- プロフィール
- 東京理科大学理工学部物理学科を卒業し、CAD/CAM/CAEソフトの開発・販売会社に入社。カスタマーサポートや導入支援を担当する。その後、システム開発ベンダーに転職し、システム基盤の設計・構築からサーバ・ネットワーク環境構築、アプリケーション開発、運用業務の企画・計画・実現支援まで幅広く担当した後、フューチャーアーキテクトに入社。入社半年でリーダー、その半年後にはマネジャーに昇進。現在、Technology Innovation Groupのマネジャーとして活躍中。
ITの深く幅広い技術を身につけるうちに“技術はビジネスのためにある”という考えに至った。
そこで選んだ、フューチャーアーキテクトでのコンサルタントとしての新たな挑戦。
キャッチアップには何が必要で、どのような成長ができたのか?
フューチャーアーキテクトで活躍する人材に求められる資質とは?
じっくりと語ってもらった。
“IT”と“ビジネス”両軸での成長を目指して
一度目の転職をし、エンジニアにとっては非常に幸せな環境といえるシステム開発ベンダーで働いていた加藤さん。しかしその環境が、かえって物足りなさを感じる要因に。次なる成長ができる職場と確信して選んだのがフューチャーアーキテクトだった。
—— 大学は物理学科ですね。卒業後はまず、CAD/CAM/CAEソフトやPLM製品の開発・販売・技術支援などを行う会社に入社されました。会社を選んだ理由は何だったのでしょう?
加藤さん:大学では理論物理を学んでいたのですが、特に業種を絞らずに就職先を探していました。最終的にその会社に決めたのは、学生時代に勉強していたことが多少なりとも役に立つというのが理由でしたね。例えば、CADを使って車や飛行機を設計しようとすると、流体力学の知識が必要になったりして、物理学と全く関係ないわけではないんですよ。あとはそこで働いていた方の人柄に惹かれた、というのもありました。
—— こちらの会社ではどんな仕事をしていたのですか?
加藤さん:1つはカスタマーサポート。自社製品を使っているお客様からのご質問に対して、ヘルプデスクとして電話で対応したり、オンサイトでオペレーション教育などをしていました。また、お客様先でCADを動かすシステム環境に不具合が生じた際に、海外を含め現地に行って修復するといったこともしていました。その他、既存のCADシステムから最新のハイエンド3D CADへの置き換え業務も担当していましたね。
—— 最初の会社には2年半ほど在籍され、次にシステム開発ベンダーに転職されました。なぜ転職を考えたのですか?
加藤さん:仕事をする上で、ITの知識が必要となる場面が増えていったんです。また、正直、当時やっていたものづくり支援の仕事は、3年も頑張るとだいたいパターンが見えてルーチン化してきて、このままやっていてもそれ以上の成長はないんじゃないか? とも感じ始めた。そこでIT自体を本業にしたい、と考えたんです。
転職先を選ぶにあたっては、大きく2つのポイントがありました。1つはあまり大きな会社ではないこと。大きい会社だと“この仕事だけ”と専門を決められ、その仕事しかできなくなってしまうかもしれない。この点、次の会社は200人程度の規模でちょうどいい感じでした。もう1つは、扱う技術要素や対象とする業界が偏っていないことです。
—— つまり、幅広い仕事がやりたい、そのためには大きな会社ではないほうがいい、と考えたわけですね。こちらの会社には6年と、比較的長く在籍されました。その間にどんなことを学べましたか?
加藤さん:システム基盤の設計・構築からサーバ・ネットワーク環境構築、アプリケーション開発、運用業務の企画・計画・実現支援に至るまで、さまざまな業務を体験できて、その意味では期待通りでしたね。いくらやっても底が見えず、ルーチン化することもありませんでしたし。また、その会社にはオープンソースのコミュニティの中でもコアな役割を果たしている人が集まっていて、その分野の先進的な技術開発に携われたのもよかったです。
好きな技術を思う存分追究できるということで、エンジニアにとっては非常に幸せな環境だったと思います。ただ、そのうちにかえって物足りなさを感じるようになってしまったんです。
—— どんな点が物足りなかったんですか?
