- プロフィール
- 関西の有名私立大学の情報学科で学び、大学院修了後、大手電機メーカーに就職。当初はシステムエンジニアとして関西に勤務し、鉄道の監視・制御システムの設計や技術提案を担当したが、4年半後に東京の営業部門に異動。その後4年半の間、鉄道、無線通信、業務ITなどの営業に従事する日々を送る。顧客の課題に真摯に向き合うため、自身の提案力や検討範囲をより高いレベルに引き上げたい思いからコンサルタントを志望。転職活動を経て、日立コンサルティングに入社。
そのまま技術畑でキャリアアップを図ることに何の疑いも持たなかったが、ある日突然辞令が下る。それは、東京の営業部門へ異動。
慣れない営業活動や、営業独特のコミュニケーション。しかし、自分の強みを発揮しようと、顧客と技術部門の橋渡し役を担い、成果を得た。
そうした中、「自社製品を売ることが本当に顧客の最適解なのか」と疑問がよぎる。そして、踏み切った33歳の転職活動。
メーカーの営業からコンサルタントへの転身を実現した転職の経緯を、本人が自ら語った。
辞令で技術から営業へ予期せぬ異動
大学院では人工知能(AI)を活用した公共交通支援システムを研究。公共インフラ関連の仕事に就きたい思いから、その分野を得意とする大手電機メーカーへの就職を決めた。配属先システム設計部門では、希望通り、鉄道の監視・制御システムの開発に携わることになった。
—— 大手電機メーカーのシステム設計部門ではどのような仕事を?
Iさん:新入社員で最初にアサインされたプロジェクトが鉄道の監視制御システムの構築で、2年にわたる大規模な長期案件でした。仕事の内容は、簡単に言えば、風速や雨量、降雪などの気象状況に応じて列車の減速、停止を促すシステムの技術仕様の取りまとめです。顧客への仕様提案やシステム設計、そして社内のハードウェア、ソフトウェア開発部門のまとめ役を、先輩社員とともに担当しました。メーカーでは、特定の部品をより良く改良していくなど、狭い領域を突き詰めていく技術者が多いのですが、私は逆に広い視野で、自社のリソースをどのように全体に活かせるかを見るのが仕事でした。こうして全体を取りまとめる経験を入社当初からできたことは、プロジェクトを俯瞰する目を養う意味で、振り返ると非常に有効でした。
—— このまま技術畑でキャリアアップを図る予定が、1つの辞令で事態が急変したようですね。
Iさん:当時、私は関西勤務で、東京の営業が顧客から話を聞き、私に伝言ゲームのように話すと、どうしても技術的な重要情報が伝わりづらい懸念がありました。そうであれば、私が東京の技術提案部隊に異動することで、問題が解決すると考え、異動願を出しました。ところが、会社の意向で、結果的に営業に配属されることになったのです。
—— 技術者が営業に配属となると、戸惑いがあったのでは?
Iさん:それはありましたね。営業と技術では同じ会社の中でも企業文化が全く異なります。業界独特の商習慣への対応のほか、顧客への接待など深いコミュニケーションも要求されます。そこで、私は自分の強みで貢献することに力を入れました。接待は得意な人間に任せ、顧客に技術的な内容を詳しく説明したり、顧客から聞いた話を、自社工場の技術者にわかりやすく伝えるなど、顧客と技術者の橋渡しに集中することとしました。その結果、情報伝達密度が濃くなり、技術畑出身ならではの営業の役目をある程度果たせたのではないでしょうか。
自分の提案のレベルをもう一段高めたい
営業畑に異動して4年半。技術者出身の強みを生かし、顧客との課題整理や要件定義、費用や工程管理などの領域までカバーし、独自の立ち位置で会社に貢献してきた。だが、そのまま営業を続けることに疑問を持つようになり、次第に転職を意識するようになった。
—— 営業として新たなキャリアを積む毎日でしたが、なぜ転職を考えるようになったのですか?
