COLUMN
コラム:転職の技術
第814章
2017/09/29

プライドを捨てよ

— 短期転職時の転職理由の伝え方 —

「転職理由を話す時には言い方一つ、もちろん嘘はつかないのは前提として、同じことを言うにもポジティブに言い変えよう」というのは毎度アドバイスしていることであり、これまでコラムでも何回か触れてきました。

ただ、本当に正直に、包み隠さず話した方が良い時もあります。その代表的な例が短期転職の場合です。

転職して5カ月で転職を志したAさんの例

Aさんを例に話します。SIerにて8年間アプリ開発に携わり、自らコーディングをしつつ要件定義からテストまで一連の経験を積んで来た方です。

Aさんが転職して監査法人に入って5カ月後、キャリアに悩み相談に来られました。5ケ月前には、「監査は今後も無くならない、第三者視点でチェックできるのはアプリ開発経験をSIerで積んできたからこそ出来ることであり、各企業のサービスの品質を向上させていきたい。チャレンジ出来るのは今しかない」という理由で転職を決断したそうです。

実際転職してからも、その業務の大切さ、監査の重要性はひしひし感じ、当時の転職理由を叶えることは出来たと思っているとのこと。ただ、自らアプリ開発が出来なくなったことがどうしても気になっていました。「他社のシステムは見ているものの、自分で作りたくなってしまう。品質の良いアプリを自分でも作りたい・・・。」そんな思いが入社1カ月を過ぎた頃から湧き出し、さらに時間が経つにつれ開発力が落ちて行くことに、いてもたってもいられなくなったと言います。

「自分は根っからのアプリ開発者だという事に気付いた。手を動かしたい、開発をしたい。
開発が出来るのであればSIerでもWeb系企業でも構わない。ただ入社してまだ5カ月。なんて言えば良いのか」
切実な思いを抱えていたAさんですが、私が面談した時には既に企業を数社受けており、残念ながら全部お見送りになっていました。

Aさんに今の転職理由を面接でどのように言っているのか聞いた所、「監査を経験した後元々開発現場に戻ろうと思っていた。監査のことは大体わかったため少し早いのは分かっているが転職を決意した。」とのこと。

これでは私が面接官でもこの一言だけでお見送りにします。
「戻ろうと思っていたのに何で入ったのか?」
「たったの5ヶ月で監査を極めたのか?」
言いだすときりがありませんが、この理由では採用するわけには行きません。

私は、短期転職かつ先述のような背景があるのであれば、以下のように正直に言うべきだという旨アドバイスしました。
「正直、転職は失敗でした。憧れだけが先行し良く考えていませんでした。当時は気付きませんでしたが、やはり私は手を動かして開発したい。さらに上流だけでなく、優先すべきは手を動かしてコーディングをすることだと気が付きました。」

少し脱線しますが、このまま3年監査法人にいたらどうなっていたでしょうか。疑問を抱えたまま3年いることが正解だったでしょうか。もちろんどうなるかは分かりませんし、監査の面白さに気付き活躍されているかもしれません。

ただどうしても開発をやりたいと3年後にも思ったのだとしたら。3年経ってしまっては開発現場に戻ることは難しくなって来ます。今だからこそ戻れるチャンスがありますし、だからこそ強がらず正直に言うべきなのではないでしょうか。

Aさんのその後

実はこの後Aさんとは連絡が取れなくなります。強く言い過ぎたと反省したものですが、さらに3カ月が過ぎた頃に連絡をいただきました。

「仰る通りでした。同じような理由のまま数社受けましたが結果はふるいませんでした。
無駄なプライドが邪魔していました。さらに3カ月経ってしまい開発力もなまってきたかもしれませんが、今から再度サポートをお願いします。」

結果的に、もちろん楽には行きませんでしたしお見送りになった企業もあったものの、無事開発に特化出来る企業から内定をもらう事ができました。

規模としては前職よりも小さく、入社時の年収としても前職より劣る企業でしたが、1年が経過した今、「非常に楽しんでいるし、何と1年で評価され年収も前職より上がることが出来ました。」とご連絡を頂いております。

失敗を素直に失敗と言える勇気が必要

誰しも失敗を認めること、当時の考えが浅はかだったことなどを自ら認め話すのは抵抗があるものです。ただ正直に伝えなければならない時はあります。

「若い時はこう思った、まだまだ考えが甘かった。」
「この転職はもちろん色々学ぶことは多かったが、正直失敗だった。」
伝え方にもよりますし状況にもよりますが、失敗を認めること、それは素晴らしいことです。

「余計なプライドは捨てる。」
一つの参考にして頂ければ幸いです。

<ジャパ>

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