平均値とは
みなさまご存知の通り、平均値とは複数の数値を足して、数値の個数で割った値のことです。
少しだけ統計学を学んでみると、平均値以外にも中央値や最頻値などデータを理解するための値は他にもあることが理解できますが、やはり世の中ではとりあえず平均値でデータを捉えることが多いと思います。
もちろん会社の特徴についても平均年収や平均年齢、平均残業時間など多くのデータが平均値でまとめられています。
平均値を知りたい気持ち
面談中に「私の年齢だと年収はどれくらいもらっているのが普通なのでしょうか?」という質問をいただくことがあります。おそらく同世代の方の年収の平均値を聞きたいのでしょう。しかし、いくら私が多くの方の年収データを知っているとはいえ、質問者が本当に欲しい回答はできていないだろうな、と毎回思っています。
というのも、年収は業界や職種、所属会社によっても大きく異なります。さらに、同じ会社でもばらつきはあるため、そもそも平均値で年収を捉えるのが必ずしも正しいとは言い切れないと私は思っているからです。
平均的な体型の人なんていない
最近、『ハーバードの個性学入門 平均思考は捨てなさい』(トッド・ローズ著、小坂 恵理訳)という本を読んだのですが、平均値についてのエピソードが載っていたので一部紹介します。
ある国では戦闘機は元々国民の身体の平均値に合わせて作られていたそうなのですが、なぜか操縦時の事故で亡くなっていた方も多かったようです。そこで研究者が原因を追究したところ、操縦席にピッタリ合った平均値どおりの体型のパイロットが一人もいないことに気がつきました。つまり、最も多くの人に合うと思って作られた操縦席は誰の体型にも合っておらず、それぞれが何らかの操縦しづらさを抱えながら操縦していたため、事故が多発していたということです。身長は同じでも、腕の長さが短い人や肩幅が広い人、足の長さが長い人など、それぞれの身体に個性があることを理解した研究者は操縦席を自分で調整できるように戦闘機を作るようになりました。結果、操縦時の事故件数は大幅に減ったようです。
平均値と正しく付き合う
上記のエピソードは平均値の誤用によって、人の命を落としてしまうという、平均値がもたらした失敗の最たる例ですが、平均値は使いどころを間違えると大きな失敗を生むこともあります。
会社における平均年収についても同様です。ある会社の平均値が高いといっても、実際は上層部だけが高額な年収をもらっていて、その他大多数は平均値よりも大幅に低い年収しかもらえていない可能性もあります。もちろん、その中で自分がもらえる年収額は自分次第です。また、平均残業時間についても同様で、あくまで平均値なのです。平均残業時間が低いからと言って安心しきるのは早計かもしれません。
たしかに平均値から読み取れることもありますが、それがすべて自分に当てはまるわけでもありませんので、平均値の過信は禁物です。
誰もが手軽にデータを捉えることができる平均値だからこそ、平均値とのうまい付き合い方を学んでいくことが大事だと私は思います。