対立する考え方、どっちを信じる?
本屋でキャリア関連のコーナーに行くと、『何十年先のキャリアプランを立てることが成功の秘訣だ!』と書いているものもあれば、『キャリアプランなんて立てるからダメなんだ!』と、正反対のことを書いているものもあります。
キャリアプランに限らず、この手の矛盾は他の分野でも見られます。例えば『断る力』が流行った時には、『頑張らない生き方』も同時に話題となりました。
それなりの権威があり発言力もある方が全く異なる意見を言っていると、聞き手である私達としては、どっちを信じればいいのか分からなくなります。
こういった場合、どちらが正しいのかは、何を基準に判断すればいいのでしょうか。
どちらも正しく、どちらも間違い
結論からいえば、多くの場合、どちらも正しくもあり、どちらも間違っています。
ある条件下においてはAの本の言っていることが正しいが、条件が変わればBの本の方が正しいということが起こり得ます。
また、一見矛盾しているような話であっても、それが同時に正しいということも現実としてありえます。
さきほどの『断る力』と『頑張らない生き方』を例に挙げると、前者は強力な上昇志向を、もって自分でキャリアを切り拓け!という考え、後者は変に理想を求めて苦しむより今を受け止めて生きる方が却って良いという考えであり、世間的には真っ向から対立したものとして取り上げられていました。
ただ、実際の日常生活では、面白い仕事をバンバン取ってガンガンキャリアアップするぜ!という時もあれば、最近疲れているので自分に鞭を打ち過ぎないようにしよう、という時もあります。
適切なタイミングで適切な考え方に基づいて行動していれば、同じ人間が時に応じて全く正反対の動きをしても、それはいずれも正しい行動であり、どんなに正しそうな考え方でもタイミングが適切でなければ、いずれも間違った行動になります。
キャリアプランは必要か?
では、最初のテーマに戻ります。すなわち、キャリアプランは必要かどうかについてです。
この話題についても、要るという意見も、要らないという意見も、両方とも正しく、また、間違っていると言えます。
そもそも、キャリアプランが要る、要らないと論じている人は、必ずと言っていいほど、自分はキャリア的に成功していると思っています。
そして、がむしゃらに目の前のことに集中してきて今の自分にたどり着いた人は、キャリアプランなんて要らないと言います。
また逆に、まず今年はこうなって、来年はこうなって、三年後は、五年後は・・・と考えた上で、その通りになった人は、キャリアプランが必要だと言います。
一方で、がむしゃらにやっているのにうまくいかない人や、キャリアプランを立てているのにうまくいかない人は沢山います。前者の人に、もっとがむしゃらにやれと言っても意味はなく、後者の人に、より綿密にプランニングせよと言っても意味はありません。この場合は、いずれも間違いという話になってしまいます。
とはいえ、がむしゃらにやっている人がキャリアプランを立てると、たちどころに状況が好転するかといえば、そうなる時もあり、そうならない時もあります。同様に、キャリアプランを綿密に立てている人ががむしゃらにやって、うまくいく時もあれば、そうでない時もあります。
つまりは、いずれが正しい、間違っているという話ではなく、いまの自分を冷静に把握し、その状況に応じた適切な手を打つことがポイントであり、そのヒントとして、誰かがたまたま上手く行った方法を試してみる、というスタンスが重要なのです。
そのため、キャリアプランを立てるべきかどうか、という問いへの回答としては、立てた方が前に進めるなら立てるべき、がむしゃらに突き進むべき時なら立てる必要はない、です。
ただ、実際は両方を組み合わせるハイブリッド型が多いです。ざっくりとしたキャリアプランを立てて、一定期間がむしゃらに行動する。そして、時に立ち止まり、キャリアプランを見直して、またがむしゃらに行動する。このサイクルを回して行くことが、実は一番シンプルで、かつ汎用性の高いものだと私は思っています。