- プロフィール
- 国立弘前大学卒業後、2005年にブロードバンド事業を展開していた通信会社に入社。セキュリティのスペシャリストとして、研鑽と実績を積む。2年半在籍後、会社立ち上げの誘いを受け、IT会社の起業に参画。その後、セキュリティ専門会社、インターネット広告代理店事業を主軸とするITベンチャーを経て、リーベルの転職支援を受けて、リクルートライフスタイルに入社。
監視システムの構築やJ-SOX法対応などを経験。
その後の転職先でもSOCサービスや脆弱性診断の立ち上げで実績を積み、セキュリティのスペシャリストとしての地歩を固めた。
3社のIT企業を渡り歩き、数多くの事業を立ち上げ、自ら起業も経験した稀有なエンジニアが、次に選んだ活躍の場はリクルートライフスタイル。
着実に重ねたキャリアの変遷と新天地への転身に成功した転職活動の舞台裏に迫った。
通信会社を辞め、若くして会社立ち上げに参画
大学時代を過ごした青森から東京への就職を目指し、通信会社に就職。当初、IP電話の部署に配属されたが、突然の配置転換でセキュリティ関連部署に異動となる。当時、セキュリティ市場は黎明期で、Kさんにとっても興味を持てる分野。セキュリティの専門家としてのキャリアがスタートした。
—— 業務命令で配属されたセキュリティ部門で、専門家としてキャリアが始まりました。新人の時に最も成長を感じた仕事は?
Kさん:当時、他の企業でインターネットを介した情報流出事故が起こった直後だったこともあり、私が就職した通信会社では、数億の監視システムを導入していました。しかし、導入後は大半の機能が使われず、宝の持ち腐れ状態。私はそれを問題視し、費用削減のために新システムへの入れ替えを提案し、社長稟議を通して実行しました。まだ入社2年目でしたが、これが若いときで最初の大きな仕事でしたね。
—— その後も脆弱性診断やアカウント管理システムなど、主にセキュリティ関連の業務に携わったようですが、入社2年半で退職されます。理由は何ですか?
Kさん:他のグループ会社も含めて、J-SOX対応のためにグループの全体統制の仕組みとシステムの構築を推進するミッションを担当しました。ただ、他のグループ会社は古い体質の会社で、私が所属していた会社のベンチャー気質とは相いれない社風。そうした人たちを交えながら、根回ししつつプロジェクトを進めて行く業務を今から主にやるべきなのか、疑問を感じていました。そんな時、業務委託先のメンバーが「一緒にITベンチャーを立ち上げないか」と声をかけてくれたのです。20代半ばで一度起業の経験を積むことも一つの道だと考え、迷うことなくその誘いに乗ることにしました。
—— 起業した会社ではどのような役割を?
Kさん:メンバーは3人でしたが、システムを構築、運用できるエンジニアは私1人でした。そのため、社長が取ってくる仕事に対し、コーディングして個別にシステムを開発したり、スクラッチで汎用性のある会計システムを開発したりするなど、システム回りはすべて私が担当。パートナー会社が海外の軍事企業から買い付けた監視カメラシステムをセットアップして大規模モールに導入するなど、特殊な仕事も請け負いました。
—— そのITベンチャーも1年半で退職を余儀なくされました。
Kさん:2009年に起こったリーマンショックのあおりを受けて業績が悪化し、会社の存続が難しくなりました。一方で、私自身も現場で培った数多くの開発経験を、再びセキュリティ業界で活かしたいという思いがありました。そして、転職活動を経て入社したのが、最先端のセキュリティサービスを提供する会社でした。
最先端分野で次々と新規事業を立ち上げる
セキュリティ専業会社に転職したKさんは、最先端のセキュリティ関連サービスの立ち上げに携わる。しかし、入社から3年後に退職してITベンチャーへ転職。さらに、4年余り在籍した後、再度転職の機会が訪れる。その間、Kさんの中でどのような心境の変化があったのだろうか。
—— 新卒入社から数えて3社目になるセキュリティ専業会社ではどのような業務を?
Kさん:自社のSOC(セキュリティ・オペレーション・センター)サービスの立ち上げに参画し、仕様の検討と、システムの設計・構築を担当しました。その後はWeb感染型マルウェア対策支援サービスの立ち上げをリーダーとして担当。あるセキュリティベンチャーからマルウェアを発見するシステムを買い取り、それに私が知っているミドルウェアを組み合わせ製品化しました。
—— 当時、SOCやマルウェアの監視システムはセキュリティ分野では最先端のサービス。まさに時代の先を行くビジネスに取り組まれていたわけですね。
Kさん:ただし、その後は自分が立ち上げたSOCサービスの運用側のメンバーの一員となり、自社と導入先である団体の2か所を行ったり来たりしながら、24時間365日監視する定常業務を課せられました。日勤と夜勤を交互にこなし、やりがいを感じていた事業立ち上げにも携われない日々。正直言って、体力的にも精神的にも辛い毎日でした。もう一度、自分が得意な事業の立ち上げに携わりたいと考え、再度転職しました。
—— 4社目は次々と新規事業を立ち上げる、ITベンチャーでしたね。
Kさん:思えば新卒で入った会社が事業会社でしたが、4社目にして、もう一度事業会社に戻って、自分が得たセキュリティの技術を新規事業で活かしてみたいと思いました。その会社は年間100事業を立ち上げるようなとても元気で勢いのある会社。しかし、セキュリティだけでなく、サービスの適切な開発フローや撤退が決定したサービスをクローズするためのフローが無く、知見もない状況でした。そこで今までの経験を活かし、脆弱性診断やサービス開発フロー、サービスクローズフローをプロジェクトマネージャーとして立ち上げ、全事業への浸透を図りました。
—— インターネットテレビの立ち上げにも参画されたそうですね。
Kさん:インターネットテレビの立ち上げでは、楽曲利用の著作権管理やサービスの品質向上も担当。次々と新しいことに挑戦し、毎日が充実していました。ただ、同時に将来への不安も感じていました。企画・戦略などを通して、経営に近いミッションにキャリアをシフトして行きたいと考えていましたが、その会社ではどのようにキャリアアップを図るかが、見えなかったからです。そこで、再び転職に向けて、動き始めました。
一発逆転で内定を獲得
転職活動を始めたKさんは、当初、エージェントに頼らず、自らの力で候補となる会社を探し、応募し、面接を受けた。キャリアアップが見込める大手企業を受け、セキュリティのスペシャリストという強みがあったため、いくつかの会社で選考は順調に進んだ。だが、最終的には辞退した。本当にその会社でいいのか、疑問を拭えなかったからだ。
—— 自力の転職活動ではどのような企業に応募されたのですか?
