- プロフィール
- 沖縄県初の高専である国立沖縄工業高等専門学校でプログラミングの基礎を学び、卒業後はSAPシステム導入を主軸とする中堅SI会社に就職。SAPを活用したERPの導入を経験してきた。入社4年目にFI(財務会計)のシステム開発に携わり、FI領域のコンサルティングでキャリアを積みたい思いを強める。社内で可能性を模索したがかなわず、転職を決意。試行錯誤の転職活動の末、TISの内定を取得し、入社を果たした。
最終的にFI領域に強い関心を寄せ、クライアントのグループ会社の会計システムをSAPに統一する案件では、会計データの移行リーダーとして実績を積んだ。
今後は、FIコンサルタント、さらにはモジュールの枠を超えたSAPコンサルタントとしてキャリアを積みたいと、日増しに高まる思い。
しかし、社内でアサインされたのは、既に導入されたシステムの検証作業。自分が思い描いたキャリアとは正反対だった。道を切り開くには転職しかない…。
一度はリファラル採用でコンサルティング会社を受けたが、あえなく不合格に。その後、リーベルの支援を受け、自身が成長することで掴み取ったTISの内定。
最終局面で大手外資系ERPベンダーとTIS、どちらに進むのかを迷い、最後はTISに決めた転職活動の全容を、語っていただいた。
SAPの開発を積み、FI領域に定めたキャリアの照準
沖縄の高専から中堅SI会社に入社し、SAPシステムの導入案件でABAP開発を約5年経験した。会社が親会社に吸収合併された後、見えてきたキャリアの方向性が、FIのコンサルティング業務に携わる道だった。
—— 社会人のスタートは、SAPシステムの導入をメインとする会社でしたね。
Nさん:高専には数多くの求人が寄せられます。その中でも、特に高専学生への評価が高く、多くの先輩が活躍するSI会社に入社しました。最初は様々なシステムからSAPに会計データを連携するプロジェクトに携わり、その後もSAP操作マニュアルの作成や、バージョンアップに伴う新旧比較テスト、在庫・購買管理、販売管理のアドオン開発などを経験。そうした中、会社が親会社に吸収合併された後、ある転機が訪れたのです。
—— 興味深いですね。どのような転機ですか?
Nさん:合併直後、社内でSAPの中のFI(財務会計)機能調査や解説資料作成など、FIモジュールに関するトレーニングを経験する期間があり、割と時間的に余裕があったので、今後のキャリアをどうするか、上司と相談しながら考えてみたのです。答えは、FIのコンサルティング業務に自分のキャリアを寄せていくこと。SAPでFIのシステムを開発する中で、事業会社のお金の動きに興味を抱き、財務会計分野の知識やスキルをもっと高めていきたいと思ったからです。
—— 自分のキャリアの方向性が定まったわけですね。
Nさん:その後に経験したのが、クライアントの本社、グループ会社、子会社間で使っている会計システムをSAPに統一するプロジェクト。私はFI領域における会計データの移行リーダーに抜擢され、基本設計、詳細設計、プログラミング、単体テストのフェーズを経験することで、システムと業務の両方のレベルで会計知識の理解を深めました。顧客の情報システム部門や経理の社員とのコミュニケーションも円滑に図ることができ、社内でも高評価を獲得。成功プロジェクト事例として、社内で発表する役割を任されるほどでした。発表の場を、FIのコンサルティング業務を行いたい要望を上司に訴える絶好の機会とも捉え、実際にそうしたアピールも行いました。
—— これで、今後は上流工程にアサインされる流れができたはずですが、どうなりましたか?
Nさん:自分もそう確信して、意欲に燃えていました。ですが、回ってきた案件は導入されたシステムの新旧比較テストを行うものだったのです。短期間のアサインなら仕方がないと思ったのですが、要員計画を見ると、9か月にわたる長丁場でした。自分のキャリアと真剣に向き合い、今後は上流を目指すと決心した直後だっただけに、このままでは自分のモチベーションを保つことは難しいと感じました。その時、同じ案件に携わっていた他社のエンジニアで大手コンサルティング会社に転職した人から、こう言われました。「Nさん、良かったらうちの会社を受けてみないか」と。それはリファラル採用の誘いだったのです。
書類作りのポイントは「しっかり書き込むこと」
同じプロジェクトに携わったパートナー企業のメンバーから、まさかのリファラル採用の誘い。Nさんは新たな可能性にかけようと、面接を受ける決心をする。結果はどうなったのだろうか。
—— リファラル採用の結果はどうでしたか?
