著者プロフィール
- 佐伯 祐貴
- 新卒入社した食品専門商社の情報システム部門にて社内インフラ(主にネットワーク)を経験後、自社の基幹システム(販売系)の維持保守を担当。その後、総合商社系専門商社のIT企画部門に転職し、自社サーバーのクラウド移行、子会社の基幹システム刷新に伴う導入支援等に携わる。現在はメーカー系商社のIT企画部門にて、グループ会社のIT全般の支援および国内の工場における基幹システム刷新の企画立案業務に従事中。一貫して商社の社内SEとして活躍。
第1章:社内SEとは
はじめに
私が社内SEになった理由は至ってシンプルです。それは、新卒で入社した会社の配属先が情報システム部門であった、ただそれだけでした。
私が就職活動をしていた2004年頃は、ライブドアや楽天、サイバーエージェント、USENなどITベンチャーが俄かに活気付いており、私の周りの友人もIT系の企業に就職をしていきました。一方、私は典型的な文系学生で、ITにほとんど興味がなく、IT系の知識もありませんでした。また、私はお酒を飲むことや料理が好きだったこともあり、食品専門商社に入社するのですが、そのときはまさか自分が情報システム部門に配属されるとは夢にも思っていませんでした。
あれから12年、私は2回の転職をし、一貫して事業会社の社内SEとしてキャリアを積んでいます。ITなど全く興味をもっていなかった私が、なぜ10年以上もこの世界で働いているのか、自分でも不思議です。一方で、社内SEにやりがいを感じていることも事実です。
過去の経験と私なりの考察を踏まえながら、僭越ではございますが、社内SEについて語ってみたいと思います。
社内SEの仕事内容
「社内SE」とネットで検索すると、文字通り「会社の情報システム部門で働くエンジニア」とあり、業務内容としては、自社のシステム構築・保守に関する業務や、ヘルプデスクとして社員(ユーザー)へPCや社内システムの使い方等の問い合わせ対応などを行う、という説明が書かれています。
この説明は、半分は当たっているけれども不足しているな、と当事者の私としては思っています。これまでの経験から、事業会社においての社内SEとは大きく分けて「企画」「導入」「保守」の3つに分類できると考えています。
企画
最初に企画業務ですが、一般的には超上流と言われる工程です。この業務は経営と密接に関係しており、社長や本部長の経営方針のもと、IT施策を企画立案します。プロジェクトの構想段階から関わる、つまりゼロから立ち上げるため、業務のほとんどは「なにをすべきか」「どうやって進めていこうか」といった具合に、考えることや議論することに時間をかけます。
具体的には、自社の経営方針に沿ったIT構想立案、候補となるソリューションの調査・選定、ベンダー選定や交渉、上長や役員への説明、プロジェクト計画の立案など、プロジェクトがスタートするまでの舵取りを行います。
導入
次に導入業務ですが、立案された計画に沿ったシステム導入を行います。具体的な業務としては、要件定義や開発レビュー、導入前のテスト、システム稼働前後のサポートなどになりますが、その過程で、開発ベンダーのコントロールや、実際のシステムを利用する社員(ユーザー)の要望を聞いたり、発生した課題を管理したりと、プロジェクトが完了するまでのマネジメントを行います。
保守
最後に保守業務ですが、システム導入後のヘルプデスク対応がイメージしやすいかと思います。社員からの各種問い合わせを効率的に対処することが中心ですが、それだけではなく、社員の満足度を向上させるような運用をどのように行うかも考えます。
会社によって保守の考えは様々ですが、ヘルプデスク対応を社員で行うケースもあれば、ヘルプデスクを丸ごと外注してしまう会社もあります。また、社員が少ない会社の場合、IT担当者が片手間で対応するといったこともあり、この辺りはその会社が保守をサービスと考えるかコストと考えるかで変わってくるのではと思います。
社内SEの種類
事業会社の情報システム部門の種類(組織構造とも言えます)は、これまでの経験から「自社インフラ系」「自社業務システム系」「子会社マネジメント系」の大きく3つに分かれます。
自社インフラ系
インフラ系担当は、PCの導入やセットアップ、サーバーおよびネットワーク構築が主要な守備範囲ですが、メールやSkypeといったコミュニケーションツールの保守も行います。ユーザーからみれば問い合わせる頻度が最も多い部署のため、一番身近な社内SEと言えるかもしれません。昨今では、スマートフォンの管理・保守やリモートワーク環境の整備、個人情報保護のためのセキュリティ対策など、業務範囲は多岐にわたっています。
自社業務システム系
業務システム系担当は、一般的には「アプリ担当」と呼ばれており、自社の基幹システム(販売管理、生産管理、会計等)のみならず、大きな会社であれば子会社の基幹システムの導入・保守などが担当範囲になります。
その業務内容をシンプルに言うならば、ユーザーが利用しているシステムを改修する、ということになりますが、ポイントは「ユーザーの業務をどれだけ理解しているか」に尽きます。自分の会社がどのような会社で、どのような事業を行なっており、どのような顧客がいて、どのような業務をユーザーが行なっているのか。こういった前提を理解した上で基幹システムを構築することがアプリ担当の腕の見せどころです。
そして、深い業務理解がある上で、データベース、マスタの考え方、プログラムなどの技術面にも詳しければ、間違いなくよりよいシステムが構築できます。
子会社マネジメント系
また多くの子会社を抱える大企業で、子会社の規模が小さくIT担当者が不在のことが少なくないため、子会社に対してIT全般の支援を行うといったコンサルティングに近い業務を行うこともあります。この場合、インフラやアプリなどIT全般の知識、子会社の業務の理解はもちろんですが、ITについて余り理解のない人がほとんどのため、IT用語をできる限り省いた会話を心がけるなど、非常に高いバランス感覚が必要となります。
自社で開発したシステムを顧客へ導入する(外販に近い)必要がある場合にも設置されるケースが多い印象です。
前述した仕事内容と、この組織構造を掛け合わせたものが、社内SEの全体像と理解していただければと思います。