
東日本技術本部 本部長
岡本 憲仁 氏
プライムSIerとして多種多様なプロジェクトを手がけ、特にインフラ分野に強いことで知られる。海外を含めた最新の製品やソリューションの発掘、導入を積極的に進め、それらを組み合わせて企業や官公庁に最適なシステムを提供しているのも特徴だ。いま、全社を挙げて積極的に人材を求め、さらなる飛躍をめざしているが、今回は特に、広域・社会インフラ事業グループを中心に話を聞いた。
※組織に関しては、取材時(2025年1月28日時点)の組織編成となります。
伊藤忠商事のグループIT企業である二社を基盤に成長
総合商社の中でも伊藤忠商事は早くからITビジネスに意欲的で、1980年代には伊藤忠テクノサイエンス、CRCソリューションズの2社をグループ企業として持った。伊藤忠テクノサイエンスは海外の先進IT(ソフトウェア、ハードウェア、周辺機器など)を導入、日本で販売していた。インターネット黎明期からシリコンバレーに拠点を設置、Sun Microsystems (後、Oracleが買収)、Oracle、Cisco(シスコシステムズ)などの製品を扱って急成長した。一方CRCソリューションズは、コンピュータによる計算や解析の受託サービスに始まり、後にはシンクタンク事業やSIを手がけた。
2006年にこの2社が合併して生まれたのが伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)である。2023年にはTOB(株式公開買い付け)によって、伊藤忠商事の完全子会社へ。これにより、伊藤忠商事の経営判断、ワールドワイドな販路などを活かし、CTCはよりスピーディーに事業を推進できるようになった。
こうした道のりからCTCは、国際的ネットワーク、地域へのきめ細かな対応、先端技術の導入力などの特色を持つ。
「当社は300社以上の企業とグローバルパートナーシップを築き、そのうち43社からパートナーランク最上位に位置付けられています。技術力、実績、売上など多方面で世界有数の企業からの受賞実績も多数あり、お客様のニーズに即応できる背景ともなっています。」(小林 浩氏/東日本技術本部 ソリューションアーキテクト部)。
日本でまだ知られていないベンダーや技術に着目し、持ち込むことも珍しくない。そうしたアンテナの感度の高さもCTCらしさと言えよう。
これまでもOracle、Cisco、DELL、HP、AVAYAなど海外のトップクラスのIT企業から最新技術をいち早く導入、国内の日本企業や官庁のニーズに応じて組み合わせ、最適なシステム、ソリューションを提供してきた。
「当社はこれらIT企業とパートナーシップ契約を交わしています。製品知識、導入ノウハウなど当社SEの技術力が評価されてのことだと思いますし、これによってパートナー企業から安定的かつ手厚い支援が得られています」(岡本 憲仁氏/広域・社会インフラ事業グループ 東日本技術本部 本部長)。
商社のめざす“デジタル事業群”の中核企業

広域・社会インフラ事業グループ
東日本技術本部 本部長
岡本 憲仁氏
現在、CTCが求められている大きな潮流はDXだという。もともと遅れていた日本社会のデジタル化は、コロナ禍を機に急速に進み、そこからDX需要も拡大した。現在はAIを活用した業務改善なども増えている。
こうした中で、伊藤忠商事は「デジタル事業群」と名付けた事業への投資、育成に努めている。ビジネスデザインやコンサルティング、マーケティングなどの専門機能会社との連携や資本提携によりDXによる課題解決や実装を担っていく事業のことで、CTCはその中核企業の役割も果たしている。
各顧客の期待に最大限に応えるべく、CTCは主要顧客の産業別にグループを以下の6つに分けている。
- 情報通信事業グループ:通信キャリア、インターネットサービスプロバイダなど
- エンタープライズ事業グループ:製造業、運輸、生活消費財、ヘルスケア、メディアなど
- リテール&サービス事業グループ:流通、卸・小売業、サービス業、不動産業など
- 金融事業グループ:都市銀行、政府系金融機関、クレジット、保険、証券など
- 広域・社会インフラ事業グループ:中央官庁、地方自治体、文教、地方銀行、電力、鉄道、地方企業など
- デジタルサービス事業グループ:各事業グループを横断した、セキュリテイ、クラウドをはじめとする最新技術の導入・活用、CTC独自の新サービスや新事業の企画など
CTCの大きな強みの一つに、世界中から自由に製品・技術を導入できることがある。
「メーカー系ベンダーとは違い、自社製品にこだわらず、顧客ニーズを最優先して技術や手法を選択できるのは大きな特徴だと思います」(小林氏)。
また企画・提案から実装まで扱い、業種も規模も異なるさまざまなプロジェクトを担えることも力となっている。
また、CTCの強みはやはり技術力だ。東京・千代田区にTSC(Technical Solution Center)という施設がある。ここはCTCの扱う技術や製品を検証、研究する施設で、サーバ、ストレージ、ネットワークが合わせて数1,000台設置され、データセンターも接続でき、さまざまな検証ができる。このことは同社がインフラ分野に強いことの裏付けにもなっている。
同社には、製品主管と呼ばれる職務があり、扱っている製品を管理するとともに、そのメーカーや販売元と密接に連絡を取り合っている。製品主管を通じ、エンジニア自ら検証することで、技術力を日々高めているのだ。
ミニCTCとして国内外のあらゆる顧客に貢献、社会課題の解決にも挑む
ここで、広域・社会インフラ事業グループに焦点を当ててみよう。広域・社会インフラ事業グループは、他のグループと違い「広域」すなわち日本全国の顧客に対応するというミッションを帯びており、全国を東日本、中日本、西日本、中国九州の4エリアに分けて、それぞれがそれぞれの地域顧客に対応している。東日本技術本部においては、技術者の多くは東京在住だが、そこから東日本各地域のプロジェクトに赴いている。