Iさん:メーカーの営業なので、当然のことながら自社製品を売ることが最終目的になります。そのため、自社製品が競争力に欠ける場合、提案内容が必ずしも客先の最適解にならないことや、提案自体ができないこともあります。私はその度に悔しい思いをしてきました。また、技術者から営業に異動して活動することで、自分が扱う商材が増え、さまざまな製品を使ったシステムを提案する醍醐味にやりがいを感じたことも、1つのきっかけになりました。その提案のレベルをもう一段高めたいと思い、社内の技術提案部門への異動を考えたのですが、ベテラン技術者が担当する事が多いポジションのため、会社が受理する可能性は極めて小さかった。
—— そこで転職が視野に入ってきたのですね。
Iさん:そうです。自分がやりたいキャリアを社内で実現できないのであれば、転職するしかないと考え、動き始めました。人材紹介会社をインターネットで検索し、最初にWebサイト上で登録したのがリーベルです。リーベルの担当者からはすぐにメールで連絡があり、面談することになりました。その他の人材紹介会社にも登録しましたが、いずれも電話インタビューのみのご提案ということもあり、結局他社の支援は受けず、リーベル一本で転職活動に臨むことにしたのです。
—— リーベルの面談はどのような内容でしたか?
Iさん:最初は、なぜ転職したいのか、具体的にどんな業界を想定しているかなど、丁寧なヒアリングから始まりました。その時点で、上手くいけば2、3か月で転職先が決まること、その過程でどんな時期に何をするべきか、おおよそのスケジュール感も示されました。開発プロジェクトに携わってきた身としては、終わりが見えて、その間にどのように動けばいいかわかることは、非常に有難く、当初から転職活動のイメージを描くことができたことは、安心材料になりました。
—— 職務経歴書や履歴書はどのように作成しましたか?
Iさん:私の場合、今までのキャリアの中で、技術を半分、営業を半分経験してきたため、オールマイティに仕事ができると見られる可能性がある一方、どちらも中途半端だと受け取られてしまうと、書類で落とされてしまうことも考えられます。事実、そうした理由で書類審査ではじかれてしまうこともありました。そこで、職務経歴書では、技術も営業も高いスキルと経験を持っていることをアピールするため、できるだけ多くの件数を記述し、自分の役割や成果も具体的にわかりやすく説明することを心がけました。
内定獲得を引き寄せる「志望理由書」と「話すスキル」
リーベルからは転職先の候補として10社ほど提示されたが、その中から精査し、実際に選考を進めたのは日立コンサルティングのみだった。転職活動にあたっては併願していく候補者が多い中、Iさんは同社に絞って、面接を受ける決断をした。
—— 日立コンサルティングに絞って転職活動を進めた理由を教えてください。
Iさん:率直に言えば、日立コンサルティングに行きたい思いが強かったからです。日立グループはITシステムに関してハードウェア、ソフトウェアともに製品群が充実し、しっかりとしたシステム開発部隊も持ち、IT系には非常に強いと思っていました。そのグループのコンサルティング会社に入り、実現可能なさまざまなシステムをソリューションとして提案したいと考えました。また、メーカー系のコンサルティング会社なので、前職の経験が活かせる可能性が高く、仕事のイメージが付きやすかったことも理由の一つです。同時並行で多くの会社を受ける転職活動もあると思いますが、私は一本に集中してやりたい主義。もし落ちてしまったら、仕切り直して再チャレンジすればいいと割り切りました。
—— 日立コンサルティングの面接はどのように進みましたか?
Iさん:面接は3回あり、1回目と2回目の面接は、なぜコンサルタントになりたいのか、どうして日立コンサルティングを選んだのかなど、私の考えや思いをストレートに聞く質問がほとんどでした。書類作成を通じて思いを明確に整理できたおかげで、よどみなく本心を答えらえました。面接の成否は書類作りが握っていると、改めて実感しました。また面接の中では私からも質問をし、業務のイメージを固めつつ疑問点も解消されていきました。3回目の面接では質問の時間を長く取っていただき、ありがたかったです。
—— 面接の結果、日立コンサルティングから内定を得ることができました。どのような点が評価されたと思いますか?