Nさん:結論から言うと、不合格でした。今の会社から早く離れたいという思いだけで面接に臨み、何の準備もしていなかったので、当然の結果と言えるでしょう。その大手コンサルティング会社の面接官からの質問は鋭く、全く太刀打ちできませんでした。このままでは転職は上手くいかない。そう思い、転職活動に真剣に取り組もうと一念発起し、手始めに転職サイトに登録したのです。
—— 数多くのスカウトメールを受け取ったと思いますが、なぜその中からリーベルを選んだのですか?
Nさん:他社のメールは転職候補先として東証一部上場の会社名がずらりと並んでいるだけで、読む気がしませんでした。一方、リーベルのキャリアコンサルタントからのメールは「件名」から他とは違っていました。私の会社の出身者を転職支援した実績があること、自分が大手コンサルティング会社出身であることなどが長文で書かれていたのです。興味が湧き、本文を読んでみると、開発の経験しかしていない私でも、職務経歴書や履歴書をしっかり作成すれば、様々な会社に挑戦できると、心強い言葉が書かれていました。SAPをやっている人なら誰しもが知る大手コンサルティング会社出身であることも私の心に響き、任せてみようと思ったのです。
—— その後の経過を教えてください。
Nさん:早速、職務経歴書と履歴書に修正を加えていきました。ポイントは、しっかりと“書き込む”こと。プロジェクト名、案件の内容、何人アサインされて、自分はどんな役割で、会社にどのような貢献を果たしたかなどを、読み手に伝わるように、わかりやすく、端的に書き加えていったのです。こうすることで、今まで曖昧だった自分がやってきた仕事の中身が、その時の気持ちや苦労なども含めて鮮明になり、頭の中が整理されていきました。「転職活動では、過去を振り返ることが非常に大事」と、キャリアコンサルタントは言っていましたが、その言葉の意味が作業を進めていく中で実感できました。
—— 過去の振り返りが、転職活動における最大の準備とも言えそうですね。
Nさん:そう思います。過去を振り返って、自分なりに言葉でまとめて書いていると、「面接官にこういうことを質問されそうだ」「ここは突っ込まれそうだ」など、面接時の質疑応答も具体的にイメージできるようになります。しっかりとした書類作りは、そのまま面接対策にもなるわけです。
プロダクトを極めるか、コンサルティングに進むか
書類作りを通して、転職活動の準備を進めていったNさんは、リーベルと話し合い、SAP事業に力を入れるSI会社やコンサルティング会社を合わせて4社応募することにした。加えて、他の人材紹介会社から大手外資系ERPベンダーにも応募。本格的な転職活動がスタートした。
—— 書類が通り、各社の面接が始まりました。どのように推移しましたか?
Nさん:最初はSI会社の面接でしたが、慣れていないせいか、うまく受け答えができず、1次面接で不合格となってしまいました。先方の人事にリーベルを通して理由を聞いたところ、質問の意図と答えがかみ合ってない、幅のある答えが返ってこなかったなど、問題点が浮き彫りに。私も覚えている限り、面接での受け答えをリスト化し、リーベルに送付。キャリアコンサルタントからフィードバックをもらいながら、今後のために答え方をじっくり練り込みました。
—— 面接後にリーベルのキャリアコンサルタントと振り返りを行い、次に備えたわけですね。
Nさん:そうすると、次のSI会社では非常に面接が上手くいき、手応えを感じました。そして、3番目の会社として面接に臨んだのがTISでした。TISでは、SAP導入の実績と共に、入社後のキャリアプランを聞かれたので、1年目、3年目、5年目にはどうなりたいか、具体的に説明しました。このキャリアプランを話せたのは、リーベルの助言のもと、質問が来ることを想定し、事前に考えていたからです。入社後のキャリアプランは、どの面接でも聞かれたので、想定は必須だと思います。
TISからは、「業務知識の幅はそれほど広くないが、まだ年齢が若く、考え方もしっかりしており、伸びしろがある」と高く評価され、最終的に内定を獲得できました。入社後の配属予定先も、私のSAP導入の経験を活かすことができ、かつ、FIのコンサルティングの力を伸ばすことができる部門であり、この時点でTISに転職する気持ちが高まったことは事実です。
—— では、そこで転職活動を終えたのでしょうか?
