- プロフィール
- 新卒でオープン系情報システムのコンサルティング・受託開発を事業とするシステム会社に入社。金融、SCM、経営支援などさまざまなシステムの開発に携わり、PG、SE、PL、PM、アーキテクト、コンサルタント、プリセールスなど様々なポジションを担当。その後30代前半の若さで部長・取締役となり、50名の部署を統括した。オーナーの事業撤退の表明を受けて転職活動を始め、大手各社から内定を獲得したのち、電通総研に入社。
要求されるのはビジネスに直結する結果を出すこと。高いハードルにやりがいを感じてきた。
そして今、顧客のビジネスの成功に、よりコミットできる組織力の高いチームへ。
強い意志で臨んだ転職活動の顛末を聞いた。
システム開発で大切なのは「人間力」
経験したクライアントの業種は金融、食品、製薬、広告、福祉、機械、不動産……。システムの種別では経営支援、金融取引フロント、基幹業務、SCMなど非常に多岐にわたる。しかもすべてプライム案件だ。プリセールスとしてコンペの勝利に貢献し、コンサルタントとして顧客の課題解決に奔走した日々。多忙を極めたが、充実感に溢れていた。
——前職のシステム会社では様々なシステム開発を経験されましたね。
Sさん:完全実力主義の会社で、成果を出した分だけ報酬に反映され、実績さえ積めばスピード昇進もできました。役職者を社員の選挙で選ぶ変わった制度もありました。ですから私も貪欲に仕事に取り組み、プログラマーに始まり、エンジニア、プリセールス、コンサルタントと様々なポジションを経験してきました。
——仕事の全てがプライムの案件でした。
Sさん:システムのプロであるという立場から顧客のビジネスにとって最適なシステムを作り、課題解決という「結果」を出すことを約束するのがプライムの役割です。そこは主に「作業」という側面が強い2次請け、3次請けとは全く異なる立場。責任が重く、プレッシャーもかかる仕事ですが、顧客のビジネスに貢献できている、延いては社会の役に立っていると実感でき、非常に充実感があり、楽しい毎日でした。
——特にプリセールスとして数々の案件を獲得されてきました。
Sさん:基本的には営業職が飛び込み営業を中心に取ってきた案件に対し、プリセールスとして課題を聞いてシステムに落とし込むのが仕事です。ただし最終的にコンペで勝たなくては案件は獲得できません。対象は中堅以上の企業なので、当然のことながら既に何らかのシステムが導入されており、その既存のベンダーやその他のネームバリューのある会社と競合することになります。
——Sさんの会社は社員60人の小規模な会社。コンペで大手に勝つのは困難では?
Sさん:提案が同じような内容であれば100%負けます。だから当然差別化は必要です。例えばクライアントが提示した課題はもちろんのこと、それ以外の潜在的な課題をも解決するようなプラスアルファの提案を必ず盛り込みます。あるいは期日1週間と言われたら翌日に提案するなどスピードでも差を付けます。
——提案力、スピード。他にも大手に対抗するポイントはありますか?
Sさん:結局は人間的な魅力が最も重要でしょう。システムとは人が人のために作るものであり、コンピュータや関連する技術は単に道具として使っているだけです。つまり、プリセールスの人そのものが商品と言えます。前職は独立系のソフトウェアハウスであり、基本的にゼロからシステムを構築していくため、このシステム会社、この人とであれば二人三脚でやっていけるという信頼感を持ってもらえるかどうかが鍵です。システムに対するプライド、真摯さ、そして顧客のビジネスに必ずや貢献するという想いとそれに伴う提案。これらが訴求できたからこそ数々の案件を獲得できたのだと自負しています。
オーナーの撤退表明が転職の引き金に
Sさんは順調に昇進。30代前半で部長・取締役になり、50人の部下を統括し、年間10億円以上の予算を動かす立場になった。しかし順風満帆のキャリアにも転機が訪れる。会社のオーナーがソフトウェア事業からの撤退を表明したのだ。
——突然の撤退表明。さぞかし戸惑われたのでは?
Sさん:確かに驚きました。ただ、前職ではできないことがいくつかあり、それを実現するための方策を考えるきっかけにもなりました。例えば個人の力量は発揮しやすい会社でありその恩恵も十分に受けてきましたが、一方で小さい会社だったので組織力がやや弱かった。そのため「自分と同じような高い意識の仲間とチームプレーで顧客の課題を解決したい」という想いは、満たされない部分もありました。
——小規模な会社ではいたしかたないことかもしれません。
Sさん:またシステムを作る力量は十分でしたが、その後の運用まではマンパワーが足りなく、手が回りませんでした。システムのカットオーバーはゴールではなく、顧客にとってはスタートライン。本来であればそこから共に運用し、ビジネスの変化に合わせて改善していく必要があります。さらに一流のエンジニアになるために自分のスペシャリティを作りたいという想いもありました。
——その方策として転職活動を始められます。
Sさん:転職活動を開始したのは4月で、転職ポータルサイトに登録するとエージェントから300件くらいメールが来ました。そのうち実際に会ったエージェントは10人程度。その中にリーベルのエージェントも含まれていました。
——10人とは多いですね。その中でリーベルをパートナーに選ばれた理由は?