Kさん:大手通信会社やゲーム会社、大手銀行などです。セキュリティのポジションで応募する中で、私の実績が認められ、書類が通り、1次面接、2次面接と進む企業も複数ありました。ですが、単純にネームバリュー重視で会社を選んでいたこともあり、面接でその会社の内情を知れば知るほど、果たして自分に向いているのだろうかと疑問がわきました。そこで、エージェントの支援を受ける必要性を感じ、転職ポータルサイト登録後に届いたスカウトメールの中からリーベルを選び、支援を依頼したのです。
—— なぜ数あるスカウトメールからリーベルを選んだのですか?
Kさん:リーベルのメールだけ、気合の入り方が違っていたからです(笑)。私の気持ちや疑問に対し、一つひとつ丁寧に回答し、文面からセキュリティ業界に詳しいことが伝わってくるとともに、何としてでも良い就職先を探そうという意気込みが感じられました。実際に紹介先として提示された企業は、私がそれまで受けてきた企業とは異なる選択肢でした。特に提示されたリクルートグループの会社は、ぜひ働いてみたいと思い、応募することにしました。
—— 選考結果はどうでしたか?
Kさん:じつは、リクルートグループの3社を受けたのですが、私が今まで培ってきたセキュリティの技術や実績と先方が求める要件がマッチせず、選考はうまくいきませんでした。しかし、リーベルのコンサルタントはあきらめず、3社以外のグループ会社であるリクルートライフスタイルに私を売り込んでくれました。すると、興味を示してくれ、急きょ面接が設定されることになったのです。
—— リクルートライフスタイルはセキュリティポジションの求人を出していなかったと聞きます。それでもリーベルのコンサルタントはKさんとリクルートのマッチングの良さを考え、自分のコネクションを活かして売り込みをかけたのですね。
Kさん:面接では私の技術力、実績、仕事への取り組み方が認められ、面接が終わったその日のうちに内定が出ました。メールの文面から意気込みを感じ、信頼してリーベルに支援を依頼したわけですが、その選択は間違っていなかったと、改めて実感しました。
「必ず結果を出す」プロフェッショナル精神
エージェントの協力もあり新たな活躍の場を勝ち得たKさん。セキュリティという強みを長年にわたって磨いてきたことも、一発逆転の内定獲得につながったといえる。転職を繰り返してもそれがハンデとならず、様々な会社から必要な人材として求められてきた秘訣を聞いてみた。
—— 転職を振り返って、成功した要因は何でしょうか。
Kさん:最初に自力で転職活動に挑んでみたことも無駄ではなかったと思います。実際に面接で面接官と話してみないと、その会社の実態は見えてこないですし、会社研究と考えれば、それは貴重な体験でした。この会社も違う、この会社でもないと模索したうえで、リーベルにリクルートを紹介されたからこそ、「この会社だ」とピンときたのだと思います。
—— セキュリティという専門性の高い技術を磨いてきたことも、過去の複数回の転職を含めて、有利に働きましたね。
Kさん:ただ、大切なのは技術力だけではありません。私はリクルートライフスタイルの面接で「仕事上最も意識しているポイントは何か?」と問われ、「人間関係」と答えました。若い頃は人間関係で躓き、無力感に悩んだこともありました。その後は、様々な立場の人との信頼関係こそ要だと考え、セキュリティのシステムを導入したり、ルールを浸透させたりする際は、導入先の人たちから信頼を得ることに、最も力を注ぎました。そうやって人間関係を作れるかどうかがプロジェクトの成否を決めます。技術だけでなく、そうしたマネジメント力があることも、転職先の評価ポイントになったと自負しています。
—— 技術を磨くだけでなく、プロジェクト推進に不可欠な人間関係の重視、そして、必ず結果を出していくというプロフェッショナル精神が、Kさんの人材としての価値を必然的に高めていったのだと思います。世の中の有力な企業から必要とされる人材になるためのヒントが、垣間見える話でした。有難うございました。
ライター プロフィール
- 高橋 学(たかはし・まなぶ)
- 1969年東京生まれ。幼少期は社会主義全盛のロシアで過ごす。中央大学商学部経営学科卒業後、1994年からフリーライターに。近年注力するジャンルは、ビジネス、キャリア、アート、消費トレンドなど。現在は日経トレンディや日経ビジネスムック、ダイヤモンドオンラインなどで執筆。
- ◇主な著書
- 『新版 結局「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(荒濱一氏との共著)
『新版 やっぱり「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(荒濱一氏との共著)
『「場回し」の技術』(光文社)など。