Nさん:いえ、別の人材紹介会社を経由してもう1社、面接を受けることにしました。それが大手外資系ERPベンダーです。その頃は既に複数の面接を経験し、どのような質問が来ようと答えられる自信があり、1次面接は好感触を得て、結果も通過となりました。2次面接も順調に終えて、このままいけば内定が出そうな段階までたどり着きました。正直に言うと、ものすごく悩みましたね。その大手外資系ERPベンダーは、SAPのエンジニアにとっては憧れでネームバリューも高い。私がまだ若く、大手外資系ERPベンダーでも伸びしろが評価されており、行くなら今がラストチャンスではないかとも思いました。同僚に相談すると、大半が大手外資系ERPベンダーへの転職を推しました。
—— どのような考えで結論を出したのでしょうか。
Nさん:大手外資系ERPベンダーに行けば、自社ERP製品を売ることがメインとなり、プロダクトの知識や導入ノウハウは高められます。しかし、初心に返って考えた時、果たしてそれが自分の望んでいたことかと疑問を感じたのです。私が転職しようと思ったきっかけは、FIのコンサルティングをしたいからではなかったのか。それが実現できるのはどの会社なのかを冷静になって考えてみました。さまざまな案件や会社でFIのシステム導入を経験するのであれば、幅広い業務が経験できるTISが行くべき会社ではないのか。本当に悩みに悩んだのですが、自分がこうなりたいと思ったキャリアを信じて、最後はTISに転職することを決めたのです。
「悔いのない転職」をするために大切なこと
悩みぬいた末、新たな活躍の場として選んだTIS。転職活動では、何度も失敗を経験しながらも、転職と真正面から向き合い、着実に準備し、自身が成長しながら掴み取った内定だった。将来を切り拓く転職をするために必要なことを聞いてみた。
—— TISの内定を獲得し、将来に向けて一歩を踏み出すことができましたが、今回の転職活動の成功の要因をどう考えますか?
Nさん:1つは再三言ってきましたが、書類を書き込む中で、過去を徹底的に振り返れたことです。準備不足のリファラル採用の面接では失敗し、準備万端で臨んだTISの面接では、しっかりと自分の考え方を伝えることができました。振り返りを徹底してやるかどうかは転職活動の行方を左右すると言っても過言ではないと思います。
もう1つは「初志貫徹」でしょう。最後の最後で、憧れの大手外資系ERPベンダーに入社できるチャンスが巡ってきました。しかし、FIのコンサルティングをやりたいという自分の原点に戻ることで、TISという自分でも納得がいく選択ができました。転職活動の途中で考えを変える人もいるでしょうが、私は“初志”や“原点”を忘れないことが大切だと考えています。
—— 最後にどのような考え方で転職に臨めばいいかを教えてください。
Nさん:最も重要なことは「悔いのない転職」をすることだと思います。私の同僚や後輩の中でも、コンサルティング会社やSI会社に転職したものの、「想像していたのと違っていた」と、不満を漏らす人はいます。そうならないためにも、大事なのは「自分が将来どうなりたいのか」を、具体的なプロセスも含めて考え抜くこと。それを基準にすれば、おのずと行くべき方向性が見え、自分が納得する選択肢を選ぶことができます。考えを深めるのは自分1人では難しいかもしれないので、信頼できるキャリアコンサルタントと話し合う機会も大切でしょう。
—— 「悔いのない転職をするために、将来どうなりたいかを徹底して考え抜く」とは、とても参考になる言葉だと思います。ありがとうございました。
ライター プロフィール
- 高橋 学(たかはし・まなぶ)
- 1969年東京生まれ。幼少期は社会主義全盛のロシアで過ごす。中央大学商学部経営学科卒業後、1994年からフリーライターに。近年注力するジャンルは、ビジネス、キャリア、アート、消費トレンドなど。現在は日経トレンディや日経ビジネスムック、ダイヤモンドオンラインなどで執筆。
- ◇主な著書
- 『新版 結局「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(荒濱一氏との共著)
『新版 やっぱり「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(荒濱一氏との共著)
『「場回し」の技術』(光文社)など。