- プロフィール
- 東京の私立大学理工学部を卒業後、起業家として、地域密着型でクーポン発行サービスを提供する会社を設立。会社を解散後に通信系に強い人材派遣会社に入社し、量販店の携帯電話売場への派遣で抜群の実績を上げると同時に、採用管理システムを提案し、導入に携わる。その後、システム会社に転職し、トップの営業成績を達成。社会にインパクトを与える事業構想を実現するため、リーベルの支援を受けた転職活動を経て、NTTデータに入社。
その後、第二新卒として入社した人材派遣会社では、抜群の営業成績を収め、採用管理システムの導入も提案し、生産性向上に尽力
さらに、ヘッドハンティングされてシステム会社に転職し、そこでも毎年予算以上の成績を達成して、役職は営業部長に。自ら考案したプロジェクト管理方法を全社で共有し、組織の強化にも貢献した。
ただ、そのシステム会社で長く働こうとは思っていなかった。実績と自信が備わったタイミングで、世の中によりインパクトを与えるビジネスを興せる会社に、活動の舞台を移したかったからだ。
その思いが実現できる場として選んだ転職先。それが今回内定を獲得したNTTデータ。起業からベンチャー企業を経て、本命への転職を勝ち取った要因を、語っていただいた。
起業から挫折、そして第二新卒で新たな道へ
大学を卒業して、企業の道を選んだMさん。大手がクーポン発行サービスを紙媒体で展開する中、挑戦したのは、同様のビジネスを地域密着型のWebサービスで提供する斬新なモデルだった。
—— 起業に踏み切った経緯を教えてください。
Mさん:大学は数学や物理が得意だったので理工系の学部に進学しましたが、在学中に経営に興味を持ち、思いついたビジネスプランをノートに書き溜めていました。アイデアは50以上になり、次第に自分で事業を興したい気持ちにかられたのです。就職か起業か迷いましたが、チャレンジして失敗しても、若いうちならリカバリーできると判断し、思い切って起業の道を選びました。
ただし、資金もバックボーンもなかったので、初期コストや運営コストを最小限に抑えられ、リスクも少なく、それでいて勝算がありそうなビジネスで起業することに。それが、2009年にスタートした地域密着型で店舗のクーポンを発行するWebサービスです。当時としては斬新なサービスで、レストランやガソリンスタンド、美容院などと次々に契約が取れ、開始から数か月で黒字化を達成しました。
—— 順調にビジネスが拡大していたものの、創業から2年を迎える前に解散したのはなぜですか?
Mさん:一つは資金面で問題が発生し、手元のキャッシュがなくなってしまったこと。もう一つが、新しいクーポンサービスが登場したり、スマートフォンの多機種への最適化対応が必要になるなど、市場環境が変化して自社が勝てるビジネスモデルではなくなってきたことです。私はここが引き際だと判断し、会社を解散。その後、第二新卒として就職活動を行い、通信系の人材派遣会社の営業職として、第二のキャリアを歩むことになりました。
—— その人材派遣会社では、早くから頭角を現したようですね。
Mさん:大きな成果は、ある量販店の全ての携帯電話売場を当社の派遣スタッフに丸ごと任せてもらう一括契約を取ったこと。そのスキームを他の店舗にも展開し、全国の営業社員の中で、派遣スタッフ数の純増ランキングはトップを記録しました。ただ、私が本当にやりたかったのは、単に数字を挙げるのではなく、会社の売上げ貢献につながる仕組みを作ること。そこで、当時紙ベースで行っていた派遣スタッフの登録や仕事のマッチングを、デジタル化する採用管理システムの構築を社長に提案。その企画が通り、私が中心になって、ベンダーの選定やシステムの設定、社内への導入支援を推進しました。結果、そのシステムが非常に有効に機能し、会社の生産性が飛躍的に高まったのです。
—— 数字も仕組み作りも成果を上げ、上層部からも高く評価されたと聞いています。
Mさん:しかし、ちょうどその時、システムを導入したベンダーの担当者から、「うちに来て働いてみないか。Mさんなら絶対に成功する」と、転職の誘いを受けたのです。私もそのベンダーに入社して、さまざまな会社から人事課題を聞き、最適なシステムを入れていく仕事に魅力を感じました。そこで、「20代のうちに転職して圧倒的なキャリアを築いていこう」と決心して、ベンダーへの転職に踏み切ったのです。
自信を持って戦えるタイミングで転職を図る
新たな職場となったベンダーでも、毎年予算を上回る実績を残し続けたMさんは、上層部からの評価が高く、わずか4年弱で営業部長に抜擢された。だが、再度転職を決意。それは起業家から会社員になる時に心に誓ったある思いがあったからだ。
—— ベンダーでのキャリアを聞かせてください。
Mさん:個人として毎年予算以上の実績を達成し、管理職に昇進してからも、チームの予算を毎年上回る実績を達成し続けました。数字を上げるだけでなく、顧客との長期的な関係もしっかり築き、社内メンバーからも「Mさんと仕事をするとミスがなく、プロジェクトが確実に回る」と信頼を得られていました。私は上昇志向が強く、上層部に「早くマネジメントをやらせてほしい」と掛け合うことも。若くても引き上げてくれる会社だったので、一気に営業部長を任されるまでになりました。
管理職になってからは、俗人化していた営業方法を標準化。また、プロジェクトも仕組化し、開発部や運用部と連動しながら品質や納期が守られる体制を構築しました。上層部からは「会社がしっかりと動くようになった」と高い評価を受けることができたのです。
—— しかし、自身も会社も大きく成長する中で、再度転職に踏み切ることにしました。理由は何でしょう?
