- プロフィール
- 2006年に都内の私立大学卒業後、当時、主にホームページ制作や運用を手掛けていたIT会社に就職。入社後、経理部に配属され、経理・財務畑のキャリアがスタートした。その後、グローバルな業務を志望し、中国や東南アジアに拠点を持つ機械メーカーに転職し、海外子会社との連結決算に連結会計システム「ディーバ」を使い、スキルと実績を得る。さらにグローバルな経験を積むため、世界展開を目指す医薬関連会社に転職し、海外子会社の資金調達などに注力。今回、リーベルの支援を受け、連結会計システムの最大手、ディーバへの転職に成功した。
最初は経理の仕事が嫌でしかたなかったが、有能な先輩と出会って考え方が変わった。
「単なる会計処理ではなく、業務の効率化に貢献すること、経営を支援することが、経理の仕事の本質だ」。先輩にそう教わり、奮起した。
その後、転職した2社目でグローバルな連結会計を経験し、3社目で海外子会社の資金調達にも携わった。
そして、より多くの企業のグローバル経営を支援するため、連結会計システム最大手のディーバへ転職した。
理想の経理を追い求めた今までのキャリアと、リーベルの紹介によるディーバとの出会い、考え方が認められ内定獲得を果たしたプロセスに迫った。
経理の本質は“先読みする仕事”
2006年、世の中はIT企業ブームに沸いていた。若くして活躍の場を与えられ、普段着も許されるカジュアルな職場環境。Kさんも、そんな自由で可能性がある職場に惹かれ、IT会社の門を叩いた。しかし、入社後の配属先として告げられたのは、想定外の「経理部」だった。
—— 大学卒業後、IT会社に就職した理由を教えてください。
Kさん:当時、やりたい仕事や行きたい業界は特に無く、20代でもバリバリ仕事ができて、職場ではラフな格好も許されるIT会社に魅力を感じ、就職しました。しかし、配属先は「経理部」。てっきり、IT関連のプロデューサーやホームページ制作・運用に携わると思っていたのに、「なぜ自分が」と憤る毎日でした。経理の仕事を60歳まで続けるのは絶対嫌だと。けれども、経理部のある先輩の教えが私の考えを変えるきっかけになりました。
—— その教えとは?
Kさん:先輩は「会計のルールに従って決算書を作ったり、決まった処理をしたりするだけの“後処理”の仕事にあまり価値は無い。経営に役立つような情報や財務に資する情報を、経理側からタイムリーに提供すること。かみ砕いて言えば、現在までの数字の状況を見て、今後はこうなると“先読みする仕事”が、経理業務の本質」と、教えてくれました。その先輩は実際に先読みの力が優れていて、経営陣にも適切なアドバイスができる人でした。先輩のようになれるなら…と、私も経理の仕事に本腰を入れるようになったのです。
—— そのIT会社には数年在籍後、転職されました。その理由は?
Kさん:会社の規模が小さく、自分のスキルを磨くには限界があると感じたからです。もっと大規模に、グローバルに事業を展開している会社で、思う存分「経理の本質」を追求したい。そう考えて、海外で機械を生産して世界の市場で販売する、日系のグローバル企業に転職しました。その会社は数十社の海外子会社と連結決算しており、その時初めて連結会計システムのディーバを使うことになりました。
—— 連結会計の情報を通じて経営に貢献したり、グローバルな仕事に携わったりするなど、充実した日々だったと思います。しかし、再度転職することになりましたね。
Kさん:その会社は将来的に上級職に昇進できる道が不明確でした。仕事に不満はありませんでしたが、今後モチベーションを保つのが難しいと思い、転職を決断しました。次の転職先に選んだのが、医薬関連会社です。
事業環境の劇変で、再び転職へ
3社目の就職先に医薬関連会社を選んだKさん。前回の転職先と脈絡がないように見えるが、会社選びには明確な基準があった。それは、経理の枠を超え、会社の経営に関して常に熟慮を重ねてきたKさんならではの視点だ。
—— なぜ、その医薬関連会社を次の転職先に選んだのですか?
Kさん:会社選びの主な基準は、「自社製品を持っている」「他社と差別化ができている」「技術力がある」「高い参入障壁がある」「グローバルに展開している」の5つです。前社の機械メーカーはその基準に合致し、次に選んだ医薬関連会社も基準をクリアしていました。さらに、その医薬関連会社は、これからグローバル展開に本腰を入れようとしていました。まさに前職までの自分の経験が活きると思ったことも選択理由の一つです。
—— 実際にどのような業務を?
Kさん:グローバルな連結会計システムを構築するように上層部から指示され、その責任者として、ディーバを含めた様々なシステムを検討しました。しかし、海外子会社は10社未満だったので、外部のシステムを使うには規模が小さいと判断。代わりに、自分が一般的な計算ソフトを使って、連結会計の仕組みを作ってしまいました。
—— 前職で培った連結会計の知識やスキルが役立ちましたね。
Kさん:その後は、海外子会社向けに資金調達するための金融機関との交渉や折衝も担当することになりました。調達を借入にするのか、社債もしくは増資にするのか。国内外の金融機関から借り入れる場合、為替リスクと金利リスクのどちらを取るのか。自社の役員と相談しながら決めたり、金融機関との窓口になったりすることがメインの業務でした。私は20代前半から個人的に株式投資や外国為替取引を行ってきたので、その経験も役立ちましたね。
—— まさに財務担当のブレーンとして活躍されたわけですね。
Kさん:しかし、入社後に事業環境が劇的に変化したことから、会社の業績悪化を懸念し、再び転職を図ることに決めました。今度で3回目の転職になり、回数が多いことにもちろん不安はある。けれども、自分のキャリアへの危機感から、転職せざるを得ない状況でした。
大きくキャリアチェンジするなら、今しかない
転職に際して、Kさんは複数の転職支援サイトに登録した。多くのスカウトメールが届く中、ひときわ目を引いたのが、リーベルからの文面だ。そこにはKさんの想いを代弁するようなキーワードが並ぶと同時に、転職先として一つの会社が提案されていた。会社名は「ディーバ」と書かれていた。
—— 転職活動をスタートし、リーベルからもスカウトメールが届きました。どのように書かれていましたか?
