著者プロフィール
- 本田 佳武人
- 大手外資系企業にてプロジェクトマネージャとして活躍中。製造、金融、物流等、数多くの大規模システム開発プロジェクトの経験を持つ。
ここでは、プロジェクトマネージャを志望している人たち向けに、プロジェクトマネージャとはどんな仕事で、どのようなスキルを要求され、今後どのようにキャリアを積んでいけば一人前のプロジェクトマネージャになれるのか、について説明して行きます。本章では、プロジェクトマネージャの仕事について説明します。
第1回 プロジェクトとPMの役割
プロジェクトとは
プロジェクトとは、ある期間内に、何か新しいもの、この世に存在しない何かを造り出すことを目的として実施される一連の活動のことです。造り出すもの、つまり成果物は「新しい建造物」、「新しい製品の試作」、「ITを利用した新しいシステム」などで今まで存在しなかった何か新しいものです。
しかし、同じプロジェクトでも「建造物」を作る場合と「ITシステム」を作る場合では、かなり違います。「建造物」のプロジェクトの場合には、建設途中の状態を専門家が見ると、プロジェクトがどこまで進んでいるのか、うまく行っているのか、まずい状態なのかが分かりますが、ITシステムの場合には専門家でもそう簡単には分かりません。以降では「ITシステム」を成果物とするプロジェクトに絞って話をします。
プロジェクトの目標と成果物
プロジェクトの目標とは、成果物(ここでは「ITシステム」)を使って実現したいことで、例えば「電話とメールによる顧客対応業務の効率を上げること」だったり、「マーケティングに役立てるための詳細な顧客データを収集保管すること」だったり、はたまた「インターネット直販によって売上を倍増すること」だったりします。
プロジェクトの費用を負担するのはスポンサーで、「成果物」を使用するのがユーザです。スポンサーは、予定の期日までに成果物を得るために、プロジェクトマネージャ(PM)を任命し、必要な人材、資材、費用などを供給します。
プロジェクトマネージャ(PM)の役割
プロジェクトマネージャ(PM)は期日までに成果物を完成させる使命を負います。そのためにプロジェクトチームを結成し、あらためて必要な人材、資材、費用を計画して確保し、プロジェクトを遂行します。成果物が完成し、ユーザやスポンサーに受け入れられた時点で、プロジェクトは終了しプロジェクトチームは解散します。成果物の完成後は運用担当チームがこれを運用しますが、運用すること自体はプロジェクトチームの役割ではありません。
とはいっても、プロジェクトチームは、できるだけ容易に運用できるシステムを開発し、スムーズに運用チームに引き継ぐ責任があります。なお、プロジェクトの途中で、事情が変わって成果物自体が不要となった場合、あるいはスポンサーが費用負担できなくなった場合などには、プロジェクト自体が中断され、プロジェクトチームが解散することがあります。
近年、ITシステム開発プロジェクトは、業務要件の高度化、IT技術の高度化、複雑化、マルチベンダ化などによって、益々困難なものとなってきています。このため、プロジェクトマネージャ(PM)の役割は益々重要となり、スポンサー、ユーザの期待は大きくなって来ています。