加藤さん:尖った技術はあるけれども、ビジネス的な商売っ気がないというか。要は“技術はビジネスのためにある”と考える土壌がなかったんですね。それを変えよう、と頑張ったんだけれども変わらない。そのうちに「明らかに自分に合っていない土壌を変えるのに、若い時の貴重な時間を費やすのはもったいないんじゃないか? もっと自分に合った土壌の会社があるのではないか?」と考えるようになり、再び転職することに決めました。
—— そこで次に選んだのがフューチャーアーキテクトだったわけですね。
加藤さん:フューチャーアーキテクトは「ITによる経営課題の解決を通じて、お客様の未来価値を最大化させる」ことをモットーにしていて、私が求めていた“IT”と“ビジネス”の両方の軸を持っていると感じたからです。戦略コンサルティングファームだとITは外部の会社に投げてしまうところが多いですが、フューチャーアーキテクトの場合、コンサルティングファームだけれどもITの開発から運用・保守に至るまで全て自社でやっている。言葉にすると簡単ですが、実際それをきちんとやっているコンサルティングファームは他にはほぼありません。「ITスキルを大事にしながら、その土台の上にビジネスを考える会社に身を置きたい」という私の希望に、完全にマッチしていました。
とはいえ、実はもう1社、大手SIerからも内定をいただき悩みました。正直、コンサルティングファームに行くにあたって、「ITスキルには自信がある。しかし業務知識やビジネスの面できちんとキャッチアップし、コンサルタントとしてやれるのか?」という不安はあったのです。その点、大手SIerの方が求められることが明確で、自分のバリューをすぐに発揮できるイメージがありました。
でも、それが私のマインドに合っているか? というと全く合っていないわけです。そもそも私は「自分に不足しているビジネスの領域で新しい挑戦をしたい」ということで転職を決めたわけですから、大手SIerに行ったら、結局、会社の規模が変わっただけ、となりかねない。ここは初志を貫こうと思いました。
短期間で圧倒的な成果を出し、自分のバリューを認めさせる
「ビジネスをやりたい」という熱い思いを抱いてフューチャーアーキテクトへ入社。
しかし、当初は、やりたいこととアサインされた業務のギャップに悩む日々。
加藤さんはいったいどのようにして、そのギャップを乗り越えたのか?
—— 入社後はすんなり業務に入っていけましたか?
加藤さん:実は、入社から半年ぐらいはフラストレーションが溜まることが多くて。今だから話せるんですが(笑)
—— どういうことでしょう?
加藤さん:入社して最初のプロジェクトで、いちメンバーのポジションでスタートすることになったのが納得いかなかったのです。前職ではずっとリーダー、マネジャーとして仕事をしてきたのに、ここでメンバーとしてプロジェクトに入り、ITスキルだけを求められるなら、何のために転職したんだ? と。また、給与面でも物足りなかったのは事実です。
ただ、会社の方からも、半年経ってそのポジションや給与が妥当ではない、と判断したら速やかに見直す、と言ってもらえた。そこで、アサインされるプロジェクトについても、私のほうから注文を出したんです。
—— どのような注文ですか?
加藤さん:とにかく業務量が多く、難易度の高い仕事をどんどんください、と。3つの仕事を並行してやり、それらを全て半年以内で終わらせるから、そうしたら3倍評価してください、と言ったんです。
—— それは思い切ったことを言いましたね(笑)。実際、どのような仕事をしたんですか?
加藤さん:流通小売系のお客様3社のシステム更改や刷新がメインでしたね。パブリッククラウドへのリプレースなど、基盤もアプリケーションも含め、全て担当することになりました。
メンバーとして入り、プロジェクト計画を見てみると既に現実的には困難な状況となっている。計画の見直しから行うなど、結果としてはリーダー以上の仕事をしました。
—— 3つのクライアントの仕事を並行してやるというのは、かなり大変だったのでは?
加藤さん:それはもう(笑)。結婚したばかりだったのですが、妻にも「ここは勝負だから、半年は放っておいてくれ」と。社内でどんな人がどんな技術を持っていて、お客様と話すには誰を通すべきなのか? といったことも全く分からず、当初は苦戦しましたが、かなりのパワープレイで、最終的には3つのプロジェクトとも半年で、ノートラブルで完了することができました。
その成果を会社からも認めてもらえ、すぐにリーダーに昇進し、給与も増額してもらえました。この会社は、本当の意味で成果主義の会社なんだなと実感しましたね。
—— それは凄いですね、一方で、以前からいるメンバーの方々とは、軋轢のようなものは生まれなかったのでしょうか?
