さかなクンについて
こんにちは、ケンゾウです。突然ですが、皆さん、さかなクンをご存知でしょうか?いつも魚のぬいぐるみの帽子をかぶって、テレビで魚の解説をしているタレントさんです。彼を最初にテレビで見た時は、インパクトのあるビジュアルと、「ギョギョ!」をはじめとする魚オタク過ぎる発言・振る舞いで、「すごいキワモノキャラだなあ」と思い、どうせ直ぐに消えちゃうんだろうなと思ったものです。
しかし、私の予想は完全に外れ、バラエティー番組だけでなく、映画ファインディング・ニモの吹き替えで声優をしたり、ドラマ「あまちゃん」に本人役で出演したりと、活躍の場を広げています。他にも、東京海洋大学客員准教授に就任しただけでなく、農林水産省のお魚大使(どんな仕事なんでしょう??)やユネスコの広報大使を務めるなど、あちこちで引っ張りだこです。
では、さかなクンはどうしてこんなに成功することが出来たのでしょうか?今日は、さかなクンの成功要因について、私なりに分析してみたいと思います。
※ まじめに読まず、軽く読み流して下さいね。
さかなクンの競争戦略
ではまず、バラエティー番組の市場規模から見て行きましょう。総務省が発表した資料(PDF)によると、コンテンツ市場は11兆円、そのうち25%が地上テレビ番組ですので、約2.8兆円。更に別の資料(PDF)によると、娯楽・情報番組がざっくりテレビ番組の30%と言えそうなので、さかなクンのターゲット市場であるバラエティー番組は9,000億円となり、十分な市場規模と言えるでしょう。
次に競争環境を見てみましょう。これまで「魚に詳しい」タレントはいなかったと言っていいでしょう。これが「動物に詳しい」となったとたん、ムツゴロウさんという、市場シェアほぼ100%の巨人が強力な競合として立ちはだかる事になるわけですが、魚についてはホワイトスペース(白地)であり、魚の知識を武器に戦うのはまさにブルーオーシャン戦略なわけです。
3C分析(※)を完成させるために、最後に、さかなクン本人の競争力について考えてみましょう。さかなクンの武器は、もちろん魚に関する異様な知識量です。その知識量は中途半端なものではなく、東京海洋大学から客員准教授に招聘されるくらいです。因みに、さかなクンの最終学歴は専門学校卒であり、そこから大学教員というパスは通常ではありえません。また、さかなクンは高校生の時に東京海洋大学を目指していたが叶わなかったというエピソードもあるようです。
この知識量は、幼少期からずっと蓄積されたものであり、このような長期間に渡り蓄積してきたデータベースというのは、Google Mapにおける大量のメタデータと同じで、競合に対して大きな差別化要素となるだけでなく、大きな参入障壁にもなり得る最強の武器なのです。
※ 3C分析:戦略分析の基本フレームワーク。Customer(市場)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つの視点で分析。詳細はググってみて下さい。
もう一つ見逃せないのが、あの帽子です。あの帽子を見れば、誰がどう見ても魚が好きなんだろうなというのは一目瞭然です。Googleのトップページには検索窓しか無く、誰がどう見ても検索する以外にないのですが、これに通じるわかりやすさがあると思います(因みにGoogleは1998年のサービス開始時から現在まで基本的にあのデザインです)。
あの帽子には、見た目のインパクトでついつい覚えてしまうという側面もあると思いますが、あれはテレビ局のディレクターから「印象が薄い」と言われたことがきっかけでかぶるようになったのだそうです。もしその時、さかなクンが帽子をかぶらなかったら、すぐに忘れられて過去の人になっていたかもしれませんね。因みにあの帽子は、さかなクンが幼少期に、魚屋さんの水槽でハコフグが他の魚から懸命に逃げまわっていた姿を見て心を打たれ、「ハコフグから元気をもらおう!」と自ら五面図を描いで作ってもらったという拘りの一品なんだそうです。
ここに、顧客(=テレビ局のディレクター)の声に真摯に耳を傾け、顧客ニーズに素早く、かつコダワリを持って対応しようとする姿勢が見られます。この顧客重視の姿勢や、10年以上も帽子をかぶり続けるというオペレーションの徹底ぶりこそが、生き馬の目を抜くテレビ業界で、さかなクンが活躍し続けている理由ではないでしょうか。
なんだかダラダラと書いてきましたが、要は、シロウトとしてテレビ番組に出演したことをきっかけに、あそこまで活躍の場を広げられることに「さかなクンは凄いなあ」と個人的に感心しているだけなんですが。