ミドルクラスの転職動向
経験15年を超えると、転職市場の中でも「即戦力人材」「ミドルクラス」と呼ばれ始めます。高い専門性、高度なビジネススキルなど、求められるハードルも経験年数に応じて高まるのも事実。中には、なかなかマッチする企業が見つからずに、転職活動が長期化する方もいらっしゃいます。
ミドルクラスの転職には、経験やノウハウなど目に見えるスキルセットとは別のハードルが存在しています。一般的には「柔軟性」と呼ばれている、変化への適応力、環境対応力です。
新たな環境、新たな価値観の中に身を置いたとき、どれだけ自分をその場へフィットさせることが出来るか。組織と同じベクトルで、自分自身を成長させることが出来るか。それを柔軟性というキーワードで企業からも見られています。言葉にすれば簡単ですが、年を重ねた分だけ「仕事をする上での決められたルール」を勝手に作ってしまうものです。染みついてしまった価値観を脱ぎ捨て、新たな環境へ染まっていくにはそれなりの努力が必要です。そこには、前職で得た地位も名声も関係ありません。
ただ、年齢を重ねるとどうしても自分をリセットしづらくなってきます。「これまでの経験を生かしたい」という思いはあっても、「これまでの価値観を変えたい」とは思えないものです。
変化に合わせるプロフェッショナル
私もこれまで、多くのミドルクラスの方とお会いしてきました。面談をしていると、企業が求める「柔軟性」の意味もよく分かってきます。真のプロフェッショナルであれば、新たな環境にも飛び込んでキャッチアップが出来るものです。
半年ほど前の話ですが、とあるテレビ番組で、広島の自動車修理工の兄弟が取り上げられていました。その兄弟は、自動車修理に関してはプロ中のプロ。古いクラシックカーから珍しい輸入車、コンピューター制御された最新型まで、どんな車でも修理してしまう凄腕の職人です。
この二人、とにかく最新技術の収集に貪欲でした。整備工場には、車の故障を発見する最新機器やコンピューターがずらっと並んでおり、その最新設備を使い倒してあらゆる故障に立ち向かっていました。自動車整備に関する専門誌を何冊も購読し、修理用の最新機器が発売されれば自ら足を運んで試しているのです。自動車のテクノロジーの進化に対して、修理工も負けずに追随しているのです。
そしてこの二人、御年が72歳と64歳です。年齢にすれば大ベテランなのですが、熟練の技に頼らず、日々変化に対応するという姿勢。これぞプロフェッショナルでしょう。
スクラップ&ビルドの覚悟を持とう
お二人が修理工を始めたころは、おそらく自動車も今とはまったくの別物だったと思います。自動車を取り巻く技術も概念も変わる中、「顧客から、市場から求められるもの」に真摯に向きあってきたからこそ、柔軟に変化を遂げてきたのだと思います。
やりたいことを貫くのも大事ですが、求められることに向き合うのも同じように大事です。変わる価値観に取り残されないよう、スクラップ&ビルドを繰り返す覚悟が必要です。