加藤さん:当初は「ややこしい奴が来たなあ」と思っていた人もいたんじゃないでしょうか(笑)。ただ、私はインフラとアプリの両方知見があったので、当時それらのプロジェクトにいた人たちとはスキルセットが違っていた。ちょうど私のようなスキルを持つ人がプロジェクトに必要とされていたこともあって、わりとすんなり受け入れてもらえましたね。
—— そのあたりも、実力のある人は素直に認めるという、フューチャーアーキテクトの社風が感じられますね。
加藤さん:そうかもしれません。
徹底的に顧客に張り付き、業務知識を学ぶ
いよいよ業務コンサルに足を踏み入れ、自らの望む成長軌道を歩み始めた加藤さん。
とはいえそこは、未体験の領域。
“エンジニア”から“ビジネスマン”へ、脱皮を果たすために必要だったこととは?
—— その最初の半年を乗り切った後は、どんな仕事をされたのでしょう?
加藤さん:最初に担当した3社のうちの1つである、流通小売業顧客A社の仕事をメインに手掛けました。最初はシステムのパフォーマンス対応。システムの性能が出ない、重い、止まる、といったことの解消ですね。それが一段落して、いよいよ業務領域に踏み込んでいきました。どういう店舗運営をしたいのか、どんな商品開発をしたいのか、といった経営者側の思いを汲み取り、その戦略を実現できるシステムを生み出していく仕事です。
A社の場合、「ムダなオペレーションをしないためには判断を標準化することが重要で、そのためにシステムを使う」という意向が明確でした。その場合、いろんな帳票やグラフを出せます、みたいな機能は必要ない。その分だけ、ムダなことをやる時間が発生しますから。あくまで「本質的にしなくてはならないことは何か?」ということを、経営者側からヒアリングをしながら考え、システムとして実現することを意識しました。
この仕事を始めて半年後にはすでにマネジャーにも昇進していて、フューチャーアーキテクトでやりたいと思っていた仕事ができるようになりました。一方で、そうしたアカウントのリーディングに加え、他のシステムで技術的に困難なトラブルが起きた際に、テクニカルスペシャリストとして呼ばれることもありました。これは今でもそうですね。
—— ビジネスコンサルティングの領域にも踏み込んでいかれたわけですが、前職ではビジネスや業務といった領域での経験はしていないわけですよね? そのあたり、どのようにキャッチアップしていかれたのでしょう?
加藤さん:お客様がA社だったのが、自分にとってはありがたかったと思いますね。通常、大手のお客様だと、我々のカウンターパートはシステム部門の方になることもありますが、A社の場合、組織が本当にフラットで、経営企画を担当している取締役クラスとダイレクトにお話ができる。そこから学べたことは多いです。
また、流通小売業というのは、例えば金融などと比べると、業務が想像しやすいんです。お店に行ってオペレーションを間近で見ることもできますし。その分、業務知識の面でのキャッチアップもしやすい。実際、プロジェクトの最中にも足繁く店舗に通っていました。A社には店舗中心主義という明確なポリシーがあり、よく知られているように、社長自ら週末、店舗に出て接客をされたりするんです。それを狙ってそのお店に行き、お話を聞かせてもらったりもしました。
あとは当然、経営や店舗運営、さらには労務やノウハウ継承など、業務にまつわる本を幅広く読んだりもしましたね。
—— 短期間での急激な成長に、本当に驚かされます。現在はどんなお仕事をされていますか?
加藤さん:今は、地方銀行や都市銀行のシステムコンサルティングやシステム構築を中心に担当しています。当社では「SKYBANK」という、地域金融機関向けの戦略業務系クラウドサービスを持っており、昨年はその統括をしていたので、その流れで担当をしています。
正直、まだ金融の業務知識についてはキャッチアップの途中です。だから、テクニカル面から入った、という形ですね。ただ、流通小売業のお客様を担当して身につけた業務知識は、金融業のお客様に対しても活かせる面が多いと感じています。キャッチアップの方法論も含めてですね。
大事なのは、変化を恐れないこと。変化を楽しめること。
コンサルタントとして成長を続ける加藤さん。
前職での仕事と今の仕事はどこがどう違い、
逆に前職での経験はどう活かせているのか?
