15年前の就職活動から
私が大学3年生のときの話。周りの友達が就職活動でソワソワした始めた時に、私は自分がどんな仕事をしたいのかこれっぽっちも分からず、日々日常をダラダラと過ごしていました。就職したいとはちっとも思わず、このまま一生働かずに大学3年生が続けば良いのにと、まさに夢のような妄想にひたっていたのです。自分でも驚くぐらい、志の低い困った学生でした。
年が明けてから、やっと周りに流されるがごとくリクルートスーツを購入し、企業説明会の予約を入れ、就職という逃げられない環境に向き合い始めます。面接を繰り返しながらも自分がどんな仕事がやりたいのかを、いよいよ向き合って考え始めました。言ってしまえば、周りの変化に焦り始め、本腰を入れ始めたのです。
やっと本気モードになり、なんとか就職先を見つけて一安心。そこからの1年間は、勉強もロクにせず友達との思い出づくりに本腰を入れるのですが。
規制の撤廃と、市場での競争
こんな昔話を思い出したのは、先日の新卒採用に関するニュースからです。一昨日の日経新聞でも一面で取り上げられていましたが、以前から議論を呼んでいた新卒採用のルールを経団連が廃止し、学生と企業の新卒活動を規制するものは事実上撤廃するということになりました。
かつては銀行にも、護送船団方式と呼称された大蔵省の手厚い安定化政策に守られていた時代がありました。13行あった都市銀行が、それぞれ置き去りにされる事の無いように規制を設け、無益な競争を生まぬようにコントロールし、業界を守っていたやり方でした。バブル崩壊に端を発し、不良債権処理という厳しい道を歩むために護送船団は解散。都市銀行は合併を繰り返してメガバンクに集約され、今に至ります。
また、昨今やり玉にあがっている農協改革も、根本的な原理は一緒だと思います。規制で守られた業界に競争の原理を持ち込み、生き残りを掛けてビジネスモデルの変革を行う。日本独自の規制や商習慣にストップをかけ、新たな胎動を市場から産み出そうとする原理です。
過熱化する人材採用
新卒採用が過熱化するにつれ、経団連のルール自体にもひずみが増して来ました。既に外資やベンチャー企業等では、日系の大手企業より早いタイミングで新卒採用を開始し、優秀な学生の獲得に乗り出しています。
今回のルール撤廃は、人材獲得自体が企業にとって大きな経営課題になってきたことを意味しています。文部科学省が発表した18年春の大卒就職率は98.0%。企業にとっても新卒採用は激戦の場で、インターシップを絶好のアピールの場と位置付けて、大手もベンチャーも入り乱れて開催しています。
また、既に従来型の新卒採用から抜け出して、独自の採用戦略を成功させている企業もあります。クラウドサービスを手掛ける某IT企業では、数年前から新卒エンジニアとしてグローバルからの採用を開始し始めています。代表自らが海外へ出向き、現地の優秀なエンジニアに対してプレゼンを行い、に日本語力は問わずにエンジニア採用を行っています。
また、先日はメルカリでも新卒に外国籍エンジニアを積極的に受け入れるという報道がありました。通年採用の本格始動に加えて、グローバル採用も各社が対応。新卒採用は、大きな転換点に来ました。
加えて、知り合いの新卒採用担当の方に話を聞くと、「通年採用の方が、企業としても業務負荷が分散され、仕事がやりやすくなる」と前向きな様子。全社が守られていないルールを設けられるよりも、いっそこのこと自由競争にしてもらった方が企業としても戦略を立てやすいと感じているようです。(もちろん、それによる弊害はたくさんあると思いますが)
キャリア意識の変化
この流れは新卒だけでなく、中途採用含めたキャリア形成全般に関わる変革時期なのだと思っています。終身雇用の崩壊という話はとうの昔からありましたが、新卒の時点からキャリアを一人一人が考え、活動自体を計画・実行していく必要がある時代なのです。その先の選択肢として、当然転職もあるでしょう。キャリアとは、自らが掴み取り、形成するもの。就活ルールの変化から、キャリア意識の変化を感じ取りました。
一方で、私のように就職への意識が低い大学生にとっては、大変な時代だなと感じています。学生さんたちにも早くからキャリア形成の意識付けを行い、自律的な活動を促していっていただきたいと思っています。