Mさん:私は会社員になる前に、あることを決意していました。それは、世の中にインパクトを与えるような大きなビジネスを、自分が顧客と共に実現していくこと。起業家としては、資金や組織などの制約があり、どうしてもスモールビジネスしか実践できませんでした。ですから、企業の社員になるからには、自分が同年代より抜きんでる存在になり、自信を持って戦えるタイミングになったら、決意を実現できる会社をいくつか受けてみようと、思い続けていたのです。
—— 転職活動はどのように進めましたか?
Mさん:企業に直接応募する方法では、“私が見えている景色”の会社しか候補に上がりません。それに対し、人材紹介会社のプロであれば、キャリア志向やスキルを踏まえて、私が知らなかった会社も提案してもらえます。人材紹介会社の支援を受けようと思ったのは、そのメリットを享受したかったからです。そこで、いくつかの会社に登録しましたが、最終的に支援を依頼する条件は、「私のキャリアの志向性を踏まえて適切な候補会社が提案できること」「候補会社の求人案件を持ち、その人材会社から応募できること」でした。いずれも大切ですが、特に後者について、会社によっては案件を持っていない場合もあり、注意が必要です。結果、ヒアリングがうまく、私が行きたいと思える転職先を提案でき、しかも案件自体も持っている人材紹介会社が、リーベルだけだったのです。
狭き門をこじ開けた面接でのアピール
支援を受ける人材紹介会社をリーベルに決め、Mさんの転職活動が始まった。“私が見えている景色”以外の数多くの会社を提案され、そこから絞った上で約10社にエントリー。本命は、長年抱き続けてきた「大きなビジネス」が展開できるNTTデータだ。
—— 転職活動でのリーベルの支援について、教えてください。
Mさん:私が実感した利点の一つは、エントリーした10社の面接をどの順番で受けていくか、戦略的に考え、日程を組んでくれたことです。ただやみくもに日程を調整していくのではなく、私の都合や志望動機を鑑みて、最適な日程を調整してくれました。また、終盤では第一志望群の最終面接の日程を先方の企業と調整し、内定が出そうなタイミングを合わせるなど細かい配慮も。こうした日程調整は、内定の合否を決める重要な要素だと思います。
もう一つは、各面接の前に必ず事前連絡があり、どのような内容の面接になりそうか、レクチャーがあったこと。一次面接の段階から細かく指南してくれ、実際の面接もほぼ教わった通りに行われたので、このレクチャーは非常に有益だったと思います。
—— NTTデータの実際の選考はどのように進みましたか?
Mさん:最初に一般教養を問うテストがあり、Web診断を経て、一次、二次、三次(最終)面接まであります。一つ一つのステップでしっかりと見てくる事が特徴です。同社で働く中途入社の社員に聞いたところ、中途採用の選考は「何千に一人しか採用されない狭き門」とのことでした。その言葉通り、第一関門のテストから非常に難しかった印象があります。
—— 一次面接は事前準備ができたこともあって、クリア。部長クラスによる二次面接はいかがでしたか?
