思い付いたように転職をしていないか
転職を考えるきっかけは何でしょうか。それは、数年前から時間をかけて考えていたからでしょうか。それとも突発的に思い付いたからでしょうか。人生は長く、思いがけず、そして複雑です。そんな長い人生なら、仕事が急に嫌になったり、緊急事態によってお金が必要になってしまうこともあるでしょう。突発的に転職を考えるのは、悪い事でも、変なことでもありません。みんな一度や二度は経験があるんです。
実際に「ここではないどこかへ、環境を変えたい」という思いが芽生え、その手段として転職活動を始められる方は一定数いらっしゃいます。私も普段面談をしていて、2割ぐらいはこのパターンでしょうか。
ただ、それをずっと続けていてはダメです。環境を変えることが目的になってしまうと、今度は転職が目的になってきます。転職した時は良いかもしれません。ただ数年後に振り返ると、キャリアに一貫性が無く、いかにも思いつきで転職を繰り返しているのが分かってしまいます。もちろん、一つの環境にいては飽きてしまう人もいるでしょう。ただ、飽きたからと転職していては、企業も受け入れてくれなくなります。そういう方は、正社員よりもフリーランスの方が合っているかもしれません。
一方、多くの方は「数年前から、転職も考えていた」「数年後、転職をしようと決めていた」と長期的な展望を持っています。突発的な考えではなく、以前から蓄積していた思いや考えを実現する手段として、転職活動に乗り出すケースです。自分がやるべきこと、向かうべき道が具現化されている方が、迷いなくキャリアを築けます。
もちろん最初から明確である必要はありません。最初はぼんやりしていても、徐々にキャリアの方向性を固めていくことが重要です。それが決まれば、あとはその実現に向けて転職活動を本気で取り組むだけです。転職活動にも迷いが出ません。
コロナの影響で、キャリアを再検討
なのですが、コロナ禍でまた事情が変わって来ました。企業や職種にもよりますが、予定されていた仕事内容が急に変わってしまい、別のPJへ異動するケースがこのところ増えています。
仕事に熱く取り組んでいればいるほど、いきなりの異動はこたえます。梯子を外されたような気にもなりますし、異動先の環境によっては転職を考えるのも無理はないでしょう。あくまで会社の都合によってキャリアが変わったのなら、自分の力で戻すしかありません。そしてそれが出来なければ、外に活躍の場を求めるのは当然なことです。
ただ、だからといって全てのケースで転職をすべきとも思っていません。
自分の為すべきことは何か
『しんがり』という本を思い出しています。経営破綻した山一証券という会社が舞台で、経営破綻後の清算業務に取り組んだ人たちのノンフィクションです。
既に会社は倒産が決まっているので、残っても良いことはありません。自分のキャリアの為には、さっさと転職活動をして次へ進んだ方が良いのです。でも、それも理解した上で、会社に留まって最後まで残タスクをこなした人達もいます。
誰かがやらなければならない仕事です。必要な仕事をやりきること。最後までじゃなくとも、自分の中での区切りまでやりきること。それはお客さんや会社のためではなく、自分が次のステップへと進むためにも、意義深いプロセスになるとも言えるはずです。
もちろん、自分の向かうべき道、向かうべきキャリアが明確になっている人は迷う必要はありません。また単純に仕事が無いなど、今の環境が既にかなり厳しくなってしまったという方も同様です。すぐに転職活動に本腰を入れましょう。
ただ、今の会社が好きで、自分がやりたい仕事や目指すキャリアがまだはっきりしていない人は、無理に活動を始める必要はありません。程度の差はもちろんありますが、今は世界のあらゆる業種にコロナの影響が出ています。焦って我先にと転職活動を始めるより、自分と向き合ってキャリアを考えることも重要なはずです。心に失望や迷いも生まれる中だからこそ、自分の意思を明確に持ち、為すべきことを為していきたいものです。