲気で進んだ1次面接とは逆に、技術的な鋭い質問を投げかけてくる厳しい面接だった。
—— IIJの2次面接は部長クラスが面接官を務めたようですね。
Nさん:その面接官は技術に詳しく、想定外の質問や深掘りする質問を次々と投げかけられました。例えば、「今まで出たバグの内容と解決策を教えてください」といったもの。全く予想していなかった質問だったので、答えるのにしどろもどろになってしまいました。私の回答に納得がいかないと、「もっと具体的に」「それはどういうこと?」など、突っ込む質問もテンポよく出されます。指摘するポイントも的を射ており、部長クラスの管理職がこれほど技術に明るいとは思ってもみませんでした。
—— しかし、その厳しい面接もクリアし、内定を得ることができました。
Nさん:1次面接でポテンシャルとモチベーションを上手くアピールできたことが、結果につながった大きな要因だと思っています。また、IIJの最終面接の前に、既に他の2社から内定を得ており、どの会社に行くのが自分にとって良いのか、内心では迷っていたのです。しかし、最終面接で技術に強いIIJを改めて実感。他の2社はベンダーコントロールだけの仕事が多いという話だったことから、プライムでベンダーを管理しながら、技術も追求できるIIJへの入社に気持ちが固まっていったのです。
—— ただ、その後前職の上司から残留を求められ、気持ちが揺らいだと聞いています。
Nさん:とてもお世話になっている上司で、人柄も良く、仕事もできる人でした。もし残るなら、大規模な案件にアサインし、今後は給与面などの待遇も上がると、さまざまな好条件を示されました。3年近く働いてきて、社内には多くの仲間ができていましたし、残留の選択が頭をかすめたのは事実。ですが、そもそもプライムの仕事がしたくて始めた転職活動。残れば2次請け、3次請けの仕事が続くことになります。次に行くか、残るかの分かれ道。最後まで悩んだのですが、チャレンジするなら今しかないと思い直し、原点に戻ってプライムへの道を選択したのです。
キャリアを正確に振り返ることが成功を引き寄せる
プライムで技術にも強いIIJへの入社が決まり、自分が思い描いたキャリアを歩み始めたNさん。経験不足のハンデを乗り越えて内定を獲得できた理由を、今一度分析していただいた。
—— 転職活動を振り返って、勝因は何だと思いますか?
Nさん:1つは、随所にリーベルの支援があったこと。私が疑問を感じたり、迷ったりした時にメールを送ると、その日のうちに返信があるなど、レスポンスの速さには驚きました。名古屋で仕事をしている私が、東京に出張する際に面接を組み入れるなど、難しい日程調整も手際よく行ってくれました。そうしたサポートやフォローで安心して転職活動を進められたことが、良い結果につながったと思っています。
—— 面接での答え方にも要因があったのでは?
Nさん:自分の弱点を言いにくそうに何となく伝えるのではなく、「経験不足が私の弱みなので、直していきたい」とはっきり意思表示できたのは良かった点です。実績が十分でなければ、何を売りにすべきか。私の場合、ポテンシャルとモチベーションを明確に意識し、面接で印象付けることが突破口でした。
—— 自分のキャリアについて正確に知ることも、成功する秘訣と言えそうです。
Nさん:今まで自分のキャリアを振り返ることはなかったのですが、職務経歴書をリーベルの指導の下に書く中で、自分がどんな気持ちで仕事をしてきたのか、何に不満を抱いていたのかなど、心の内に初めて気づくことができました。特に自分がアピールしたいプロジェクトについては、そういった気持ちの振り返りが大切。面接官が深掘りして聞いてくる可能性が高く、答えを用意しておく必要があるからです。また、経験を多く積んできたつもりでしたが、次につながるプロジェクト管理の仕事が少なかったことも、改めて実感。自分の価値を知るためにも、キャリアの棚卸しはしておくべきだと思います。
—— 確かに、自分の価値を認識することは重要なポイントです。
Nさん:今、自分はどのあたりにいて、今後どうなっていきたいのか。このままではまずいのか、それとも良いのか。自分の立ち位置と今後の方向性を知ることは、キャリア形成で不可欠な視点でしょう。転職活動をする人もしない人も、キャリアの振り返りは定期的に行うべきだと考えています。
—— 自分の価値をよく知ること、その上でキャリアの戦略を立てること。あるいは経験不足を補う戦術で面接に臨むことなど…貴重な考え方がたくさん詰まったインタビューでした。ありがとうございました。
ライター プロフィール
- 高橋 学(たかはし・まなぶ)
- 1969年東京生まれ。幼少期は社会主義全盛のロシアで過ごす。中央大学商学部経営学科卒業後、1994年からフリーライターに。近年注力するジャンルは、ビジネス、キャリア、アート、消費トレンドなど。現在は日経トレンディや日経ビジネスムック、ダイヤモンドオンラインなどで執筆。
- ◇主な著書
- 『新版 結局「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(荒濱一氏との共著)
『新版 やっぱり「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(荒濱一氏との共著)
『「場回し」の技術』(光文社)など。