DX人材とは
先週の土曜日、Vol.1000回おめでとうございます!というメッセージを受け取りました。見てみると、もう何年も前に転職支援をした方からのメッセージ。うかつにも先週がメルマガ配信1000回目ということにそのメッセージで気付く始末。なんでも997回くらいから1000回目はどんなメルマガになるかと楽しみにしていたようで、とても恥ずかしく、同時に、随分前にご支援した方なのにいまだに毎週メルマガを読んでくださっていたことを嬉しく思いました。
さて、そのメッセージを皮切りにいろいろとやりとりをしたのですが、その中で、DX人材とは、という話題が出てきました。
DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が出てきてから数年、いまや右を見ても左を見てもDXです。近所の英会話教室の広告にまでDXという言葉が踊っており、DXという言葉を聞かない日はないくらいになりました。
弊社にも、弊社がIT業界専門の人材紹介会社ということもあり、DX人材が欲しいという企業様からの問い合わせが増えています。SIer、コンサルティングファーム、事業会社のいずれでもDX人材を積極募集中です。
ただ、DX人材とは何か?となると、実に定義があいまいです。実際、どういう人をDX人材とイメージしていますか?と企業様にお聞きすると、各社バラバラの答えが返ってきます。「まだ決まっていない、これから考える」という企業様も、正直なところ少なくありません。
それで、その方とのメッセージのやりとりの中でも、「何を以てDX人材か」という話になったのですが、その方は「(ITを駆使でき、かつ)自らフィールドに出てキャプテンシーを発揮できるハンズオン型の人材」と定義をされていました。
キャプテンシーという言葉には馴染みがなかったのですが、要するに現場から離れて指針を示すことだけをするのではなく、プロジェクトの当事者として現場に入り込み、変革を強力に推進する人、という意味で使われたのだろうと思います。なるほど、それは言い得て妙だなと思い、DXとキャプテンシーを題材にコラムに書くことにしました(勝手にネタにしてすみません!)。
DXとは
そもそもDXとは何か、という話ですが、経済産業省が2018年に定義したもの(※1)が核心を突いていると思います。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
なんだか一文が長すぎて分かり辛いですが、分解すると分かり易くなります。
○DXのポイント
- 顧客/社会ニーズが起点
- データ・デジタル技術の活用
- 企業自らの変革
○変革対象
- ビジネスモデル
- 製品
- サービス
- 組織
- 業務
- プロセス
- 企業文化・風土
変革対象は、企業を構成する全ての要素、ということですね。単なる業務のIT化やデジタルマーケティングがDXと言われることもありますが、それだけではDXとは言い難いというのはみなさんも感じておられることかと思います。Transformation、すなわち、変革が発生してこそDXと言えるでしょう。
また、もともとデジタルトランスフォーメーションという言葉は、スウェーデンのウメオ大学教授エリック・ストルターマン氏が2004年に提唱した概念だそうです(※2)。その定義は以下の通りです。
「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」
つまり、ITが、企業だけでなく我々の生活にも良い影響を与えるようになる、ということです。
上記定義を踏まえたうえで私が考えるDXのイメージは、受益者と供給者が相互作用を繰り返して進化し続けることです。
顧客(企業)や社会(消費者)といった受益者の潜在/顕在ニーズに合わせて供給者がサービスとその提供の仕組みをガラっと変える。それにより、受益者の心理や行動が変わり、それに応じてまた供給者が変わっていく。受益者が供給者を変容させ、供給者が受益者を変容させ、また受益者が共有者を変容させる。その相互作用がポジティブなスパイラルを生み出していくのがDXであると私は考えています。
これは私なりの解釈ではありますが、いずれにしてもDXがTransformation=変革という言葉を含んでいる以上、企業がダイナミックに変わることがDXにとって必須と言えます。
改めて、DX人材とは
では、それがDXだとして、DX人材とはどういう人材のことを言うのか。それは、ITのパワーとポテンシャルをフル活用して企業変革を実現できる人材と考えています。
しかし、変革と口で言うのは簡単ですが、ちょっとした業務改善程度ではお話しになりません。再び経済産業省の定義を持ち出しますが、「製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革」することがDXなのです。
これは、会社の偉い人がやれ、とただ命令しても簡単にできるものではありません。なにせ、製品もサービスもビジネスモデルも変えてしまうわけですし、それに伴い業務も組織もプロセスも、はたまた企業文化や風土まで改革するというわけですから。
これまでDX人材と言える人がいたかな・・・と考えたときに、思い出したのは戦略コンサルタント出身の三枝匡氏です。三枝氏は旧態依然としていたミスミという企業を、代表取締役という立場ながら現場に深く入り込み、前述した全ての要素を自らの手で変革しました。高いところから声を発していただけではまず変革は成し遂げられなかったでしょう。詳しくは三枝氏の著書『ザ・会社改造 340人からグローバル1万人企業へ』(※3)に譲りますが、これぞDXだと言えるものがそこにはありました。
長くなりましたので今回はここまでにします。次回は、DX人材になるためにはどうすればよいか、というお話しをさせて頂きます。(後編へ続く)
<参考書籍>
※1 経済産業省 『平成30年 デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン』
※2 総務省 『平成30年版 情報通信白書』
※3 日経ビジネス人文庫 『ザ・会社改造 340人からグローバル1万人企業へ』 三枝 匡 著