- プロフィール
- 中央大学文学部哲学科を卒業後、コンピュータ関連の仕事に興味を持ち、大手外資系ベンダーに入社。主に証券など金融業界を中心にコールセンターのシステム構築を担当する。その後、自分のスキルアップと新しい分野での仕事を求めて転職を決意。10月にケンブリッジ・テクノロジーズ・パートナーズに入社。
プロジェクトをこなす中で、足りないスキルに気がつく
「いよいよ転職するときがきた」——。大手SIベンダーに入社して5年。大嶋和幸さんは外の世界を心の底から求めている自分を感じていた。
入社以来、主にコールセンターのシステム構築を担当し、近ごろではプロジェクトリーダーに抜擢される機会も少なからず出てきた。毎日が目まぐるしく過ぎ仕事は充実していたが、大嶋さん自身ひとつの不安を抱えていた。一年目からすぐに現場に出て、経験は積んできたが、果たして、この世界で生きていくスキルは身についているのだろうか——。
その頃、そう感じ始めたのにも理由がある。担当したプロジェクトに相次いで問題が発生し、以前から感じていた不安がより一層大きくなったのだ。
「その場は何とか若い自分たちが中心となって早い段階から問題の芽を潰そうと思って色々な動きをするんだけど、うまくいきませんでした。そこで原因はなんだろうと考えた。もっと経験が必要なのももちろんひとつですが、確固たる仕事の進め方を、実は何も習得していないことに気がついたのです。下積み期間がほとんどなかったことが一番のネックだと思いました。もう一度システム構築のメソッドなども含めてしっかりと学ぶ必要性を感じました」
心の声に素直に従い転職へ一歩踏み出す
スキルアップの欲求はそのときに始まったことではない。入社当初から「ひとつの会社の価値基準に安住するのはよくない」と考えていた大嶋さんは、常に外の世界にアンテナを張り、IT業界でニーズの高いスキルを身につけようと努力してきた。補う必要があると感じたスキルに関連する資格も知識を体系的に修得するためのツールと考え、第一種情報処理技術者をはじめ、オラクルマスターのシルバー、ゴールド(旧制度)と取得し、技術者としての価値を自ら高めていった。
「ただ、そうやって外を見つつも、今の環境が良ければずっとそこにいればいいし、外の世界に出たくなったときに行動すればいいと思っていました」
世の中には転職情報が溢れ、ややもすれば焦って転職活動を始めてしまう人も少なくない。しかし、大嶋さんの場合、そうした情報に振り回されることはない。
「気持ちが高ぶってくる前に動いてもあまりうまくいかないと思っていて、それまでは準備期間だと考えている。モチベーションが結果に及ぼす影響は非常に大きいと考えているので、周りの情報に流されずに、気持ちが盛り上がったときに動けばよい結果につながると思っています。そういうところ、変に楽観主義なんですよね」
そして、5年という一区切りつく時期を迎え、ついに機が熟したことを悟る。今の仕事の進め方に限界を覚え、本格的に基礎的な部分を学び直す決意を固め、転職という言葉が頭の中で現実味を帯び始めてきたのだ。大嶋さんはその「心の声」に素直に従い、転職への階段に足を一歩踏み出した。
リーベルの助言で転職に対する考え方を整理
大嶋さんは早速技術系転職サイトにレジュメをオンライン登録し、エージェントからの連絡を待つ。すると待つ間もなくすぐにリーベルから声がかかる。早速面談の約束をして足を運ぶと、代表の石川自らが対応したことにまず驚いた。実は、大嶋さん自身、以前に何度か他社のエージェントと会って転職の相談をした経験があるが、自分の現状や希望にはあまり耳を傾けてくれず、どこか事務的に処理していく印象が色濃く残ってしまった。それに比べて、リーベルでは最初の面談から石川がじっくり話を聞いてくれ、自分のスキルや目指す方向性を整理するなど、有効なアドバイスもいくつか与えてくれた。
また、その時点ではまだそうした整理の部分も含めて転職への準備が足りなかったので、「少し時間が欲しい」を願い出ると、快諾してくれた。決して強引に進めようとはせず、自分のペースに合わせてくれる。そうしたリーベルの対応に接して大嶋さんはエージェントに対する見方が変わり、自然とリーベルに信頼感を寄せるようになった。
助言に従い、早速大嶋さんは、自分のキャリアアップについてもう一度頭の中を整理してみる。
