私が小学生のころ父が時折こんなことを言っていました。「○○、お金や物はいくら持っていても火事にあったり泥棒に盗まれてしまうと何も無くなってしまう。でも頭に入れたことは誰にも盗まれないし火事にもあわない。勉強が大事だよ」と。放任主義でほとんど「勉強しろ」などとは言わない親でしたが。40年以上前のお話です。
今は火災も泥棒もしっかりと対応すればかなり防げるし少なくなってきました。だからビジネスパーソンにとって火事も泥棒もそんなに怖いものでなくなってきました。(もちろん大震災の危険はありますが。)
その代わり、今の時代で怖いのは環境変化のスピードではないでしょうか。縄文時代は約一万年続いたそうです。気が遠くなるような時代の長さです。一万年も大きな変化がなかったということです。それと比較すると江戸時代はたった265年、戦後は70年。この70年でも大きな変化がありました。 そして2007年発売のiPhone最初のモデルの容量は最大4GB。2015年発売のiPhone6s の容量は128GB。たった8年で容量が32倍になっています。4が128。桁が2つ違います。
急速に色々なことが変化する中で一番変化が激しいのはIT技術だと思います。ITが組織を変え、会社のあり方まで変えてしまいます。その影響の大きさは技術の世界だけではなく、色々な業界の仕事まで変えてしまいます。
例えば、会計事務所。いまだに手作業で毎月の決算、期末決算までやっている一人会計事務所があるとは思いますが、大半は企業規模に応じた会計ソフト利用が主流でしょう。特に中小企業。この会計ソフトも数年前にできたクラウド会計ソフトが大きくシェアを伸ばし、会計事務所の仕事を変えています。
最新のクラウド会計は銀行の入出金履歴、残高、クレジットカードの利用履歴、電子マネー等の情報を収集して、会計データに反映してくれます。仕訳も学習機能があり自動でしてくれます。今まで手入力していた入力作業がなくなります。これで会計事務所の仕事は大幅に楽になり、結果的に携わる人の数も減っていくことになります。
このクラウド会計ソフトで大きなシェアをとっているのが、従来の会計ソフトの会社でなく設立数年の新興企業です。中小企業向けは大きく勢力図を変えようとしています。従来の会計ソフトの会社は簡単に移行できなかったのです。これは大企業も同じです。規模の大きさが災いし変化への適応がどうしても遅れてしまいます。大手電機業界を見るとよくわかります。つい数年前まで勢いのあった会社が、今や本社を売却したり、事業の切り売りをして本体を守っています。
一方、環境変化の対応力が凄かったのが任天堂。明治22年の創業で花札から出発しヤクザの賭博の世界でビジネスをやっていました(今ではちょっと危ない世界)。それが、「トランプ」「ゲーム&ウオッチ」「ファミコン」「ニンテンドー3DS」へと変わり、現在に至っています。
ITの世界は益々変化が激しくなるでしょう。私は新しい企業がどんどん出てきて旧態依然の会社が衰退していくことは悪いことでないと思っています。むしろ活き活きした社会になると思っています。
世の中は変わっていく、しかもスピードはさらに加速します。会社という箱の中で守られているというのは過去の話で今は幻想です。事業を売却され別の会社になれば、地位も過去のものとなります。このような時に頼りになるのは自分の知識、経験、能力です。しかも、時代にあった知識、経験、能力です。会社に頼らず自分を活かす会社で働けば良いだけです。
火事も泥棒も少なくなりましたが、自分の脳に入っている知識、経験、能力は今も最強の武器です。しっかりと自己責任でキャリアを創っていきましょう。
<コンサルタント T.I>