Iさん:1つは、2回目の面接時に提出を求められた「志望理由書」の内容をしっかりと纏めあげられた点が評価されたと個人的には思っています。これは、「コンサルタントを志望する理由」「日立コンサルティングを志望する理由」「どのように貢献できるか」を1枚のペーパーにまとめるもの。私は前職で技術部隊にいたときも、営業部に異動した後も、内外のさまざまな人たちと折衝することが多く、言うべきことを絞り、わかりやすくコンパクトに伝えることを常に意識して仕事をしてきました。その姿勢が志望理由書をまとめる際も活きたのだと思います。
さらに、面接官に対する話し方も工夫しました。例えば、技術的な内容に関して、相手がよく理解しているようであれば短くまとめ、そうでなければ丁寧に説明するなど、反応を見ながら臨機応変に話すにようにしたのです。技術畑だけでなく、営業の仕事もして、さまざまな外部の方と関わりあってきたことで、そうしたコミュニケーションスキルも磨けたのだと考えています。
大切なことは、何をやりたいのかを明確に表現できるかどうか
前職で営業に異動したのは本望ではなかった。しかし、後ろ向きにならず、営業の仕事に取り組んできた結果、コンサルタントにとって不可欠なコミュニケーションスキルという武器を手に入れ、それが内定獲得につながる一因になった。Iさんに成功した転職活動を振り返っていただいた。
—— 転職活動を通じて、実感したことを教えてください。
Iさん:自分が何をやりたいのかを明確に表現できるかどうかが大切だと思いました。私の場合、技術、営業を経験した上で、コンサルタントになってもう一段上の提案力を発揮し、顧客により良い価値を提供したいということが本心であり、根本。決して今の仕事が嫌だから辞めるという後ろ向きの理由ではありませんでした。これが嫌だ、あれが嫌だからと仕事を辞めても、新しい職場でそれが解消されるかどうかはわかりません。おそらく何らかの不満はどこに行ってもついて回る可能性があるでしょう。その点、やりたいことが明確で、それが実現できる会社に転職するのであれば、たとえ入社後に多少の不満が生じても目をつぶることができます。やりたいことの明確化は、転職活動の最も大きなポイントです。
—— やりたいことがはっきりしていれば、人材紹介会社も転職先の候補を提案しやすく、企業の面接官も判断しやすいですね。では、最後にこれから転職に挑む方々にメッセージを。
Iさん:これは多くの転職成功者が言っていることかもしれませんが、転職希望でもそうでなくても、一度、自分自身の職務経歴を棚卸しして、自分の本当にやりたいことは何か、そのやりたいことと今の仕事はマッチしているのかを整理してみることは、キャリアの上でも、人生の上でも、必要ではないかと考えています。
リーベルのような人材紹介会社に相談して、客観視してもらうことも有効でしょう。私も客観的な意見をもらいながら、自分の頭で考えることで、方向性や行くべき企業が見えてきました。今の会社に留まるにしても、転職するにしても、どこかのタイミングでキャリアコンサルタントと話をすることは、大切ではないかと思います。
—— 一度立ち止まって、自分のキャリアのことを真剣に考えることは重要だということですね。ありがとうございました。
ライター プロフィール
- 高橋 学(たかはし・まなぶ)
- 1969年東京生まれ。幼少期は社会主義全盛のロシアで過ごす。中央大学商学部経営学科卒業後、1994年からフリーライターに。近年注力するジャンルは、ビジネス、キャリア、アート、消費トレンドなど。現在は日経トレンディや日経ビジネスムック、ダイヤモンドオンラインなどで執筆。
- ◇主な著書
- 『新版 結局「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(荒濱一氏との共著)
『新版 やっぱり「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(荒濱一氏との共著)
『「場回し」の技術』(光文社)など。