「広域・社会インフラ事業グループは、グループ名から中央官庁や地方自治体などの公共機関にのみ対応していると思われがちなのですが、実は、他事業グループが担当しているビジネスセグメントを、北は北海道から南は沖縄まで、全国区でカバーしているのが大きな特徴です。社内ではミニCTCと言われているぐらいあらゆる業種のお客様を手掛けており、例えば、情報通信領域では電力会社系のPNJ(Power Nets Japan)グループ各社、エンタープライズ領域では地方の製造業、金融領域では地方銀行、リテール&サービス領域では各地の物流企業などを担当しています。合わせて行政や企業と協力して地域の社会課題の解決にも取り組んでいます」(岡本氏)。
また、広域・社会インフラ事業グループには、「日本を、社会を、地域を、人々の生活を『創る』『変える』『挑戦する』」という基本方針がある。そのため、社会課題の解決をめざすものが多いことも同グループの特徴だ。社会課題解決型のプロジェクトの場合、関係組織や利害関係者が多岐に渡り、制度や規制があるなど、特定業界の案件にはない複雑さがある。そうした条件をクリアしながら、さまざまなプロジェクトが進んでいる。
「その一つとして、地方創生を目指した共創型事業「CLoV (CTC Local Vitalization: クローヴ)」を推進しています。この活動は、ITソリューション提供にとどまらず、CTC自らがデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を推進することを目指しています。具体的には、関係人口創出を支援するデジタル住民カードや、公共交通の最適化を目指したMaaS(Mobility as a Service)など、多岐にわたる取り組みを展開しています。」(岡本氏)。
広域・社会インフラ事業グループでは、こうしたソリューションを海外でも展開している。
「伊藤忠商事が台南市において環境、エネルギー、交通のスマート化を目指したスマートシティプロジェクトに参画しており、CTCはスマート交通分野においてサービス方式設計やSaaS提供、データ分析、データ利活用促進などに携わっています」(岡本氏)。
これは日本から国外へ展開している事例となるが、将来は台湾のソリューションを日本に、日本のソリューションを台湾、ASEAN諸国に展開する構想もあり、台南市のプロジェクトはこうしたアジア圏でのIT活用の起点の役割も果たしているのだ。
「スマートシティに関心を持つ日本の地方自治体は多い。それに伴って、例えばデータセンターの誘致や関連するIT設備プロジェクトを創り出せると、地方経済の活性化に貢献できるとともにビジネスを拡大できる可能性があります。そうした波及効果も期待しています」(岡本氏)。
そこには総合商社系IT企業らしい事業開拓力が表れている。
多様な職務が力を合わせ、上流工程から課題に挑む

広域・社会インフラ事業グループ
東日本技術本部
コンサルティング部 部長
望月 勉氏
広域・社会インフラ事業グループには、職種としてITコンサルタント、ITアーキテクト、プロジェクトマネージャー、プロジェクトリーダー、チームリーダーおよび分野ごとのエンジニアがいる。また、PMOや、プロジェクトの事務系業務などを支援するPSO(Project Support Office)も配置されているのも特徴だ。
標準的な業務の流れとしては、営業による商談や提案から始まり、ITコンサルタントが顧客の要望を踏まえてシステムやソリューションの全体企画や構想を営業と協力して立案する。
「プライムSIerとしての責任を持って、お客様に直接会って相談に乗り、要望や課題を見きわめて考えます。信頼のおけるエンジニアが数多くおり実行性の高い、技術的な裏付けのあるコンサルティングができるのが当社の強みです」(望月 勉氏/コンサルティング部 部長)。
これを受け、具現化のための技術や製品の選択を行うのがアーキテクトだ。実装レベルに近い形で要件定義や基本設計を行い、具体的な開発の道筋を作る仕事である。特に近年は個々の要件だけでなく、全体最適、つまりシステム全体にどう横串を通すかが重要になってきた。