Mさん:二次面接は、私の回答に対して深掘りして聞く傾向がありました。NTTデータでパフォーマンスを発揮できる人材かどうかを、シビアにチェックしている印象でした。評価されたポイントは二つだと思います。一つ目は、強みを問われた時、数字を上げるだけでなく、顧客と長い関係を作れることをアピールできた点です。NTTデータが顧客との「ロングタームリレーション」を非常に重視していることを事前に調べて知っていたため、その方針とも絡めて話をしたところ、面接官の共感を得られた手応えがありました。
もう一つが、入社後に何を成し遂げたいかを熱意を持って訴求できたことです。それは、簡単に言えば、各自のスマートフォンに蓄積されるデータを活用して、業界の垣根を越えて大きなビジネスを創造すること。具体的な事例を挙げながら、そのビジネスにおけるNTTデータの役割も含めて、モバイル業界にイノベーションを起こす自分のプランを説明しました。面接官は大きくうなずき、とても反応が良かったことを今も覚えています。
—— 会社の方針を事前に調べ、自分との共通点をアピールできたこと、成し遂げたい仕事を具体的に話せたことで、面接官の気持ちを掴めたわけですね。
Mさん:結果的に二次面接は通り、事業部長クラスの三次面接に進みました。そこでも二次面接と同じように深掘りする質問が基本。自分が大きな事業を描ける営業職であることをアピールし、好感触を得られました。そして、NTTデータからの内定はその日のうちに出たのです。
ベンチャー出身でNTTデータの内定を獲得できた理由
内定はNTTデータのほか、第一志望群の大手コンサルティング会社からも獲得。いずれも入社すれば大きく飛躍できることは間違いない会社だ。悩みぬいた末、出した答えは、NTTデータへの道だった。
—— NTTデータと大手コンサルティング会社のどちらに行くべきか、悩んだかと思います。
Mさん:大手コンサルティング会社は、働いているメンバーは皆優秀で、人間的にも良い人が多いように見えましたし、コンサルタントとして自分を磨いていけるイメージも持てました。ですが、最終的には元々の本命だったNTTデータへの入社を決意。理由は、世界でも有数の高い技術力を持っていることです。今後、社会がビッグデータやAI、IoTを活用したビジネスへと進んでいく中、それらの技術やサービスを自分たちで作っている企業が勝ち残っていくといのが私の持論。自分が今後取り組みたいのもまさにそうした先端技術の領域です。NTTデータこそが自分の考えを実現できる道だと思って、決断しました。
—— 希望するキャリアに進むことができた今回の転職活動の勝因は?
Mさん:自分に合う転職支援のパートナーを見つけられたことが一点。リーベルの担当者からは、履歴書や職務経歴書のブラッシュアップに始まり、転職活動計画の立案、面接時の事前情報のレクチャーなど、多くのサポートを受けられました。そして、もう一点が自分自身の強みが何かを腹落ちするまで掘ったこと。それによって、面接で何を聞かれても答えられる自信ができたので、心に余裕が生まれましたし、熱意を持って伝えることもできました。
—— ベンチャー企業からNTTデータに転職できたことは、同じように中小のシステム会社で働く人にとって、勇気づけられることだと思います。
Mさん:人気企業のNTTデータは新卒で優秀な学生を採用でき、その人材が社内でしっかりと育っています。私は31歳ですが、同年齢で社内のメンバーと同じレベルの人材であれば、中途で採用する意味はないわけです。採用したいのは、既存のメンバーより、多様な経験を積み、考え方が整理されていて、活躍できる人。その条件をクリアし、面接で伝えられるか否かが、内定を決める鍵だと思っています。
NTTデータから採用後にフィードバックがあったのですが、私が採用された理由の一点目は、起業経験があり、アイデアが柔軟で、頭の中で考えるだけでなく、実際にチャレンジしてきていること。二点目は目標を必ず達成してきており、それがNTTデータに入ってもできると考えたこと。三点目が顧客や社内の関係構築に長け、周りを巻き込みながら安定的にプロジェクトを動かし、認められてきたことです。
—— ベンチャー企業出身でも、それが選考のハンデにならないということですね。
Mさん:どの会社で働いてきたかというより、その人がどういった経験を積み、どんな考え方を持っているかをしっかり見る選考だと感じました。その点が、他者と差別化できていることが、ポイントだと思います。
—— 最後に転職に臨む人たちにメッセージを。
Mさん:転職は人生でそう何度もあることではないでしょう。だからこそ、この会社で良かったと思える会社を選ばなければなりません。それには繰り返しになりますが、自分1人で見えている景色では不十分。プロの目線を持っているパートナーからのアドバイスやサポートが欠かせないのです。しっかりとヒアリングして自分に合った会社を紹介してくれているか、行きたい会社の求人案件を持っているか、サポートは十分か…などを基準に、キャリア人生を決める転職活動のパートナーを見極めていただければと思います。
—— 望み通りの舞台に進むことができ、今後の活躍が楽しみです。インタビューに協力いただき、ありがとうございました。
ライター プロフィール
- 高橋 学(たかはし・まなぶ)
- 1969年東京生まれ。幼少期は社会主義全盛のロシアで過ごす。中央大学商学部経営学科卒業後、1994年からフリーライターに。近年注力するジャンルは、ビジネス、キャリア、アート、消費トレンドなど。現在は日経トレンディや日経ビジネスムック、ダイヤモンドオンラインなどで執筆。
- ◇主な著書
- 『新版 結局「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(荒濱一氏との共著)
『新版 やっぱり「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(荒濱一氏との共著)
『「場回し」の技術』(光文社)など。