- プロフィール
- 武蔵工業大学電気電子工学科を卒業後、システム開発会社に入社。Webアプリケーションやフレームワークの開発に従事する。一度、別のシステム開発会社に転職するが、希望する自社製品やサービスの開発ができないことから再度転職し、GMOメディアに入社。
大きな夢を抱いて転職した職場で、自分のやりたい仕事ができない。そんな苦境に陥った時、あなたならどうするだろう。中村真一郎氏は敢然と再度の転職活動に挑み、見事希望通りの仕事を射止めた。その裏側にあった決断の数々を、リーベル代表の石川が聞いた。
念願の新規事業担当となるも、資金難で進まず
石川:大学では電気電子工学専攻だったんですよね。なぜIT業界に入られたんですか?
中村さん:もともと社会に出て働くにあたり、何か1つ武器になる知識や技術を身につけたいと考えていました。ただし、電気電子工学を学ぶ中で、この分野で一生働くのは自分としてはちょっと違うかなと感じたんです。結局、大学4年になって道を変えることを決意したのですが、その際、今後盛んになるのはやはりIT業界だろうと。そこから独学で情報関連の勉強を始め、就職はIT業界に絞りました。
石川:最初に就職されたのは、規模的には従業員数30名程度とさほど大きくありませんが、技術レベルには定評のあるシステム開発会社ですね。この会社を選んだ理由は?
中村さん:私の出身校とは別の大学の教授で就職関連の情報に詳しかった叔父に「こういう会社があるよ」と教えてもらったんです。規模が小さいので風通しが良く、いろいろなことができそうだし、最新技術に強い人が揃っている。自分としてはIT関連の技術や知識がまだまだなので、まずはこういう会社から始めるのがいいのではと考えました。
石川:この会社には6年ちょっと在籍したんですね。どんな仕事をしていたんですか?
中村さん:主にWeb関連のアプリケーションや、フレームワークの開発を担当していました。技術的なことはもちろんですが、経験豊富な先輩方から仕事に対する考え方や姿勢を教えてもらえたのが大きかったですね。具体的には、変化の激しい業界の中でやっていくには常に学ぶことが大切、そのためにはどんなことに注目すべきか、といったことです。
石川:その後、別のシステム会社に一度転職されるんですよね?
中村さん:はい。最初の会社で6年経験を積んだことから、そろそろ環境を変えたいな、という思いはあったんです。そんな時、同じ会社に転職されていた先輩2人から、自分たちの勤めている会社に来ないか? という誘いをいただきまして。私は当時から、自社製品やサービスの開発をやりたいという気持ちが強かったんですが、そういう仕事にもより中心的な立場で携わるチャンスがあるということで、転職を決めました。
石川:ところがその1年半後、また転職を考えることになる。そのあたりの経緯を教えてください。
中村さん:転職したのは、10人程度の規模で、主にJava関連の受託開発を行っている会社。私は念願叶って、入社1年後の今年4月から新規事業のメイン担当になりました。しかし、資金難もあってプロジェクトがなかなか進まない。そのうちに私を誘ってくれた先輩社員2人も次々と退職し、会社の先行きに不安を感じるようになったのです。ここでは自分がやりたい「自社製品・サービスに関わる仕事」ができない、と考え、再度転職することにしました。
リーベルは考える時間をしっかりくれた
石川:今回、転職活動を行うにあたり、人材紹介会社を利用することにしたのはなぜですか?
中村さん:前回の転職は先輩の紹介だったので、実質的な転職活動は初めて。しかも会社の業務をこなしながら活動を進めなくてはいけないので、人材紹介会社にサポートしてもらおうと考え、転職サイトに登録しました、するとすぐにスカウトしてくださったのがリーベルだったんです。
石川:すごく良さそうな方だな、レベルの高そうな方だな、と思って、ただちに連絡させてもらったんですよ(笑)
中村さん:石川さんとメールをやり取りする中で、とても経験が豊富なのが伝わってきて、すぐにオフィスを訪問しました。そこで様々な情報をいただいたり、こんな会社があるよ、と教えてもらったりして、光が見えた気がしましたね。正直、転職するといってもどう動けばいいかわからなかったので。
実はその後、他の人材紹介会社ともコンタクトを取り、当初は2つの会社に動いてもらっていたのですが、途中からリーベル1社に絞りました。というのは、もう1つの会社の担当者は、自分が紹介した会社に私を入れたいという思いがあまりにも強く、何かにつけて「どうなんですか、どうなんですか」と急かされる感じだった。その点、石川さんは考える時間をしっかりくれたんです。
石川:我々はあくまでサポートする立場。最終的に決断するのはご自身なんですから、納得いくまでじっくり考えていただきたい、というのが私を含めた当社のスタンスです。また、選択肢を増やすという意味で、他の人材紹介会社を並行して使っていただくのも一向に構いません。中村さんの場合、そのことも包み隠さず話してくださっていたので、ありがたかったですね。
決め手は「自分がいかに必要とされているか」
石川:中村さんの場合、技術レベルに加えてヒューマンスキルも高い。また、前の会社は短期間で辞めようとされていたとはいえ、その理由や方向性も明確で全く問題ない。紹介できる会社はたくさんありました。
中村さん:「自社製品・サービスを持っていて、その仕事に携わらせてくれる会社」「BtoC向けの事業を展開している会社」というのが私の希望。石川さんにいろいろ話を聞いた上で、最終的には3社に絞りました。
石川:そのうちの1社がGMOメディアでしたね。どんなところに興味をひかれたんですか?