広域・社会インフラ事業グループ
東日本技術本部
ソリューションアーキテクト部 部長
長田 栄則氏
「そうした中でアーキテクトの自由な発想に任せてもらえるところが当社の最大の魅力だと感じます。ベンダーフリーで、多種多様なソリューションから最適なものを選択して組み合わせることが可能です。そういった当社の強みを活かすためにも、勉強を続け、常に新しい技術を吸収することが大切です」(長田 栄則氏/ソリューションアーキテクト部 部長)。
案件数は多く、規模も多様なだけに、職種の役割分担はケースバイケースで変わる。アーキテクトがプロジェクトリーダーを兼ねる場合もあれば、インフラ系案件によくあるようにインフラ系アーキテクトとアプリケーション系のアーキテクトを分ける場合もある。しかしどの場合も技術者がワンチームのスピリットで課題解決に向かうことは共通している。
ポテンシャル人材にも期待
今、CTCおよび広域・社会インフラ事業グループではどのような人材を求めているのだろうか。
プライムSIerであり、大規模なものでは100億円クラスのプロジェクトも手がけているだけに、基本的には上流工程を任せられるITコンサルタントやITアーキテクトを必要としている。
「お客様の経営層と対話し、ビジネスを共に創り上げられる方を求めています。さらに、システムの設計や実装ができるエンジニアも募集しています」(岡本氏)。
即戦力が望ましいが、まだその域に到達していなくても今後、ITコンサルタント、ITアーキテクト、プロジェクトリーダーなどに育つポテンシャルを持つ人材に期待している。
人材が成長する機会は豊富にある。上流工程から下流工程まで、またインフラからアプリまで手がけるSIerであるため、個々のエンジニアにもそうした総合的なスキルが身に付く環境がある。フルスタックエンジニアを志向する人、総合的にプロジェクトのリーダーシップを取る仕事をしたい、といった志向の人には最適な環境だろう。

広域・社会インフラ事業グループ
東日本技術本部
ソリューションアーキテクト部
小林 浩氏
「入社後の選択肢も豊富で、アプリ開発をしていた人がインフラを手がけたい、インフラを手がけていた人がITコンサルを志望するといったときにも柔軟に対応しています。人事制度としても毎年、上司と自分のキャリアパスについて相談するので、将来進む方向を調整していくことができます」(小林氏)。
CTCはそのコーポレートアイデンティティである「Challenging Tomorrow’s Changes」のとおり、社風にもベンチャー的な色彩がある。
「自分が他の大手SIerに勤務した経験からCTCに感じるのはポジティブな姿勢です。仮に失敗があっても、次につなげようという前向きな発想の人が非常に多い。また役割責任に閉じるのではなく、手を挙げたらやらせてもらえる社風があることもうれしい点です」(長田氏)。
根本的な精神として、「顧客や社会の課題を解決するために挑戦する」ことは、CTCに脈脈と引き継がれてきたDNAである。
「そうした私たちの思いに共鳴いただける方と一緒に働きたい。現時点では経験が浅くても、入社後は研修や実際のプロジェクトに携わりながらスキルを磨くことで、自信を持って活躍できるエンジニアへ成長できると信じています。成長に応じて、より専門的かつ高度なプロジェクトにも携わることができ、スキルを磨きながらキャリアの幅を広げることができると思います。熱い思いを持った方のチャレンジを心からお待ちしています」
と、岡本氏は語る。

ライター プロフィール
- 織田 孝一(おだ・こういち)
- 1959年生まれ。学習院大学法学部政治学科卒業後、広告制作会社および人材採用サービス会社の制作ディレクターを経て、1989年にライターとして独立。ビジネス誌などの他、企業広報・採用関連の執筆も多い。現在注力しているジャンルは、科学技術、IT、人材戦略、農学、デザインなど。
リーベルコンサルタントから一言
風通しが良くチャレンジしやすい風土がある伊藤忠テクノソリューションズ。
商社系だからこそのソリューションの目利き力を武器に、他社ではまだ活用されていない最先端の製品をいち早く採用し、顧客にとって最適な提案を行っています。
今回お話しを聞いた広域社会インフラ事業グループは、官公庁向けの案件だけではなく、地方民間企業や地方銀行など、首都圏以外に本社を構える全国のお客様の案件に対応できるのが特徴です。
公共性を軸にしつつも、様々な顧客や業界の案件に挑戦してみたいという方にとってオススメの環境です。