そして、今後、フューチャーアーキテクトで、どんな人と一緒に働き、
何を成し遂げたいと思っているのか?
—— 改めて振り返ってみて、前職とフューチャーアーキテクトでの違いは何でしょう? 逆に、前職の経験はどのように活きているでしょう?
加藤さん:システムを作る、ということ自体は変わりません。けれども、案件のスタート地点がまるで違う。「こういうシステムが欲しいな」と考えているお客様への提案から始まるのか、お客様自身が「何か困っているな?」という漠然とした状態から提案が始まるのか。フューチャーアーキテクトはもちろん後者ですが、その場合、解答はシステムを作ることだけとは限らない。それでもバリューを出せる点が、大きな違いです。
逆に、前職で培った、ITの純技術は全て活きていますね。その中でも、前職で培ったオープンソース領域のデータベース技術については、当社の中では私が誰よりも詳しいと思っていて、大きな武器になっています。
—— フューチャーアーキテクトでの仕事を通じて、どんな成長ができたと感じていますか?
加藤さん:まず、「自分はビジネスマンなんだな」ということを改めて認識できたのが一番大きいですね。まずビジネスがあり、ITスキルはそれを成功させるために必要なものだ、と、心から感じるようになりました。
視野が広がったのも、この会社に入ってよかったと思う点です。ITとビジネス、両方を軸に仕事をすることで、「自分はここに特化するんだ」といったような変なこだわりを捨てられました。
あとはストレス耐性が高まった、というか、メンタルも強くなりましたね(笑)。例えば、プロジェクトに何か問題が生じたとします。その際、昔だったら、お客様に謝ろう、だけしか考えられなかった。しかし今は、この問題をどうやって対処したらプラスに転換して、逆にお客様に喜んでもらえることに繋げられるだろう? と冷静に考えられるようになりました。
ともかく今は、この会社に入ってよかったと思っています。
—— かなり満足されているようですね。今後はどんなことをやっていきたいですか?
加藤さん:最初の1〜2年は、ここまでやれるようになりたい、このポジションにまで行きたい、という目標が明確にありました。でも今は、正直、会社の中でのポジションは気にしていません。部下のバリューをもっと引き出すという意味での組織マネジメントには興味があるので、そこには力を入れていきたいですね。
また、常に「まだやったことがないことをやりたい」と思っています。新サービスの立ち上げなどですね。当社でも、お客様ありきで始まっている案件がまだまだ少なくない。その一方で、テクノロノジードリブンというか、“こういう技術があるからこれをやってみる”というトライを積極的にしていこうという会社の方針もあります。そこに自分も噛んでいきたいですね。
—— それでは最後に、今後、転職先にフューチャーアーキテクトを考えている人に対して、メッセージをお願いします。
加藤さん:キャリアセミナーなどでもお話することがあるのですが、当社ではITに特化したいという人でも、戦略コンサルをやりたいという人でも、どちらでも活躍の場があります。ただ、戦略コンサルをやりたいという人でも、願わくば最低限、ITに興味を持っていたり、好きであったりしてほしい。あとは自分がどちらに重きを置きたいかです。入社後にキャリアチェンジもできます。
また、当社は非常にスピード感があり、変化が速い会社です。その意味で、変化を好む人、変化を恐れない人が合うと思いますね。仕事を通じて自分の価値観が変わることが楽しいと感じる人であれば活躍できます。そういう方と、世の中にないものを作って、一緒にこの業界の先頭を走っていければうれしいですね。
ライター プロフィール
- 荒濱 一(あらはま・はじめ)
- 1971年、東京生まれ。上智大学文学部教育学科卒。高校教諭、タイ・インドでの広告代理店勤務を経て、1998年からライターとして活動を開始する。現在、ビジネス(特に人材・起業)、IT/デジタル機器、著名人インタビューなど幅広い分野で記事を執筆するほか、広告コピー分野でも活躍。
- ◇主な著書
- 『新版 結局「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(高橋学氏との共著)
『新版 やっぱり「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(高橋学氏との共著)