今の時代におけるリモートワークの捉え方
労働環境として「リモートワーク」に対する機運が高まってきたように感じます。このところの働き方改革の流れと、育児に対する理解の高まりも相まって、自宅勤務を認める制度や運用が増えてきました。実際に各社から寄せられる求人にも、制度上のアピールに記載されているものが増えています。ただ、それがエンジニアとなるとどうでしょう?
リモートワークに適している職種として、例えばサポート職や事務職のようにある程度業務が固定化されたルーティン作業が多い職種は適用されやすいと言われています。また、翻訳や原稿執筆のように個人作業が多い職種もそう言えるでしょう。ここにWebデザイナーも含まれるかもしれません。ただ、エンジニアがリモートワーク勤務をしようとすると、現実的にはなかなか難しいのが実態でした。
数年前とは明らかに違う
実際に数年前、リモートワーク勤務の方をご支援したことがありました。その方は奥様がキャビンアテンダントをされて海外を飛び回っているため、ご自身がお子さんの送り迎えをする必要があったのです。エンジニアを続けたいという思いと家庭の事情、両者が実現出来る環境を探して転職活動を行ったのですが、当時は残念ながらそれらが全て満たせる環境は見つかりませんでした。私からのご支援が叶わなかったのを覚えています。
プログラミングをするにあたっても、当然チーム内でのコミュニケーションは欠かせません。意識を合わせ、細かい調整を都度都度図る必要があるため、エンジニアであってもリモートワークの導入には後手を踏んでいたのだと思います。それからも何名か同様の事情を抱える方々を支援しましたが、いずれも満足なサポートが出来ませんでした。それが、このところは事情が変わってきたようです。
リモートワークの運用ケース
現在ご支援している方の中に、育児等の理由でリモートワークを希望されています。また厳しい支援になると覚悟をしていたのですが、実際に色々な企業に問い合わせてみると以前よりはるかに希望を聞いてもらいやすくなっていました。私が確認した限り、リモートワークへの対応は企業ごとによって概ね下記の5つに分類されます。
<企業ごとのリモートワークの運用ケース>
- リモートワーク自体はNGという会社
- 定時退社し、その後は自宅からのリモートワークがOKという会社
- 週1日~2日程度のリモートワークはOKという会社
- 週4日程度のリモートワークもOKという会社
- 特定のイベントが無い限り、全日でリモートワークOKという会社
おそらくここ数年で、企業側の意識も変わって来たのだと思います。リモートワークを希望する社員が増え、彼らの思いに応えるべく制度や運用を試行錯誤しながら作り上げてきた会社があるのです。
ただ、実際には(1)のように、運用上の適用は基本的に難しいという会社がほとんどです。特に、それが中途入社者となると尚更のようで、感覚的には7割~8割ぐらいの企業がリモートワークは難しいという印象です。
職種別のリモートワーク事情
またその企業の業態や、職種によってもそうでしょう。例えばクラウドサービスの開発や自社プロダクトのエンジニアなど、特定メンバーで構成されたチームで開発をしている部門では、リモートワークの導入にも積極的です。Slackなどを使ってコミュニケーションロスを減らす工夫を現場レベルでしているようです。一方、ITコンサルタントや業務系のSIerなど、クライアントワークが主体の企業ではまだ本格的な導入は道半ばと言えるでしょう。
これからのリモートワーク
一時期、「クラウドソーシング」と称されるサービスが流行の兆しを見せたことがありました。システム開発やWeb制作などを依頼する「仕事の発注元(主に企業)」と、それを請け負う「作業者(主に個人)」とを繋ぐ、企業とフリーランスの媒介プラットフォームサービスです。これからはフリーランスでも十分に稼げる時代の到来として、当時はよくもてはやされていました。ただ、それも今では下火と言えるでしょうか。
かつては「柔軟な働き方をするなら企業では無理。組織に所属せずフリーランスで」という考えがあったのかもしれません。ただ、それも時代とともに変化してきました。家庭を理由に自らのキャリアを諦める人が生まれないよう、より一層働きやすい時代の到来を期待します。