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第1088章
2022/09/22

DRAGON QUEST – ダイの大冒険 – から リーダーとは 仕事とは 人生とは【中編:何のために腕を磨くか】

前編では、ダイの大冒険からリーダーとは?を考察しました。中編では、何のために修業し、腕を磨くのか、というテーマで書き進めたいと思います。

さて、これを読んでおられるみなさんは、日々、ご自身のスキルアップに勤しんでおられると思います。もちろん、自分のために頑張っておられると思いますが、ここでは、もう一段高い視点で、何のために自分の腕を磨いているのかを考えさせられる話をピックアップします。

修行で得た力は他人のために使うもの(アバン)

大魔王バーンの強大な力によって生まれ変わり、パワーアップした魔王ハドラーとの対決のとき、アバンがダイとポップにアストロン(人を鋼鉄のように硬くしてあらゆる攻撃を跳ね返す呪文)をかけ、決死の戦いに挑みます。そんなアバンに対してポップが、元勇者だからってなんで先生が戦わなくちゃならないのか!と問いかけた時に、アバンがこのように答えます。

『それにね ポップ・・・ やっぱり修行で得た力というのは 他人のために使うものだと私は思います』

出典:集英社 ジャンプ・コミックス DRAGON QUEST -ダイの大冒険-
第2巻 アバンのしるしの巻 55ページ
著者:稲田 浩司 原作:三条 陸

スキルアップ、キャリアアップ。それは自己のために行うものではあります。誰しも、子供の頃からたくさん勉強をしてきましたし、社会人になってからもスキルを磨いてきています。それらは第一に、個々人が自身で生きていく力を得るためではあります。

一方、教える側の視点でいえば、ボランティアで教育をしたり仕事を教えたりしているわけではありません。社会に役立つ人になって欲しい、あなたの力を使って困っている誰かを助けて欲しい、そんな思いを持ってあなたに教え、スキルアップの機会を提供しています。

それらを受ける側としては、ついついそれを忘れがちです。特に若いうちは、自分が生きていくことに精一杯で、周りを見る余裕もないので、周りが助けてくれていることに目が向かなくても無理はありません。

でも、私たちは1人で生きてきたわけではありません。この世界において、私たちは多くの人々に支えられて生きています。

アバンも、たくさんの修業と実戦を経て勇者となり、魔王を倒せるだけの力を獲得したわけですが、自分1人でその力を得たとは思っていません。仲間であるロカ、レイラ、マトリフ、ブロキーナをはじめ、王女フローラやたくさんの人たちに支えられてきたことを理解しています。それで、このような話をポップにしたわけです。

私も、研鑽により身につけた力は、誰かのために使うべきものと思っています。未熟なうちはさておき、仕事をひたすらこなすレベルから脱却できたら、それを社会に対して還元していくことを考えてみましょう。それが、自分を成長させてくれた社会への恩返しですし、結果として、社会人として更なる高みにあなたを引き上げてくれるようになります。

魔法使いの魔法は仲間を守るためのもの(マトリフ)

氷炎将軍フレイザードに敗れたのち、再度の決戦に向けて、大魔導士マトリフがポップを特訓します。マトリフはポップにルーラ(瞬間移動する呪文)を覚えさせようとしますが、ポップはルーラなんか覚えても役に立たない、凄い攻撃呪文を使ってちゃちゃっと敵をやっつければ問題ないだろうと言います。そのとき、マトリフがポップを叱りつけます。

『魔法使いの魔法ってのはな 仲間を守るためのものなんだ』

出典:集英社 ジャンプ・コミックス DRAGON QUEST -ダイの大冒険-
第6巻 マトリフ特訓の巻 159ページ
著者:稲田 浩司 原作:三条 陸

ポップが凄い攻撃呪文を覚えたがったように、人はどうしても派手で格好良いことに目を向けがちです。私も若いころ、先輩から、応用ばかりやろうとしてはダメだ、基盤をきちんと作りなさい、と諭された経験があります。

もちろん、20代であれば、シンプルに戦力になるためにスキルを身につける、で良いでしょう。また、その後についても、価値観は人それぞれなので、そのまま突き進むことも良いでしょう。

ただ、組織を引っ張っていく人になりたいと思ったら、攻める力だけでなく組織を守るという視点が必要です。マトリフが、ルーラのような地味な呪文こそ大事であると諭したように、地味に見える仕事のスキルが、物事を支え、成功に導きます。

アバンの「修行で得た力は他人のために使うもの」に共通しつつ、また違った視点で大事なことを気付かせてくれるマトリフらしい一言といえます。

正義なき力が無力であるのと同時に、力なき正義もまた無力(アバン)

アバンが子供のマアムに対して、魔法を詰めて打ち出すことができる魔弾丸という武器を渡したとき、心優しいマアムは「武器はいらない」と泣き出します。その時にアバンは、大事な人を守るためには力が必要であることを教えます。

『・・・でもね マァム 愛や優しさだけでは 必ずしも他人を守れない時もあるのです 正義なき力が無力であるのと同時に 力なき正義もまた無力なのですよ』

出典:集英社 ジャンプ・コミックス DRAGON QUEST -ダイの大冒険-
第3巻 アバン・我らが師の巻 55ページ
著者:稲田 浩司 原作:三条 陸

私が小さい頃は、まだまだ自衛隊は不要だという話が出ていましたが、武力を持たずに他国から攻められた場合は、侵略されるがままとなってしまいます。また、戦争に限らず、日々私たちは何かしらの生存競争にさらされています。その競争から生き残り、大事なものを守るためには、外敵を退ける力が必要です。攻められた時に対抗するだけの力がなければ、いくら正義を叫んでも無力なのです。

これを読んだのは中学生の頃でしたが、子供心に、自分が強くあらねばと思いました。

働き方改革、ワークライフバランス、自由な働き方・・・日本社会も、以前に比べたら随分働き易くなりました。ただ、それらも、力なくしては実現できないものです。

人が自分を犠牲にしてまで働き、身体を壊すような会社は、正義なき力を持った会社と言えます。そんな会社は、そのうち滅んでいくでしょう。一方で、働き方が良くても、社会の競争に勝てず、収益が上がらず、社員を養っていけないような会社は、力なき正義を振りかざす会社と言えます。正義なき会社と同様、無力であり、こちらもまたそのうち滅んでいくでしょう。

私は、一人一人がやりがいと活力を持って働ける会社が正義の会社だと思っていますが、その正義の実現には力が必要であり、そのためには一人一人が力を付ける必要があると考えています。アバンの言葉はとても深いな、正義の実現のために力を付けなければなと、いまでも日々思い、力を付けることに勤しんでいます。

(後編へ続く)

【出典】
DRAGON QUEST – ダイの大冒険 - 著者:稲田 浩司 原作:三条 陸 出版社:集英社

筆者 田中 祐介
コンサルタント実績
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