ストレスに強い人はいるのだろうか?
今回はストレスに強い人と弱い人にはどんな違いがあるのか考えてみましょう。ストレスに弱い人は「ストレスに強くなりたい」と思うものです。では、ストレスに強い人とはどのような人を指すのでしょうか。ぱっと思いつくのは、何があってもそれをストレスと感じないという人ではないでしょうか。
確かにタフな状況であっても、それを自分にとって脅威だと捉えなければストレスを感じることはありませんので、ストレスとは無縁であり、結果としてストレスに強いということになるでしょう。自分に自信がある人、タフな状況でも自分はなんとかすることができると考えている人(心理学的は自己効力感が高い人)は、色々な出来事を脅威とは感じにくいので、ストレスに強いと言えます。
ストレスに弱いとはどういうことか?
逆に言えば、自分に自信がない人、タフな状況に自分は対応できないと考えている人は、色々な出来事を脅威と感じやすいので、しょっちゅうストレスを感じるストレスに弱い人と言えます。
両者の自信の違いはどこから生じてくるのでしょうか。ひとつには性格的なものがあります。例えば物事の良いところを捉える程度を示す楽観性です。楽観性が高い人は物事がうまくいくという予想を立てやすいので、自分でもなんとかできるだろうという見立てを持ちやすいという傾向があります。
もうひとつが、タフな状況に対処した時の成功経験の違いです。「あの時なんとかなったのだから、今回も大丈夫」というように、前の成功経験が「なんとかなる」という思いにつながるということです。
ストレスに強くなるとはどういうことか?
前述した2つのうち、性格的なものは比較的変わりにくいと心理学では考えています。従って、ストレスに強くなるために性格を変えようというチャレンジは成功しにくいと考えられます。逆に、ストレスに強くなるような成功経験を積むというチャレンジは実行しやすいと言えます。
では、タフな状況に対処した時の成功経験を積むためにどのようなことをしたらよいのでしょうか。実はストレスを感じた時に取る行動には、その人らしさが反映されます。
例えばあるストレスを感じた時に、誰かに相談するという行動を取る人は、別のストレスを感じた時も同じように誰かに相談をするということです。
それ自体は悪いことではありません。ただし、いつも同じ対処方法がうまくいく保証はどこにもありません。ストレスが違えば、求められる対処方法も変わってくることに気づく必要があります。
自分の対処方法の幅を広げよう
一度、ストレスを感じた時の自分自身の対処方法を振り返ってみましょう。ポイントはいつも同じ方法を用いていないだろうか、あれがダメならこれがあるといった次の手につながるような対処方法のバラエティーがあるかということです。
先ほど、ストレスに強くなるためには、ストレスにうまく対処できた経験を積むことが大事と申し上げましたが、色々な方法でストレスに対処できた経験を積むことで、より一層ストレスに強くなることができます。
まずは自分のストレス対処のくせを知り、どのような偏りがあるかを捉えてみましょう。そして、偏りを補う形で対処方法の幅を広げ、あれこれ試しながら、ストレスにうまく対処できたという成功経験を積んでいきましょう。
様々な対処方法を組み合せながらストレスに立ち向かおう
対処方法には、大きく分けてストレスの原因を減らそうとするタイプと、ストレスの原因はどうしようもないのでそこには触れず、自分の気持ちをラクにしょうとするタイプがあります。
「上司とどうしてもあわない」といった今すぐにはどうにもならないストレスに対しては、友人に愚痴を言う、飲んで忘れるといった自分の気持ちをラクにするタイプの行動が用いられることがほとんどですが、ストレスの原因を少しでも減らす方法としてどんな方法があるのか、といったことについても時には考えてみましょう。
それぞれのストレスに対して、そういった組み合わせをうまく作ることができる人、そういった人こそがストレスに対して最も強い人ではないでしょうか。
まとめ
- ストレスにうまく対処できたという経験の蓄積がストレスへの強さにつながる。
- ストレスに強くなるために、ストレスへの対処方法の幅を広げていこう。
- 対処方法の組み合わせで、硬軟織り交ぜた対応が取れるようになろう。
筆者プロフィール
- 坂爪 洋美
法政大学キャリアデザイン学部 教授 - 慶應義塾大学大学院経営管理研究科博士課程修了 経営学博士。専門は産業・組織心理学ならびに人材マネジメント。主要な著書は『キャリア・オリエンテーション』(白桃書房、2008年)等。