ケンゾウの戦略コンサル物語

戦略コンサルタントの仕事やふだん考えていることなど、戦略コンサルタントの実態をありのまま綴ったコラム

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筆者プロフィール

ケンゾウ
大学院修了後、メーカーでエンジニアとして勤務。その後、外資系の戦略コンサルティングファームに転職。幾多の苦労を重ねながらも、数年間をそのファームで過ごした後に卒業し、現在は投資ファンドで働いている。
第18話

戦略ファームの入社面接(その1)

戦略ファームの面接

こんにちは、ケンゾウです。前回は3回にわたって、戦略ファームに入るパターン別のメリット・デメリットについて書いてきましたが「入るための面接ってどんな感じなの?」と思われた方も多いと思いますので、今回は戦略ファームの面接について書いてみたいと思います。

巷でよく言われているように、戦略ファームの面接では、ケースを出されることが多いです。ファームによって少し形式が異なっているようで、面接官が数枚の資料を提示しながら議論を進める形式や、簡単な資料を渡して少し考えてもらった後に面接官が登場するところもあれば、面接中に面接官から口頭で課題を伝えられるだけのところもあるようです。

それではケース面接とはどんなものなのでしょうか?例えば「国内市場で腕時計の売上を伸ばすにはどうしたらいいか?」「オリンピックのメダル獲得数を増やすにはどうすればいいか?」といった、ちょっと漠然とした質問が出されます。

それだけ聞くと、思いついたアイディアを片っ端から面接官にぶつけていけばいいじゃないか、と思われるかもしれません。しかしそれだけだと、通常は不合格となってしまいます。単発アイディアだと、驚くほど斬新だとか、かなり具体的で妙な現実味があるとか、よほど面接官を唸らせる回答が出来ない限り、あまり評価されません。評価されやすい回答というのは、与えられた課題をいくつかのより粒度が小さい課題に分解して、それぞれの課題に対して打ち手を提示していく。この時、分解した課題に対して、重要性や難易度などに基づき、どの課題から手を付けるべきかを語れるともっといいでしょうね(打ち手にも同様に優先度を付けると良いです)。

最近は昔と違って、ネットや書籍などで、戦略ファームで出題されたケースの事例や解答例などが簡単に入手できるようですので、より深く知りたい方は、そういった情報も参考にしていただければと思います。

実際の面接の様子(例)

ここでは、私が実際に面接で使った課題で、どのような判断をしていたかを、「◯◯◯をオリンピックの正式種目にするにはどうしたらいい?」という課題を例にご紹介したいと思います。(◯◯◯はマイナーなスポーツ競技)

ありがちな駄目パターンは、「テレビ局とタイアップして◯◯◯を盛り上げる」「◯◯◯の国際大会を企画する」などと、思いつきの単発アイディアを熱く語るパターンです。それだけだと、その打ち手で重要な課題を解決できるのか、その打ち手が最も効果的な手なのか、全く判断ができないので納得感がないのですね。

ギリギリセーフかなあというのは、目的を達成するための課題を分解・整理した上で、それぞれへの対応策を議論できる人です。例えば以下の様な課題に分けて、それぞれへの対策について議論するイメージです。

(課題の分解例)
◯◯◯をオリンピックの正式種目にするにはどうしたらいい?
      ↓
・◯◯◯が普及している国を増やす
・◯◯◯の競技人口を増やす
・◯◯◯の知名度・人気を上げる

上記の課題が、重複・抜け漏れ無く整理されていれば完璧ですが、概ね整理されていれば良いでしょう。更に、それぞれの課題に対して考えられる打ち手を列挙していき、優先順位を付けていければ、なんとか及第点かなあと思います。私が面接していた頃は、限られた時間で上記を完璧に整理しきれる人は殆どいませんでしたので、完成度はそれほど高くなくても、ある程度形になっていればOKとしていました。

当時の面接で「お、この人はいいなあ」と思ったのは、上記に加えてもう一つ視点がある人でした。上記は、オリンピック種目に求められる要件を満たす上での課題を整理しているのですが「そもそもオリンピック種目は誰がどうやって決めているのか?」ということを考えられる人は「IOCの選定委員会メンバーにロビー活動(接待?)するための方法」についても列挙してくれていました。基本的には、ケース面接では業界固有の知識を問うことはないので「IOCの選定委員」という言葉が出てくる必要はないのですが(私もこの言葉で正しいのかよくわかりません)、「種目を選定している人達に働きかける」という話が出てくればいいのです。こういう人には、単に教科書通りに整理するだけでなく、ちゃんと自分の頭で考えて現実的な解を提示できる力があるなあと感じたものです。

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