社風の説明は難しい
企業の社風は言語化がしづらく、また人にも伝えにくいものです。我々エージェントも社風を100%正しく伝えきることはなかなか難しく、言葉だけで理解してもらうことは容易ではありません。ただ、企業を一度でも訪問すれば、その社風は手に取るように分かります。極端であっても平均的であっても、社員数名と会話をすればその企業の社風が掴めてきます。お会いして会話さえすれば、社風とは手に取るように分かるのです。
なぜ社風の説明が難しいかと言うと、それは絶対的な表現や数値化がどうしても難しいからです。「自分に合っているか」までは分かっても、自分の求める社風と何がどのようにどれくらい違うのかまでは、なかなか明確には出来ません。
そんな言語化、数値化するのが難しい企業の社風を、敢えて乱暴にもマッピングしてみたのが下記の図です。IT業界の企業を2つの軸上にマッピングし、大雑把にも色分けをしてみました。もちろん大手SIerに類する企業によっても社風は大きく分かれますし、ベンチャー企業を一括りに出来ないのも百も承知です。それを分かった上で、敢えて主観的に落とし込んでみたという参考情報だと思ってください。また、「地頭力」や「コミュニケーション力」といった、ビジネススキルを軸として表現したものではありません。あくまで、企業の社風だけを表現しているものです。
眺めてみると、やはり特徴はあります。外資系は全般的に「ドライ・クールタイプ」という上方に集まりやすい反面、日系企業は下方の「ウェット・フレンドリータイプ」の企業に多く集まっています。また、スピード感のあるWeb系企業は「ガツガツ型」に、確実な仕事が求められる中堅企業やインフラ企業は「コツコツ型」に分類されています。
社風を知るには、マネジメントスタイルを知るべし
しかし社風とはそもそも何でしょうか。調べてみると、社風とは下記のように定義されています。
- その会社に特有の気風
- 企業の中の人々に共有された行動の様式、スタイル
- 企業が独自に持っている意思決定の方法、伝達の方法、上下間の接触の仕方、共同の方法説得の方法などに関する特徴
つまりこれは、企業それぞれの「マネジメントスタイル」が、社風にも強く影響を与えているのではないでしょうか。企業のマネジメント論に関しては古くから研究がされていますが、昨年「ティール組織」という書籍が日本でもヒットし、新時代のマネジメント論として注目が集まっています。
著者のフレデリック・ラルー曰く、人類は誕生してから今まで、組織で活動する中でその規模や社会背景の変化等により、マジメント方法論を進化させてきたと提唱しています。元々は暴力と恐怖によって統率を図っていた「衝動型組織」が最初のマネジメントスタイルと定義されており、古代から続く奴隷制度等がこれにあたります。それが進化して厳格なトップダウンの指揮命令系統が機能する「順応型組織」が生まれ、軍隊などに代表されるスタイルです。そこから更に個々が目標を持って社会的成功を目指す「達成型組織」へと進化しました。この達成型組織は、今の民間企業に多く根付いたマネジメントスタイルです。
そこから更にダイバーシティを意識した一歩進んだ「多次元組織」が生まれました。全社的に権限移譲を進めて、一人一人のモチベーションを高めているのがこれの特徴です。実際にグローバル企業などで、取り上げられているスタイルと言っていいでしょう。そして個人一人一人に意思決定権までを認めた、新たなマネジメントスタイルとして「進化型組織」が次世代のマネジメントスタイルとして定義されているのです。
なかなか分かりづらい話でもあるのですが、このマネジメント概念を知った時に各企業がどんなマネジメントスタイルにあるのか(或いは複合的なのか)によって、社風もある程度定義が出来るのではと感じました。本の中ではマネジメントスタイルは「進化している」と定義されていますが、「順応型組織」であれ「進化型組織」であれ、そこで働く社員が自分にあった組織を見つければよい話だと思っています。転職先の社風を知るためには、その企業のマネジメントスタイルを意識してぜひ確認してみてください。