Sさん:私の話を真摯によく聞き、対応しようとしてくれたからです。他のエージェントはあまり深く耳を傾けず、どちらかというと自分たちが紹介する会社に早く応募してくださいといったニュアンスが強かった。しかし、リーベルは逆で「一生に一度の転職活動。じっくり慎重に考えて絶対に成功させましょう」というスタンス。私がクライアントに対応するときの姿勢と共通する部分にシンクロを感じ、この人となら二人三脚でやっていけると思いました。
自分にとって理想的な場所を見つける
リーベルからは大手を中心に複数の企業を紹介。Sさんの実力とキャリアはいずれの企業でも高く評価され、次々と内定を受ける。そうした中、Sさんは電通総研に強く惹かれ、入社を決めた。どのような想いがあったのだろうか。
——様々な企業からオファーがある中、電通総研を選びます。経緯を教えてください。
Sさん:正直言いますと、当初電通総研は第一志望ではありませんでした。ただ、リーベルからコミュニケーションIT(CIT)事業部を紹介されて面接を受け、クライアントのビジネスと密接に関わるシステム開発ができることを知り、非常に感銘を受けました。
——具体的にどのような仕事に魅力を感じましたか?
Sさん:電通総研は主に3つの領域を得意としています。金融業、製造業、そして親会社の電通とともに進めるCIT事業部です。このうち顧客のビジネスにより近いポジションで仕事をするのがCIT。リーベルは私がビジネスにこだわる気持ちをくみ取り、金融系の経験が強かったにもかかわらず、このCIT事業部への応募を勧めてくれたのです。これがいわば“ファインプレー”でした。広告などを通じて顧客のお手伝いをする電通とともに、ITを通じて顧客のビジネスを支援する。システムのカットオーバー後も継続してサポートできる。ITコンサルティングというスペシャリティも磨くことができる。CIT事業部は自分にとって理想的な場所でした。もしリーベルからCIT事業部の紹介がなければ、電通総研との縁はなかったかもしれません。
——CIT事業部で働く方たちにも感銘を受けられたようですね。
Sさん:面接では入社後に共に働くことになる上司の方々と話す機会を得ましたが、その人柄が素晴らしく、志の高さも自分に通じるものがありました。この人たちは顧客のビジネスの成功を何よりも第一に考えている。そして仕事を、人生を楽しんでいる——。想いがシンクロし、このような同じマインドを持つ人たちと一緒にチームとして仕事がしたいと強く思いました。これも入社の決め手となりましたね。
転職成功の秘訣は「本心」を見つけること
自分が本当に進みたい道を歩み出すことができたSさん。初めての転職活動を成功に導くことができた背景には、いくつかのポイントがある。どのような心構えで転職活動に臨めばいいか。また様々な迷いがあった場合どう判断すべきか……。
——初めての転職活動で最高の結果を出すことができました。秘訣を教えていただけますか?
Sさん:まずは焦らず「自分が本当にしたいことは何か」をゆっくり考えたことがポイントでしょう。自分の心の奥底にある想いはなかなか見えないもの。それを自分自身と距離を置き、冷静に見つめ、リーベルの転職支援を受けながら応募書類を時間をかけて作ることなどを通じて、明確にしようと努力しました。そこで「自分にはビジネスへのこだわりがある」ことを再発見することができた。このことは非常に大きかったですね。
——その自分の本心が判断基準になった。
Sさん:そうです。内定を受けた企業の中には、待遇面で良い条件を出してくださったり、ネームバリューが非常に高かったりする企業もありました。正直迷うこともありましたが、最後はビジネスへのこだわりを貫き、当初の第一志望の会社から内定を頂いたにもかかわらず、電通総研に決めました。
——最後にこれから転職をする方へのメッセージをお願いします。
Sさん:2つあります。1つは私と同じように自分をしっかり見つめ直すこと。結局、自分の心の奥底にあるものと仕事の内容を合致させるのが、転職活動で最も大切なことだと思います。その本心が何なのかを知らないと転職を成功させることは難しいでしょう。そしてもう1つが妥協せずに意志を貫徹することです。中には、早く決めさせようとするエージェントもあります。でも、何のために転職するのか。エージェントのためではなく、自分の人生のために転職をするのです。この点を忘れないでいただければと思います。
——自分をよく知り、自分のために転職するという強い気持ちがあれば、本当に行きたい道に進める。この心構えこそが大切なのですね。有難うございました。
ライター プロフィール
- 高橋 学(たかはし・まなぶ)
- 1969年東京生まれ。幼少期は社会主義全盛のロシアで過ごす。中央大学商学部経営学科卒業後、1994年からフリーライターに。近年注力するジャンルは、ビジネス、キャリア、アート、消費トレンドなど。現在は日経トレンディや日経ビジネスムック、ダイヤモンドオンラインなどで執筆。
- ◇主な著書
- 『新版 結局「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(荒濱一氏との共著)
『新版 やっぱり「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(荒濱一氏との共著)
『「場回し」の技術』(光文社)など。