転職活動の正念場とも言える面接。面接時の回答で合否が決まります。多くの方は面接に向けて事前に自分の考えを整理したり、回答を考えておいたりと何かしらの準備をしていることでしょう。なかには想定される質問に対する回答を事前に考えておき、回答内容を暗記しておく、という手法を取っている方もいるかと思います。しかし面接は少なからず緊張する場面であり、事前に準備していたことを思い出せずに、こちらの想いをうまく伝えられず、悔しい思いをした方もいるのではないでしょうか。日頃から学びの習慣がついている方ならまだしも、社会人になってから暗記することなんてほとんどない…という方にとっては回答を覚えるのも一苦労ですよね。そこで、今回のコラムでは記憶研究の科学者たちが書いた本『使える脳の鍛え方 成功する学習の科学』(ピーター・ブラウン、ヘンリー・ローディガー、アーク・マクダニエル著、依田卓巳訳)の中から、記憶定着に効果的な方法をお伝えしたいと思います。
「想起練習」で記憶の定着率が上がる
本書ではいくつか記憶定着に効果的な学習方法を紹介していますが、今回はその中でも「想起練習」の重要性についてお伝えします。想起練習とは、簡単にいうと、記憶したい内容を何度も思い出すことです。暗記に苦労した学生時代を思い返すと、覚えたい内容は何度も教科書を読んで、つまり、インプットを増やして記憶に定着させようとした方もいるのではないでしょうか。実はこのインプットを増やすという学習方法は記憶の定着には効果が薄いということです。それよりもインプットした内容を思い出す、つまりアウトプットすることに比重を置いて学習するだけで記憶の定着率が上がります。インプットの回数が少なければ思い出すことも難しいですが、それでも思い出そうとすること、記憶を引っ張り出そうと努力することで学習を司る神経回路が強化され、記憶定着につながるのだそうです。
面接練習は1回でも多く発話すべし
この想起練習は面接の回答準備においても同じように使えると思います。空き時間に何度も自分の考えた回答(文章)を読み返すよりも1回でも多くアウトプットする、つまり発話して練習するほうが記憶に残りやすくなるでしょう。回答内容がしっかりと記憶に定着していれば、どれだけ面接で緊張しても本当に言いたいことを思い出すことができるはずです。
みなさまが大事な面接の場で最高のパフォーマンスを発揮できることを祈っています。
<参考書籍>
「使える脳の鍛え方 成功する学習の科学」ピーター・ブラウン、ヘンリー・ローディガー、アーク・マクダニエル著、依田卓巳訳