中村さん:業務内容が非常に幅広く、しかもその中でこれまでやってきたJavaの知識がそのまま活かせる。いろいろなチャンスがありそうだし、技術的にもワンランクアップできそうだなと感じました。
また、面接の中で、担当部門の本部長から「我々のやっていることはテレビ局と同じ。テレビ局が面白い番組を作ってみんなに見てもらおうと思うのと同様に、我々も面白いサイトを作り、たくさんの人に集まってもらいたいと常に考えている」と熱い思いを聞かされ、なるほどと感激しました。この会社で自分もそんな仕事がしたい、と思ったんです。
石川:実は内定が出た後、GMOメディアさんからは当社を通じて、「中村さんにはどうしても入社してもらいたいから、ぜひもう一度会う機会を作ってほしい」という申し出をいただきました。
中村さん:熱意が伝わってきて、嬉しかったですね。その際に、入社後、どういう業務を任せたいのかを具体的に話してもらえたのに加え、職場の環境も見せていただき、完全に心が固まりました。
実はもう1社、別の会社からも内定をもらっていたのですが、面接のやりとりの中で、私のことをあまりよく把握していないのでは、と思うことがあって。やはり自分を本当に必要としてくれる会社に行きたいと考え、GMOメディアを選びました。
最後の最後の選択は慎重に
石川:入社してまだ間もないのですが、GMOメディアの環境はいかがですか?
中村さん:今は自社のブログシステム開発に携わっています。かなり大きなシステムなので、技術的な部分や仕様などを学びながらですが。自分が作ったものが実際に世に出て、多くの人に使ってもらえるという、当初の希望通りの仕事ができ、とてもワクワクしています。将来的には、自分の実績が世の中に目に見える形で残るようなものを開発するのが夢です。
石川:そういえば、本も執筆中なんですよね。
中村さん:ええ。前職時代の同僚と共同で、「Ruby On RailsによるWebアプリケーション開発スーパーサンプル」というタイトルの本(2008年3月出版予定)を執筆しています。今後も機会があれば、こうしたことにも積極的にトライしていきたいですね。
石川:今回の転職活動を振り返ってみて、どんな感想をお持ちでしょう?
中村さん:実際、転職活動を始めてから1カ月半ほどの間に、多くの面接があり、しかもそれを会社の業務をこなしながらやらなくてはいけないということで非常にきつかったです。それでも自分1人で活動を進めるのに比べたら、リーベルのサポートがあった分、かなり助かりましたね。
今回の転職活動で、たくさんの企業を見ることができたのに加えて、自分の過去のキャリアを振り返り、自分がどういう道を行きたいのか考え直すいい機会にもなりました。日々、新しい発見がありましたね。
石川:大変だったでしょうが、最終的には満足のいく会社と巡り会えて本当に良かったですね。それでは今後、転職を考えている方々にメッセージをお願いします。
中村さん:まず、いろいろな会社に行ってみるのがいいと思います。そこで話しているうちに、自分の方向性が明確になってきますから。それと、最後の最後の選択は慎重に行ったほうがいい。雑音に惑わされることなく、じっくりと考え抜くことですね。
石川:中村さんが今、指摘されたことは実はとても重要。私が見てきた中でも、最後の最後で取るに足らない枝葉の情報や一時の感情に惑わされ、結局、会社選びに失敗してしまった人が結構います。いずれにせよ、中村さんは人物的にも技術的にも素晴らしいものを備えている方。ぜひこれからも、ご自身の夢を存分に追いかけてほしいですね。本日はありがとうございました。
採用担当者からのコメント
システム本部 取締役 システム本部長
堀内 敏明 氏
インターネットメディア開発を行っている当社で大事なのは、常に何らかの「仕掛け」を作って、ユーザーの方々にサイトに集まっていただくこと。だからこそ、何よりも重視するのは、ユーザー視点から見て何が面白いかということと、作ったものをいかに運用するかということです。もっといいものができるとなったら、納期をずらすことも厭いません。また、一般的なシステムと違い、我々の開発にはゴールがなく、常に進化させていかなくてはならない。そのため開発スタイルもアジャイル的で、多くの人とコミュニケーションをとりながら臨機応変に開発を進める必要があります。こうしたことからエンジニアにも、どうしたらよりユーザーに喜んでもらえるものを作れるかを、柔軟に考えられることが第一に求められます。
面接で注目しているのは、「エンジニアとして将来の方向性をどう考えているか、またそのためにどんな努力をしているか」、「コミュニケーションをきちんととれるか」「モチベーションがしっかり備わっているか」の3点。特に重要なのはモチベーションです。この業界は流れが速いので、モチベーションを高くして様々な情報を集め、新しいことを実現するには何が必要か考えなくてはなりませんから。
中村さんを採用した最大のポイントはポテンシャルの高さです。年間、何十人という人と面接で話すのですが、「こういうことがやりたい」ということはあっても、それに向けて努力をしている人というのは意外なほど少ないんですね。その点、中村さんは、前職での業務をこなしながらも、我々のやっているようなBtoCのことも勉強するなど、自分自身のやりたいことに向け努力している姿勢が強く見られた。この方なら今後、どのような変化が起こっても対応して伸びていってくれるだろうと判断しました。
ライター プロフィール
- 荒濱 一(あらはま・はじめ)
- 1971年、東京生まれ。上智大学文学部教育学科卒。高校教諭、タイ・インドでの広告代理店勤務を経て、1998年からライターとして活動を開始する。現在、ビジネス(特に人材・起業)、IT/デジタル機器、著名人インタビューなど幅広い分野で記事を執筆するほか、広告コピー分野でも活躍。
- ◇主な著書
- 『新版 結局「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(高橋学氏との共著)
『新版 やっぱり「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(高橋学氏との共著)