PMPで学んだマネジメント論
新卒でプライムSIerに入社した私。プログラミングも下積みも一切やらずにリーダー業務に関わり、4年目ではPMも任されていました。今考えれば、なかなかのムチャ振りだったと思います。私の至らなさから、プロジェクトはよく炎上していました。小規模でしたが、はっきり失敗に終わったものも幾つか思い出されます。
そんな私でも5年、6年と経験を積み、徐々にノウハウを積み上げることで成長していきます。大規模なPJも幾つか経験し、それなりにマネジメントのことも分かってきたタイミングで、PMPという資格と出会いました。
この資格、勉強すればするほどなかなか面白いものでした。それまでは、経験と勘と度胸だけでマネジメントしていた私。身に付いたなんとなくの感覚を大事にしていたのですが、それがロジカル且つ体系的に整理されていることに感動したのを覚えています。
このマネジメントの知識体系はIT業界に限らず、あらゆる業界・業種に適用されていました。今から10年以上前の話ですが、PMPは工事現場や建設現場などのマネジメントにも適用されていると聞き、なるほどどんな世界でもこのマネジメント論は有効なんだなと勝手に感動しました。当然、システム開発の現場や日本の商習慣とは相入れない記載もあったりするのですが、そこも含めてなかなか楽しい思い出です。
若い時に感じたリーダー適正
入社当初は、自分はリーダーシップが弱い人間だと思っていました。当時はとにかく、人に何か指示したりするのが苦手だったんです。開発チームに対して依頼する際に上手くいかないことが何度もありました。新人のころは経験も知識もなく、今から考えれば当然なのですが、自分の先天的な性格やキャラクターがリーダーに向いていないのでは?と思ってもいました。
ただ、年を重ねて経験を積むと、そんな自分でもマネジメントがそれなりに出来ると気付きます。その時には年齢も30歳近くになっていましたが、年齢が上の人であろうと、経験が上であろうと、自分の考えをしっかりと伝えれば交渉事が出来ると分かったんです。今でも自身には優れたリーダーシップがあるとは思っていません。モチベーターのようなマインドや、周囲をグイグイと鼓舞するようなタイプではないと思っていますが、それでもマネジメントは出来るのです。
デール・カーネギーという人が書いた「人を動かす」という書籍も参考になりました。世界中で読み継がれている古典的名著で、現代におけるリーダーシップ論としても大きな影響を与えている書籍と言われています。この本で言っていることを要約すると、人を動かすにはどんな強い口調やメッセージを伝えることより、相手をリスペクトして自身の行動で示すこと。それによって自分の意思が伝わり、リーダーとして高い成果が発揮出来る。ということ。そしてこの方法こそが、経験の弱い私が実践していたマネジメント手法でした。
それまで自身のマネジメントは、どちらかというと調和を大事にする日本人らしいやり方だと思っていた。ただ私が実践していたのはグローバルで用いられているリーダー論だったと知り、我が意を得たりの感覚だったのを覚えています。
IT業界におけるマネージャーとは
最近、とある業界のハラスメントのニュースがよく聞かれるようになりました。「権力者はハラスメントをするリスクがある」。それは確かによく分かります。100名以上の人員が関われば、それを統括するマネージャーは権力者と言えるかもしれません。
ただ、システム開発におけるハラスメントは、私自身はあまり聞いたことがありません。もちろん一部では、そういう前時代的なパワハラPMが今でもいるでしょう。ただ、私がこれまでお会いしてきたプロジェクトマネージャーの方々は、皆さんとても物腰柔らかい、謙虚で丁寧なお方でした。ハラスメントなんて人権的にも当然NGですが、プロジェクト自体も炎上するでしょう。プロジェクトは人が命です。人を軽んじるマネージャーは、プロジェクトも上手くいきません。部下からの信頼も得られなければ活躍の場も奪われていくはずですし、そういった自浄作用が機能しているのが今のIT業界だと信じています。
あなたの性格がマネジメントの強みになる
PMPは絶対の資格だとは思っていませんが、少なくともマネジメントを体系的に理解していることは管理業務のベースになると思っています。思いつきや勘に頼らず、あるべきマネジメントを常に見据えて最大の努力をするのがマネージャーとしての務めでしょう。
その上で、マネージャーは強権的である必要はまったく無いと思うのです。穏やかな方であっても務められますし、むしろ穏やかであるその性格が強みになるのがマネジメントです。相手をちゃんと認めてあげながら本質的な目的意識をお互いに共有し、自身も汗をかくことでプロジェクトは前に進みます。マネジメントの知識を学びながら、自身の性格を生かしたマネージャーを目指していきましょう。