豆蔵は、オブジェクト指向にいち早く注目し、自社開発した「enThologyメソッド」をベースにコンサルティング、教育、開発支援に取り組んできた。そして、今やこのメソッドを、内部統制や日本版SOX法、セキュリティ分野などに応用するなど、タイムリーに展開する。またオブジェクト指向のイメージから脱却し、情報化投資最適化を担うコンサルティングファームへの進化も狙う。
勢いづく豆蔵の現状と将来性を、代表取締役社長の荻原紀男氏に、求める人材像や教育制度を、人事・総務部長の藤井正氏に聞いた。
”本当に作りたいシステム”の構築を支援
「会社を設立した2000年では、システム開発全体でオブジェクト指向を活用したプロジェクトはわずか8%といわれていた。それが今では半分以上ですから、一歩先を行っていた豆蔵にようやく世の中が追いついてきたという感じですね」と、荻原社長は感慨深げに語る。
豆蔵が一貫して取り組んできたこと。それは、“使われるシステム”を作るということに他ならない。「ユーザー企業は、本当に作りたいシステムがどういうものかわからないまま大手SIerにまかせるため、6割の機能が使われないシステムができてしまう。つまりこれは過剰投資。豆蔵は、それを是正し、本当に作りたいシステムを構築する支援に取り組んできました」(荻原社長)。
その支援手法の根幹を成すのが、自社開発したenThologyメソッドである。enThologyメソッドは、要求開発とシステム開発の2つのフェーズに分かれる。要求開発フェーズでは、ビジネスモデリングの手法を用いて、企業の業務を“見える化(可視化)”。それを分析することでまず情報化要求を確立する。そして、情報化要求に基づきシステム開発への要求を明確にして、開発者に伝えるのである
そして、システム開発フェーズでは、企業の情報システム部門におけるシステムの管理開発プロセスを確立する。要は、「何をつくるべきか」を明確にし、「いかに効率よく作るか」を実現するのが、enThologyメソッドである。
時代は後からついてくると信じていた
豆蔵では、この独自の開発手法を核に、システムのプランニング支援、システム開発における高品質・低コスト、短納期の実現支援といった「ビジネスソリューションサービス」や、組込みソフトウェアにおける開発プロセス改善、オブジェクト指向/UML等を活用した技術支援、人材教育支援といった「組込みコンサルティング」などを、提供してきたのだ。
「会社設立当初は、うまくいかないときもあった。しかし、先のことをやっていれば、必ず時代が後からついてきてくれると信じていました。今では、実績も積み、支援依頼は引きをきらない。特に企業の内部統制では、豆蔵のビジネスモデリングに対する引き合いは非常に多い。また、政府が府省共通システムの最適化を図るために内閣府に設置した電子政府推進管理室の補佐官に、豆蔵の取締役の萩本順三が選ばれるなど、豆蔵の社会における存在意義も日に日に高まっています」と、荻原社長は語る。
必要なのは創造力、失敗経験、アサーティブネス
順風満帆の豆蔵だが、事業拡大に向けた人材確保にも積極的だ。年間40名程度を目標に、上流から実装、教育までソフトウェア開発の各フェーズを支援するコンサルタントの中途採用活動を進めている。
荻原社長の求める人材像は、「創造性が豊かな方」と、至ってシンプルだ。「世の中がシステム化されていない単純な時代は、まじめにコツコツと働く人材が重視された。これからは、単に言われたことをまじめにこなすのではなく、自分の頭でしっかり考えて、自分の責任の下に創造力を発揮するような方が求められます」。
求める人材像はもう少し掘り下げてみたい。人事・総務部長の藤井正氏は、「まずはベースとして、オブジェクト指向とUMLの実務経験があるか、勉強してきた方。配属先として、ビジネスソリューションサービス部隊を希望ならJavaとC++、組込みコンサルティング部隊なら、C++の実務経験か知識が必要」と、大まかな要件を説明する。その上で、面接でチェックするポイントとして、「失敗経験も含めた苦労したプロジェクトを語れるかどうか」、「アサーティブネス」などを挙げる。
「失敗経験があればあるほど、入社後に豆蔵で生かせると考えます。特に苦労していることが重要。改善しようとすれば自然と苦労するわけで、そういう点は面接で必ず聞きますね。そして、アサーティブな能力を持っていることも重要なポイントです」(藤井氏)
アサーティブネスは、コミュニケーション能力の1つで、相手の権利を侵害せずに、誠実に、率直に、対等に、自分の気持ちや要求を主張する能力のこと。最近注目されるこうしたヒューマンスキルの有無もチェックするわけである
人材育成を強化し時代を先取りしていく
一方、社内の雰囲気については、豆蔵のエンジニアの猛勉強ぶりには定評があるが、「そのアカデミックな社風に加え、『自分で仕事を取ってくる』といった具合に、個々のビジネス志向が強くなっている」と、藤井氏は指摘する。
また、教育制度も充実している。人事部からはコミュニケーション研修を用意。それに加え、テクニカルな教育は予算を確保して、自主的に講座や研修を受けるエンジニアを資金面でサポートする。そして、他社と全く異なるのが、教育ビジネスを豆蔵自身が展開していること。オブジェクト指向やUMLなどは、社内で好きなだけ研修を受けられる。
豆蔵では、今後人材の育成により一層注力していく構えだ。「今後、オープン系システムが大規模になってくると、一番難しくなるのがプロジェクト管理。これまでのウォーターフォールモデル(一方通行の古典的な開発モデル)ではなく、新しい工程管理が必要になります。そうしたスキルを持つプロジェクトリーダーは非常に不足しているので、人材をどんどん育成していく」と、荻原社長は展望を語る。
さらに、システム開発におけるテストにも力を入れていくという。「一般的な開発は終わってからテストし、大丈夫だろうということで引き渡すケースが少なくない。ところが実際使ってみると不具合が出る。本来なら、テスト計画を綿密に立て、開発の各工程にテストを組み込むことが必要というのが我々の考え。豆蔵では、テストコンサルティング事業も積極的に展開し、人材育成も進める」(荻原社長)。
そして、事業拡張のため、2006年10月にはホールディングカンパニー化も実現。人材の育成、新事業の展開、会社規模の拡大——。豆蔵は、時代が追いかけてくるのを信じながら、またしても一歩も二歩も先を行くのである。
リーベルコンサルタントから一言
オブジェクト指向技術に強みを持ち、ITエンジニアの入社したい会社人気ランキングでもトップ5に入る人気企業が豆蔵です。
オブジェクト指向やJavaという技術からIT投資の最適化というコンサルティング領域を強化しています。
オブジェクト指向を極めたい人、開発方法論を極めたい人、ITで経営課題を解決したい人に最適な企業です。