著者プロフィール
- 野口 容隆
- 1990年代後半、外資系コンサルティングファームに入社。ITコンサルタントとして主に官公庁、ハイテク・通信業界の大・小規模プロジェクトや英語を標準語とするグローバルプロジェクトまで幅広く経験している。仕事では軸を大切にしている。欧州(オランダ)にて経営学修士(MBA)取得。将来の目標は「起業、教鞭を執ること」
第1章:ITコンサルタントとは
はじめに
筆者が外資系の某コンサルティングファームに入社したのは90年代後半です。それ以来ITコンサルタントとして数多くのプロジェクトに参画してきました。入社前の時点ではコンサルティングファームについての情報を得るのに苦労した記憶があります。また、働く前の時点ではITコンサルタントに対するイメージというのは、漠然とした部分も多かったように思います。
そんな中で、実際にITコンサルタントとして働いている方の話を聞くことが、最もイメージを持ちやすい手段だったことを覚えています。ですので、ここではできるだけITコンサルタントのイメージが具体的に湧いてくるような話ができればいいと思います。まず第1章では、ITを切り口としたコンサルティングサービスやITコンサルタントとしての役割について説明致します。引き続き第2章、第3章で、ITコンサルタントの仕事内容やキャリアパスについて述べたいと思います。
本章では、
- ITを切り口としたコンサルティングサービス
- ITコンサルタントとしての役割
について述べたいと思います。
1. ITを切り口としたコンサルティングサービス
コンサルティングファームやSI企業において、ITコンサルタントによるコンサルティング業務についてどのようなイメージをお持ちでしょうか。戦略コンサルタントの章(本研究室)でITコンサルティングファームの説明を次のようにしています。
「ITコンサルティングファームは、IT戦略、ERP、CRM、SCMの導入コンサルティングなど、システムを絡めたコンサルティングを得意としています」
「顧客層は中堅から大企業まで幅広く、プロジェクトによってはシステムの構築やシステム運用のアウトソーシングまで含むものもあり、数百億円規模になることもあります。」
上記のようなサービスを提供している例としては、アクセンチュア、デロイト トーマツ コンサルティング、アビームコンサルティング、PwCコンサルティングなどの企業が挙げられるでしょう。これらの企業の中でのITコンサルタントの仕事は、一般的にシステムコンサルティングのプロフェッショナルとして、システム導入の上流から下流に至る各プロセス(業務設計/システム設計/開発/テスト)の実務や全体の舵取り役などを担うことです。そして、その仕事を通じて、クライアントへ付加価値のある貢献をすることだと言えます。
実際に提供するサービスはプロジェクトによって異なります。また、プロジェクトのどの段階から参画するかによっても、ITコンサルタントの役割は異なってきます。ITコンサルタントが提供するサービス分野は、IT戦略、ERP、CRMなど、多岐に渡ります。それぞれの定義は一概には言えませんが、ITコンサルタントが実際に行う仕事は以下のようなことが挙げられます。
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IT戦略
企業が推進したい経営戦略と整合性をとり、ITを切り口とした戦略の定義を行う。
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ERP
SAPやOracleといったパッケージを活用して、基幹業務(財務、人事等)を一元管理できるシステム導入を行う。
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CRM
企業と顧客が長期的な関係を築くための手法として、例えば高い顧客満足度等につながるシステム導入などを行う。
また、ERPやCRMのシステム導入を行うプロジェクトでは、プロジェクトの段階に応じて行う作業も業務設計、システム設計、開発、テスト等いくつかあります。その概要は以下の通りです。
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業務設計
業務プロセスとしてあるべき業務の流れを設計する。
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システム設計
業務の流れをシステムにて実現するためのシステム化の設計を行う。
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開発
システム化するために設計された設計書に基づいて、アプリケーションを開発する。
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テスト
開発したアプリケーションが正しく作動するかどうか、検証を行う。
※その他:基盤系の作業(環境構築)、移行、インターフェース等
2. ITコンサルタントとしての役割
これまで挙げてきた業務だけでも、クライアントへ提供するサービスの領域は幅広いため、ITコンサルタントとしての仕事内容やキャリアパスが多様であることが推測できることでしょう。
ITコンサルタントの仕事内容の詳細やキャリアパスは第2章以降で述べます。ただ、冒頭にも述べましたとおり、どのような仕事であれ、ITコンサルタントはシステムコンサルティングのプロフェッショナルとして、クライアントに付加価値のある貢献活動の全てが仕事であり、役割であることには変わりありません。つまり、ITの専門家として付加価値の高いソリューションを提供することが日々求められます。付加価値を生み出していく手法は、配属される各プロジェクトでの仕事を通じて習得していくことができます。こうしたことに自主的にチャレンジしていくことが、常に歓迎される環境といってもよいでしょう。
実際の現場では、そのような環境を活かして、「常にチャレンジしたい」「責任のある仕事を若くから任されたい」「より早く成長したい」という姿勢・意欲の強いITコンサルタントが非常に多いように思います。
個人の性格については、ITコンサルタントの中にもいろいろなタイプの人がいます。一概に「こういう人でないと駄目」ということはないでしょう。バイタリティ溢れる人もいれば、非常にマイペースな人、負けず嫌いな人、慎重な人など様々です。プロジェクトは1つのチームなので、いろいろな人の持つ個性を活かして仕事を進めていこうと考えるプロジェクトマネージャー・ITコンサルタントは多いと思います。
仕事量という視点で見ると、ITコンサルタントは相対的に労働時間の長い職業だと思います。ITコンサルタントは忙しい時期は週に70-80時間程度働くようなことも現実としてよくあります。また、付加価値の中にスピードや納期という要素も必要とされます。レベルの高いチャレンジをより早く実現するために、一時的にハードワークが求められることは事実です。
私の個人的な考えでは、ITコンサルタントの仕事の醍醐味は、仕事を創ることができることだと思います。仕事を通じて、付加価値をどう生み出していくのかという部分を追求していくことには、ITコンサルタントにとっては大変やりがいがあると思います。
3. 次回(第2章)に向けて
今回はITコンサルタントについて、まず1.ITを切り口としたコンサルティングサービス、と 2.ITコンサルタントとしての役割について述べました。 1については、各IT企業のWebサイト等を見れば、各企業のより詳細なサービスについて理解できると思います。
次回(第2章)はITコンサルタントの仕事内容について、詳しく述べたいと思います。