COLUMN
コラム:転職の技術
第1130章
2023/08/04

簡潔に話すことの危うさ

いま、小学生と幼稚園児を育てているのですが、日々、言葉の選び方や伝えることの難しさに直面しています。

子供が成長し、物事が分かるようになると、何が分からないかが分かるようになるので、これは何?という質問が増えてきます。

子供がどこまで理解できるかが分からないので、出来るだけ分かりやすく、簡潔に話をするようにしていますが、時に、誤って理解をさせてしまったり、そのせいで間違った価値観や考え方にさせてしまったりすることがあります。

先日、簡潔に話しすぎることの危うさを感じた出来事があったので、今回のコラムはそれを題材に書いていこうと思います。

ボランティアって何?

ニュースでボランティアの話が出てきた時、子供から、「ボランティアって何?」という質問を受けました。

出来るだけ分かりやすくと思い、「お金を貰わずにお仕事をすることだよ」と答えたところ、「私もやってるよ。日直とか掃除当番と同じだよね。」という反応が返って来ました。

「そうだね」と思わず答えそうになったのですが、何かが違うと感じ、少し考えたあと、こう答えました。

「うん、確かに日直や掃除当番も似ているけど、ちょっと違うかな。

学校は、ただ勉強して遊んでるだけじゃだめなんだ。勉強したり遊んだりするための環境をみんなで作ることが大事なんだ。

日直も掃除当番も、給食係も水やり当番も、みんなが気持ちよく過ごせるようにするためにしなければならないことだよね。みんなで一緒に助け合って、学校をよくしていくの。床がゴミだらけとか、お花が枯れたりしていたら嫌でしょ。

確かに、日直や掃除当番はお金を貰わずやってることだけど、ボランティアとは言わないかな。

ボランティアというのは、敢えてしなくても問題はないけれども、誰かを助けたい、みんなの役に立ちたい、という思いを持っている人が、お金はいらないから私に何かをさせてください、というものだね。」

たまたま子供が自分の解釈を言ってくれたので良かったのですが、言ってくれなかったら、子供がボランティアの意味を間違って覚えてしまうところでした。もしかしたら、掃除なんてボランティアだからやんなくていい、みたいな考えになっていた可能性があると思うとぞっとします。危うく、自分の子を社会不適合者にしてしまうところでした。

簡潔に話すことがよかれと思って短く回答したことが、悪い方に出てしまった出来事でした。

簡潔に話すより優先すべきこと

ネットで検索して、浅く理解して分かった気になる人が多い昨今、仕事においては、出来るだけきちんと理解して貰えるように気をつけて話しをしています。

ただ、子供に対しては、簡潔に、分かりやすく、という気持ちが先行してしまい、正しい理解や、その先にある価値観や考え方に影響を与えてしまうことまでは考えが及んでいませんでした。

子供がもっと小さかった頃は、言葉に対する理解力も低いので、分かりやすく覚えることを優先しても良かったのですが、既に物事を正確に理解できる知能を持ってきたので、これからは、多少まどろっこしくても丁寧に伝えねばと思いました。

言葉を選び、丁寧に伝える

これを読んでいる方の多くは、転職を考えている方や、転職活動を実際にしておられる方と思います。そのため、転職活動に関連する話に繋げて今回のコラムのまとめにしたいと思います。

転職活動で必ず直面する問題が、面接でどこまで話をするか、です。

面接官は大人ですが、面接する人のことは全く知りません。人間、知らないことを理解するのは負荷が高いので、話し手としては、出来るだけ分かりやすく、簡潔に話をしようとします。

ただ、簡潔に話しすぎると、少ない言葉をヒントに聞き手がたくさんの想像をしなければならなくなります。そもそも想像とは、経験や知識からのみ想起されるもののため、聞き手の想像が多いほど、話し手の伝えたいことが正確に伝わりません。それこそ、日直はボランティアだよね、のように、間違った解釈をされてしまったりもします。

このように、簡潔に伝えることの落とし穴は、面接の場でも現れてきます。そのため、面接では、短すぎず長すぎず、言葉を正確に選んで、自分の考えや思いを正しく伝えることを意識してお話しいただければと思います。

筆者 田中 祐介
コンサルタント実績
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