『人間70年』の時代になってしまった
『人間五十年 下天の内を比ぶれば 夢幻の如くなり』
かの信長も舞ったと言われる幸若舞の『敦盛』の一節。自分が25歳になったとき、そうか、人間50年だとすると、もう折り返し地点なんだなと思い、とにかく走らねばと気を引き締めたことを思い出します。
その気持ちは今でも変わらないのですが、現実は50歳で隠居できる世の中ではなく、2015年現在で定年が65歳、今30代の人は70歳、下手をすると75歳くらいまで働かなければならないかも知れません。
人間70年時代における35歳の転職を考えてみる
さて、その前提を元に、本コラムのサブタイトルにある35歳の転職の話に移ります。
一般的には、35歳の転職は『最後の転職』と捉えられているように思います。
最後の転職と考える理由ですが、『人間50年、もう人生の7割を過ぎたから、あとの3割は集大成にしたい』というのは稀で、『求人票に応募資格は35歳までと書いてあるから』という理由が大半を占めます。自発的に35歳で最後の転職にしたいと考えるよりは、求人票にそう書いてあるから35歳の転職を最後にしないといけないんだろうな、と思っていることがほとんどの様です。
覚悟の『最後』は良いが、逃げの『最後』は早すぎる
確かに現実問題として、35歳以下を募集する求人が圧倒的に多いので、特に35歳前後の方には転職先を慎重に選んで頂きたいと思っています。
一方で、35歳という年齢が仕事人生のどのくらいにあたるのかも冷静に考える必要があります。
35歳時点での社会人経験年数 ※ストレートに進学した場合
高校卒業後 | 17年 |
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専門学校卒業後 | 15年 |
大学卒業後 | 13年 |
大学院(修士)修了後 | 11年 |
仮に70歳まで働くとすると、残り35年は働かなければなりません。35歳時点で社会人人生がどの程度過ぎたかを実際に計算してみると、以下の様になります。
35歳時点で社会人人生がどの程度過ぎたか
高校卒業後 | 33% (17年÷(35年+17年)) |
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専門学校卒業後 | 30% (15年÷(35年+15年)) |
大学卒業後 | 27% (13年÷(35年+13年)) |
大学院(修士)修了後 | 24% (11年÷(35年+11年)) |
高校卒業後に就職した方でも全体の3分の1程度、大学院修士卒の方だと4分の1程度しか働いていないことになります。30代中盤の方とお話をしていると、よく、ある程度頑張って働いたのであとは逃げ切るための転職にしたい、という話をお聞きしますが、冷静に考えれば、わずか3分の1から4分の1程度に差し掛かった時点で逃げ切れる道がある、と考えるのは、余り現実的でないように思います。
そもそも35年という長さは、第二次世界大戦の終戦(1945年)から、ちょうど今年35歳の人が生まれるまで(1980年)の間です。この間に世界および業界は目まぐるしく変化しており、そう考えると、35年の歳月がいかに長く、また変わりゆくものであるかを実感することが出来ると思います。
覚悟を決めて最後の転職!とするのは良いですが、この転職で最後まで逃げ切ろう!とするのは、可能かも知れませんが、得策とは言えなさそうです。
35歳こそ、思い切った一歩を踏み出すべし
もちろん、人生はマラソンみたいなもので、全力で走りっぱなしは疲れてしまうため、ペース配分を適切に行うことは大事です。ただ、一度走るのを止めて筋力が低下してしまうと、いざ走らねばという時に思うように走れなくなってしまいます。
そのため、仮に逃げ切りたい気持ちがある場合でも、まだ社会人人生の第一コーナーを回ったばかりなんだという現実を認識し、第四コーナー、少なくとも第三コーナーを回るまでは走らねばと覚悟を決めて、35歳の勇気ある一歩を踏み出して頂きたいと思います。