Kさん:経理の仕事はコストセンターと考えられがちだが、もっと生産的にプロフィットセンターになれる可能性を秘めている。そうした新しい可能性を、連結会計システムの最大手であるディーバという会社なら、見出せる…。そんな文面だったと記憶しています。他のエージェントからは経理関連の転職先しか紹介がない中、それは異色の提案。正直言って、もう経理の仕事はやり尽くした、今後は違うキャリアを積みたいと考えていたこともあり、その提案はとても魅力的でした。また、ディーバは前述の“会社選びの基準”もクリアしている、今後の伸びが大いに望める会社でもありました。
—— ディーバでの面接の経緯を教えてください。
Kさん:面接は1次、2次の2回。面接では、経理という仕事に対して常に「生産性」を重視してきたことを強調しました。間接部門は率直に言って直接売り上げを上げることはできません。ただ、営業が経理処理にかかる時間を5分から1分に削減するなど、業務の手間や工数を減らすことによって会社に貢献できます。こうして現場の生産性を向上させることを、ずっと意識して仕事をしてきました。その点はディーバの哲学にも通じるところがあり、内定につながる評価ポイントになったのではないかと思います。また、一般的な経理の枠を超えて、財務面で実績を上げてきた点も、評価された点ではないかと考えています。
—— まさに、IT会社時代の先輩からの教えをきっかけに心掛けてきた考えや取り組みが、面接の場で活かされたのですね。経理だけでなく、グローバルな財務での経験も面接官には魅力的に見えたのだと思います。他にも内定が出た会社はありましたか?
Kさん:リーベル以外のエージェントで進めていた会社の経理ポジションでも、内定を得ました。しかし、今、世界的にM&Aが盛んな中、間接部門は縮小されていくのが明らかです。それこそディーバが展開している決算業務アウトソーシングなどを活用する会社も増えていくでしょう。あるいは、将来的に人工知能分野が発展すれば、経理業務のうち一定のルールに基づいて行う業務は人工知能に置き換わってしまうかもしれません。30代半ばという自分の年齢のこともあり、大きくキャリアチェンジするなら今しかない——。そう判断して、ディーバへの転職を決めたのです。
転職先の情報を事前にどれだけ取れるかが重要
Kさんは、ディーバという新たな活躍の場を手に入れた。目指すのは、日本の企業に根強く残る昔ながらの経理の仕組みを変革し、生産性の向上に貢献することだ。自身が携わる決算業務アウトソーシングへの期待とともに、キャリアチェンジに成功した要因を語っていただいた。
—— ディーバの一員になることで、Kさんのキャリアに活路が開かれたと思います。
Kさん:社内にある経理や会計の仕組みを内部からの提案で変えることは、とても困難だと思います。関係者の根回しや自身の負担などで多くが挫折してしまうのではないでしょうか。それに対し、ディーバという外部の会社がアウトソーシングを活用した会計の仕組みの効率化を提案することは、非常に有効です。今後はより多くの会社にこのアウトソーシングという選択肢を提案し、日本企業の経理業務改革、さらには生産性向上に寄与できればと思います。
—— ディーバへの転職が成功した要因をどのように考えますか?
Kさん:私の中にも、他のエージェントの中にも、ディーバという選択肢はありませんでした。それを教えてくれたリーベルの存在なくして、今回の転職の成功はあり得なかったと思っています。加えて、内定後にディーバの社員と面談する機会を設けてもらえたことも有難かった。アウトソーシング部門の業務内容や役割、仕事に対する考え方、業界全体のことなど、Webサイトからは知り得ない情報を聞くことができたからです。以前の転職ではそうした機会はありませんでした。
—— では、今後転職を目指す方々に、最後にアドバイスを。
Kさん:転職を3回経験した立場から助言すると、転職先の情報を事前にどれだけ取れるかが最も重要だと思います。現実的には、詳細がわからないのが正直なところではないでしょうか。その意味で、エージェント選びが鍵を握ります。今回、私の転職では、リーベルからディーバに関する様々な情報のレクチャーを事前に受けられ、内定後は実際にディーバで働く社員からも多くの情報を聞くことができました。そうしたきめ細かい対応によって、自分がやりたい事と会社がやっている事のマッチングを上手く図れるかどうかが、大きなポイントでしょう。
—— 転職して「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためにも、業界や会社に関する十分な情報を事前に得ることは不可欠ですね。お話は、転職を目指す方々にとって非常に参考になったと思います。有難うございました。
ライター プロフィール
- 高橋 学(たかはし・まなぶ)
- 1969年東京生まれ。幼少期は社会主義全盛のロシアで過ごす。中央大学商学部経営学科卒業後、1994年からフリーライターに。近年注力するジャンルは、ビジネス、キャリア、アート、消費トレンドなど。現在は日経トレンディや日経ビジネスムック、ダイヤモンドオンラインなどで執筆。
- ◇主な著書
- 『新版 結局「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(荒濱一氏との共著)
『新版 やっぱり「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(荒濱一氏との共著)
『「場回し」の技術』(光文社)など。