心理学から学ぶ新・仕事術

現代に生きるビジネスパーソンへ。心理学からアプローチした仕事術をお伝えします。

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第5話

ミドル期のキャリアの停滞をどうしのぐ?

— 不活性化状態から抜け出すためにできること —

増えるミドル期人材

バブル時代に採用した人たちが年齢的にミドル期になってきたこともあり、「彼らにどうやって、キャリアの自律を求めたらよいか」というテーマで人事の方と話をする機会が増えています。以前団塊の世代がミドル期に差し掛かった時社内にいるミドル期人材をどうマネジメントするか、ということは大きなテーマでした。現在はそれ以上に人数が多いバブル時代採用組がミドル期に差しかったことで、ミドル期にある人々の働き方やこれからのキャリアに対する注目が高まっています。

ミドル期人材の何が問題視されるのか

ミドル期人材をどうしたらよいかという問いの前提には、彼らには問題があるという考え方があります。ここではどうしたらよいかを考える前に、ミドル期人材にどんな問題があるのかを整理してみましょう。ミドル期人材の問題を表現する言葉として人事部で最も頻繁に使われているのは「不活性化」という言葉です。

ここでいう不活性化には、仕事に対するやる気のなさや、会社へのぶらさがり感、自らのキャリアに対するあがり感といったものが含まれることが多くあります。ざっくり言うと、「年齢的にミドル期の人たちって仕事に対してやる気が感じられないですよね。だけど、他の会社に転職できないことや転職すると待遇が悪くなることがわかっているから、なんとなくこの会社に残っていて、このあとまだまだ会社にいるんだよね。その状態ってこのまま放っておいていいの?」といった感じでしょう。

活性化し続けることは現実的か

このように不活性化が問題視されているミドル期人材ですが、そもそも長い仕事人生ずっと活性化状態にあるというのは現実的なのでしょうか。確かにそのような人が存在する可能性は否定しませんが、多くの人は仕事に対する意欲も高い活性化状態と、不活性化状態を行き来しつつ働いているのではないでしょうか。仕事のやる気だけに限ったことではなく、人の調子には波があるものです。

不活性化状態にある人を周囲はどう受け止めるか

ただ、不活性化状態にある時、若手とミドル期では周囲からの見え方が違うということには注意しておく必要があります。若手であれば、たとえ不活性化状態にあっても、「上司と合わないのかな?」「仕事うまくいっていないのかな?」といったように、今の不活性化状態は一時的なもので変わる可能性があり、かつ本人だけでなく周囲にも原因があるかもしれないと思います。

一方、ミドル期にさしかかると、「あの人ってそうなんだよね(仕事やる気ないよね)」「もうおしまいかな」というように、不活性化状態はこれからもずっと続きそうという見通しをもたれたり、その状態がその人らしさと捉えられる事が多くあります。

不活性化状態にある人への周囲の対応

周囲からの見え方の違いは、対応の違いにつながります。「今は不活性化状態にあるけれど変わるだろう」と捉えている相手に対しては、人は「どうしたの?」とか「もっとこうしたら?」「このままじゃまずいんじゃない?」といった形で働きかけます。一方で、「もうこのまま変わらないだろうな」と捉えている人に対しては、何も働きかけません。

本当はミドル層に対してもこういった周囲からの働きかけは、ミドル層が良くない状態から抜け出すきっかけとなります。しかし、私たちは一般的には年下には苦言を含めたアドバイスをすることにあまり抵抗を感じませんが、年上に対しては非常に強い抵抗を感じます。周囲に年上が少なくなるミドル期人材は、色々な理由で、不活性化状態から抜け出すきっかけを周囲から得にくくなります。

ミドル層が不活性化から抜け出すには

若手、ミドル層に限らず不活性化状態には誰もがなりうるものです。大事なことはそこからどうやって抜け出すかということです。もちろん抜け出す方法は人それぞれによって違って構いません。ただし、多くの人にとって有効な方法である周囲からの働きかけは、放っておくと年齢があがるにつれて、もらいにくくなります。

ミドル期に差し掛かってきたなと実感する時は、外部からの働きかけは以前ほど得られないと考え自分できっかけを作り出す、周囲がきっかけを提供しやすくなるように働きかけるというようなことが必要です。

  • 自分に足りない所を指摘しにくい雰囲気を出していないか
  • 自分からフィードバックをもらいに行っているか
  • 自分に苦言を呈してくれる人を遠ざけていないか
  • 自分の迷いを相談しているか

こんな点から自分の行動を振り返ってみてはどうでしょうか。

まとめ

  • バブル時代に採用された人材がミドル期に差し掛かっているが、今、ミドル期が十分に意欲を持たない状態で働いている「不活性化」が問題になっている。
  • 年上のミドル期人材は若手と違って、苦言を含めたアドバイスをすることは難しい上、不活性化状態をこの先も変えることは難しいと捉えられがち。
  • 自分がミドル期に差し掛かってきたと思ったら、外部からの働きかけを得るために自分からきっかけを作りだし、周囲がきっかけを提供しやすくするように働きかけることが大切。

筆者プロフィール

坂爪 洋美
坂爪 洋美
法政大学キャリアデザイン学部 教授
慶應義塾大学大学院経営管理研究科博士課程修了 経営学博士。専門は産業・組織心理学ならびに人材マネジメント。主要な著書は『キャリア・オリエンテーション』(白桃書房、2008年)等。
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