「やはり自分のキャリアが生きるような転職を考えたい。その反面、全く違う世界も見てみたい。そして、システム構築の進め方について、確立されたメソッドをしっかりと身に付けられることも重要な条件でした」
面接では飾らずに素直に考えを伝える
今までのキャリアの延長線上で技術を高めるのならコールセンターシステム関連のSE。また同じSEとしてコールセンターシステム以外の未知の領域に飛び込む選択肢もある。ただし、メーカーやSIだと、プロダクトありきの仕事になることは覚悟しなければならない。一方で、より中立的な立場でクライアントのニーズにフォーカスできるのはコンサルタント。コンサルタントの会社なら、メソッドを間違いなく持っているが、これまで積んできたSEのスキルとは異なるスキルが求められる。経営寄りのコンサルタントになれば、技術からは遠ざかってしまうことを覚悟しなければならない。どちらを選択すべきか——。そんな中、それぞれの可能性を踏まえてリーベルがピックアップした10社以上の企業の中で、特に大嶋さんの目に止まったのが、今の職場であるケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズである。
「ケンブリッジはコンサルティング会社ながら技術もしっかりやっている。ここなら、自分の希望が両立できると感じました」
自分の求めているスキルと環境が、ケンブリッジにはある。大嶋さんは、そう考え、同社へのチャレンジを決めた。
面接では、技術的なスキルよりも、システムや仕事に対する考え方について質問が集中した。面接官は根本的な人間性を見定めて、会社のカラーに合うのか、一員として周囲とうまくやっていけるかどうかを推し量っているように感じた。大嶋さんは特に大げさにアピールするよりも、自分の身上である「心の声に従うこと」を優先して、一つひとつの質問に素直に答えていった。その結果、そうした姿勢が認められ見事採用に至ったのである。
新しいキャリアで掴む将来の選択肢
大嶋さんは社員として迎えられ、新しいキャリアを歩み始めている。前職では、ある会社の一部署が運営するコールセンターのシステム構築がメインだったが、新しい会社では、とある企業グループの親会社とグループ会社のユーザーアカウントを統合管理するといった「全く未知のプロジェクト」に携わっている。ただ、今まで培ってきたスキルが生きていないわけではない。オラクルを活用したデータベースシステムの構築部分を担当することとなり、準備期間に将来への投資として取得した資格が、しっかりと役に立っているのだ。
「まだこれからのキャリアの方向性が明確に定まっているわけではありません。経営戦略寄りのコンサルタントを目指すのか、プロジェクトマネージャーの道に進むのか、それとも技術的な部分を極めるのか。正直言ってまだ揺れています。だから、今は、将来の選択肢を持っておくために、幅広く仕事をこなして、ベーススキルを高めていきたいと思っています」
外の世界を見たいという心の声に素直に従ったこと、面接では自分の正直な考えを伝えたこと、そして、リーベルから的確な助言をもらったこと。大嶋さんは、自分の身上を貫き、転職を成功に導いたのである。
大嶋さんが挙げる転職を成功に導く三カ条
- 一、 本当に転職したい(「辞めたい」ではなく「移って○○したい」)と思うまで動かない
- 一、 キャリアアップに対する考えをもう一度整理する
- 一、 面接では変に飾り立てずに素直に考えを伝える
ライター プロフィール
- 高橋 学(たかはし・まなぶ)
- 1969年東京生まれ。幼少期は社会主義全盛のロシアで過ごす。中央大学商学部経営学科卒業後、1994年からフリーライターに。近年注力するジャンルは、ビジネス、キャリア、アート、消費トレンドなど。現在は日経トレンディや日経ビジネスムック、ダイヤモンドオンラインなどで執筆。
- ◇主な著書
- 『新版 結局「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(荒濱一氏との共著)
『新版 やっぱり「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(荒濱一氏との共著)
『「場回し」の技術』(光文社)など。