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第803章
2017/07/07

なぜあなたは転職をするのか

— 論理と感情の一致点を見出すべし —

転職活動中は、転職すべき理由を忘れがち

『そもそもなぜあなたは転職をするのか』

言い方はその時々で変わりますが、私はこの言葉を、ご支援をさせて頂いている方々に何度も何度もお伝えしています。

そんなこと言われなくても分かってるよ、忘れるわけがないじゃないかと思われるかも知れませんが、案外、転職活動を進めていると、なぜ自分が転職するのかという根本的な話を忘れがちです。

忘れがちな理由は様々です。

例えば、転職活動中にいろいろな企業に出会い、あの道もある、この道もあると選択肢が広がる場合。夢があれこれと広がって、未来に対する期待が膨らみすぎると、転職活動を始めた理由を忘れてしまいます。

また、転職活動が難航したり、現職業務が多忙になったりして、心理的にも体力的にも辛くなってきた場合。転職活動当初は志を強く持っていたものの、辛い状況から早く抜け出したいという気持ちが強くなり、内定が出たらもうそこに決めようと、転職することそのものが目的となってしまうこともあります。

そして、一番ケースとして多いのが、大手有名企業から内定を獲得した場合。当初の転職目的から外れていたとしても、誰もが知っている大手有名企業に行けるなら、社会的ステータスも上がるし、安定した生活を送れそうだからと、いろいろと理由を後付けして、そこに転職を決めてしまうケースが少なくありません。

最終的な決断が転職の目的に沿っていれば良いのですが、そうでない場合は、転職後、仕事が軌道に乗り、落ち着いて考えられるようになってきたときに、あれ?これって自分の望んでいた道だったっけ?という疑問が湧いてきます。

人の思考の傾向や性格はそうそう変わりませんので、転職の目的に沿わない転職先を選んだ場合、どこかのタイミングで、いまやっていることは自分がやりたかった事だろうか、自分に合っている仕事だろうかと悩むことが多いようです。

転職活動中に転職理由が変わることはある

もちろん、転職活動中に、転職理由が変わることはあります。

例えば、自分が転職をしたかった本当の理由に気付いたり、キャリアを考えた時の転職の必然性に気付いたりして、転職の目的が当初から変わることは問題ありません。

私自身も、最初の転職活動時にエージェントに送ったメールを見返してみたところ、転職の目的は長時間労働の改善と書いていました。結果としてコンサルティングファームに転職しているのですから、世話はありません。

ただ、私は転職活動を通じて、なぜ現状に閉塞感を感じているのか、その根本的な理由に気付かされました。

長時間労働が嫌だったのではなく、非生産的で成長感の乏しい仕事を続けるのが苦痛であること、細切れの案件ではなく中長期で顧客を支援したいこと、アプリ開発だけでなくITに関わる全ての課題に立ち向かいたいこと・・・。

それらはエージェントと話を重ね、自問自答もし、各社の面接で転職理由を語る中で徐々に明らかになってきたもので、活動当初から比べると随分と違う転職理由になりましたが、本当の自分の思いに気付くことが出来たので良かったと思っています。

キャリアと関係ない理由が出てきた時に要注意

では、どういう時に注意をしなければならないかというと、キャリアと関係のない転職理由がたくさん出てきた時です。

人は、自分がこうしたいと思ったら、それにいろいろと、後付けで、積極的に理由を作るものです。

巷には、やらない・出来ない理由をたくさん話す方がいますが、これは、面倒なことを回避したいという強い思いがあるためであり、その思いを実現するために、あれやこれやと理由を作り出しているわけです。
(そういう人を見ると、そのパワーをプラスに働かせればいいのに・・・と思うのですが、それはさておき)

転職活動においても同様で、思わぬところから内定が出た場合に、そこがキラキラして見えると、いろいろと、積極的に、後付けで理由を作ります。

周りに自慢したいから、家族が喜ぶから、親を安心させたいから、将来安泰に思えるから、楽そうだから、給料や福利厚生が良さそうだから、仕事内容は微妙だけどやれそうだから、などなど、本当にいろいろと出てきます。

これらは、エージェントに語るためというよりは、自分を納得させるための理由です。人は、自分は正しい選択をしたと思いたいものですので、本来の転職理由を凌駕するだけの理由をたくさん考えます。

もちろん、前述の様な転職理由は一概に否定すべきものではありません。誰しもプライドはありますし、お金はあるに越したことはないですし、生活も不安定よりは安定した方がよいと思うでしょう。楽して稼げるなら、そうしたいと思うのも人の心情というものです。

でも、それらの転職理由は、いま自分が置かれている状況を根本的に解決するものでしょうか。リスクを冒してまで転職したいと思ったそのモチベーションやきっかけは何だったのでしょうか。

キラキラして見える企業からオファーが出た場合、まともに転職理由を思い出すとその企業を選ぶことが出来ないので、敢えてそこから目を逸らすために、別の転職理由をたくさん見つけ出します。そして、その理由の数を比較して、「ほら、こんなに別の理由があるんだから、そこそこの仕事内容になっても仕方がないよね。だって、こっちに行けって理由がこんなにあるんだもん」と自分を納得させる方向に考えを進めます。

しかし本当は、心の底では気付いているはずなんです。転職先を決めるに当たって大事なのは、理由の数ではなく、理由の重みであるということに。

そこに個人の力で戻ることは、簡単な様で本当に難しい。そのため、第三者である私どもエージェントが、ご支援中に何度も『そもそもなぜあなたは転職をするのか』と問いかける訳です。

なぜあなたは転職をするのか

なぜあなたは転職をするのか。この問いは、時にあなた自身を苦しめます。人間というものは、論理的な正しさだけで生きられるものではなく、頭では分かっているが感情がついていかないということがよく起こります。そうなると、感情と思考と行動が不一致(自己不一致)の状態となり、それを統合できない自分に苦しむことになります。

でもここで、「もう考えるのは面倒臭い!えいやっ!で決めてしまおう」となるのだけは避けましょう。論理的に正しいのに感情が別方向に向かっているという状態は、論理が間違えているか、冷静さを失っているかのどちらかです。

冷静になって考えた結果、当初の転職の目的に戻るか、それとも気付いていなかった真の転職理由に気付くか、どちらになるかはわかりません。でも、考え抜いた結果として出てきた結論は、あなたをきっと後悔のない選択に導いてくれます。

なぜ自分は転職をするのか。転職を考えてから転職活動が終わるまで、この問いを常に念頭に置き、自問自答を続けて頂ければと思います。

筆者 田中 祐介
コンサルタント実績
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