求人票から見えてくる、業界のトレンド
この仕事をしていると、IT業界の技術トレンドが手に取るように分かります。まったく異なる企業から示し合わせたようにほぼ同じ求人が同時に寄せられることも多く、業界の潮流が見えてきます。数年前にはクラウド、さらにその後にはビッグデータ分析に関わる求人がトレンドとして出てきました。そして現在、増えてきた求人のエッセンスに「AI」と「IoT」の2つがあります。
特に、IoTに絡んだポジションは今年になって増えてきました。機械メーカーはもちろんのこと、SIerやコンサルティングファーム、パッケージベンダーなど、あらゆる業態の企業からIoT絡みのポジションが出てきています。ただ求人票をよく見ていくと、大きく3つの技術要素ごとに分類することが出来ます。今回は2017年7月現在の、各社の求人情報から見えてくるIoT技術要素とキャリアイメージについて解説します。
デバイス側の技術者へ
まず1つ目として、IoTのT(Thing)側にあたる要素技術、センサーデバイス側の技術者ポジションが挙げられます。いわゆる「組み込みエンジニア」として、C++での組み込み開発に精通しているエンジニアにとって、IoTは新しい魅力的なキャリアになり始めています。
電気機器メーカーや複合機メーカーなどを中心に採用が広がっていますが、加えて顕著なのが自動車メーカーです。コネクテッドカーの思想を掲げ、IT化が一段と進んでいる自動車業界では、今までにないほどITエンジニアの採用に注力しています。入社後に任せる役割についてはまだファジーな点も多いのですが、キャリアイメージとしては分かりやすく明るいと思います。
また、センサーデバイス側のポジションとしてもう一つのポイントは、無線通信の技術知見をどれだけ持っているかが挙げられます。無線の通信規格に詳しい技術者への需要も高く、強く求められ始めています。
分析基盤側の技術者へ
2つ目としてIoTのI(Internet)側にあたる技術要素、つまりプラットフォーム側の技術要素が挙げられます。センサーから集めたデータを収集・分析するプラットフォームですが、プライベートクラウド/パブリッククラウド問わず、あらゆる実現方法が世の中に溢れてきました。特に、クラウドサービス事業者においてはIoT用の分析プラットフォームを自社で企画・構築し始めており、省電力用のスマートメーターへの活用など適用も進んでいます。
また、基盤構築だけでなく統計・分析の有識者、データサイエンティストも同様に需要は高いです。分析ツールの利用経験者や、統計・分析知見に詳しいエンジニアも、IoT市場から強く求められています。
IoTのサービスをマネジメントする技術者へ
最後の3つ目は、トータル型の人材。上記の要素を全て組み合わせて、プロジェクトをリーディングしていくキャリアです。
IoTシステムを正しく動かす為には、メモリなどのデバイス技術に加えて、無線の技術、分析プラットフォームの知見、データ分析の知識、セキュリティや性能面など、気を付けなくてはならない領域が多岐にわたります。これらの技術を繋ぎ合わせつつ、IoTサービスの目的(ビジネスモデル)までを理解し、旗振りが出来るマネージャーを各社で求められ始めました。
ポイントの一つに、サービスモデルの理解力があると思います。そのIoTサービスが、ユーザーへ対してどんな付加価値を生み出せるのか。仕様通りに作るのではなく、サービスの意味と目的を理解していなければより良いシステムにはならないはずです。プロジェクトマネージャーやコンサルタント経験者で、新規サービスの立ち上げに興味がある方には強くお勧めしたいポジションです。
IoTのある社会をイメージしよう
先日、IoT現場の第一線で活躍している方と会話をする機会がありました。半導体技術や無線知識など、いわゆるWeb系/業務系のエンジニアでは普通は知らないような知識にも強く、IoTの奥深さを味わったような思いです。
ただ、何より大切なのは「便利なサービスを作る」という志なんだとその方は仰っていました。IoTによってもたらされる便利な世界を想像してみて、人々の生活を豊かにしたいという思いが、何よりのモチベーションになるとの事でした。
今までにない、想像もしていないビジネスを生み出すのがIoT。困難も多い世界ですが、何物にも代えがたいやりがいを感じられる仕事です。