事業戦略を伝えるストーリー
10年ほど前に「ストーリーとしての競争戦略」というビジネス書がヒットしました。当時私もせっせと読んだのですが、経営学者が執筆した書籍にしては抜群に読みやすく、いまだに頭に残っています。
読みやすさだけではありません。企業経営の中でも経営戦略・競争戦略にフォーカスしているのですが、本書はそれをストーリーとして紹介したのがユニークな点でした。著者は「優れた戦略とは、思わず人に話したくなるような面白いストーリーだ」と語っています。誰もが知るような大手有名企業が、これまで生き残ってきた経営戦略や事業戦略。それには過去の経緯や歴史的背景を踏まえて、その戦略を取る必然性や巡り合わせがあった。だからこそストーリーとしての面白さ、ユニークさがある。という主張なのです。
購読したのは10年前なので、内容自体は正直忘れている部分もあります。ただ企業の競争戦略として取ってきた一つ一つの決断が、ストーリーとして語られることに面白味を覚え、またそれが人に伝える有効な手段なんだと強く覚えています。
また、企業戦略のストーリーを知ることで、会社のアイデンティティが分かる点です。その会社がどういった志向の会社なのか。どんな時にどんな決断をする会社なのか。同じような苦境に追い込まれても真逆の戦略を取る企業もありますが、競争戦略なのでそれで構わないのです。その企業が取る決断が、経営というストーリー上どのようなフックとなるのか。その一連の流れを知ることで、企業自体を知ることに繋がるのです。
自分を語る上でのストーリー
面接の場では、その人の人となりを問うような質問も投げかけられます。現職になぜ入社したのか。だけではなく、なぜその大学に進んだのか。なぜその学部だったのか。なぜその研究室を選んだのか、、、等々。正直、それらの選択は何となくだったり、行き当たりばったりで決めている人が多いのも分かります。実際、私もそこまで高潔な理由で大学も1社目も選んでいません。(1社目は、お会いしたOBの方の印象で決めました)
ただ、大事なのはストーリーです。その人がどういった思いで、どういった考えで、どういた巡り合わせでその決断に至ったのか。そのすべてを「何となく」と回答してしまえば、その人のアイデンティティが見えません。どんな理由であれ、どんな意思であれ、そこにストーリーを語ることが重要になってきます。
ゼロからストーリーを完全創作する必要はありません。ただ、このストーリーは誰でもない、あなた自身のストーリーなのです。あなたが経験して、あなたが決断してきた話なので、ストーリーテラーとしてはあなたしかいません。
そして、そのストーリーの最新話は現在のあなたです。現在に繋がるストーリーが、あなた自身のキャリア戦略、人生設計そのものになっているのです。
ストーリーの力
そして、ストーリーは人を惹きつけます。
一つ一つの決断について、実際には簡単に物語に落とし込めるわけもないんです。その時とその時で、もっと複雑な背景や決断の意図があったと思います。ただ、面接の場で語るには端的に伝える必要があります。だからこそ、ストーリーとして語ることが有用なのです。
大事なのは、大学を決めた理由でも、学部を決めた理由でもありません。あなた自身の決断の軸なのです。それが一番伝わるストーリーを語ってみてください。