「やり切った」と話している方、危険です
『よし、一通りの仕事は経験してやり切ったな。新しいことに挑戦するために転職しよう。』
このような動機から転職活動を始め、面接で転職理由を聞かれた際に、「現職での仕事はやり切ったため」と答える方が非常に多くいます。
結論から言いますと、この「やり切った」という言葉は面接官に対して悪印象を与えている可能性が非常に高いです。特に若手の方、この一言でお見送りになってもおかしくないほどの危険ワードです。
そもそも、「やり切った」とはどのような状態を意味するのでしょうか。もうその分野では覚えることは一切ない、新しい経験も一切できない、考えうるすべての経験を網羅した状態ですよね。つまりは、次にどの立場で、どのお客様の新規開発案件にアサインされても、特に障害も無く円滑にプロジェクトを遂行できる、何でも任せろと言っているのと同じです。中には本当にそのレベルに達している人もいないとは言い切れませんが、少なくとも私はすべてをやり切ったスーパーマンのような人には会ったことがありません。
例えば、スティーブ・ジョブスを思い出してください。彼は生涯の仕事を振り返ったとき、「すべてをやり切った」と言うでしょうか。私は、「NO」だと思います。おそらくは、まだまだやり残したことが多くあると答えるでしょう。ビル・ゲイツ、マーク・ザッカーバーグ、日本では孫正義、三木谷浩史、柳井正、彼らも決して「やり切った」とは言わないと思います。
「やり切った」と言う人は、それ以上成長する気がない、現状で満足していると捉えられてしまいます。ビジネスが世の中に存在する以上、「やり切った」というのは基本的には無いのです。「やり切った」というのは、「これで私のできることは終わりです。これ以上は何もできません。」と言っているようなもの。これでは、「ああ、この人はうちに入っても成長しないな。」と判断される可能性も高いです。
「やり切った」という理由で転職をしようとしている方、それは絶対にやめましょう。
「コミュニケーション能力が高いです」って本当?
次のケースを見てみます。自己PRであったり、強みを聞いた際によく出てくるのは、「私の強みはコミュニケーション能力が高いところです」という回答です。コミュニケーション能力の高さはどう測るんでしょうか。私自身、自分のコミュケーション能力が高いのかと言われると、職業柄最低限のコミュニケーション能力は身に付けていると思いますが、高いかどうかをロジカルに説明しろとなると難しいです。なぜならば、コミュニケーション能力が高いかどうかは自分で判断するものではないと思っているからです。
よく、飲み会を企画するのが好きだから、友達にお前は人見知り無く誰とでも話せるよなと言われる、そのような理由で「私はコミュケーション能力が高い」と答える方もいますが、それはビジネス観点でのコミュニケーション能力とは無関係なので論外です。
コミュニケーションを取る際には、必ず相手が存在します。そして、その相手がいかに心地よく話せるのかです。あなたがベラベラと話し続けても、相手が「空気が読めない人だな」「私の話、本当に聞いているのか」「何を言いたいかさっぱり分からない」と思っていては、コミュニケーション能力が高いとは言えません。仮に一字一句、表情も全く同じで話していても、相手によって心地よいと感じることもあれば、話しにくいと感じることもあるでしょう。
数学のテストの得点など、数値で明確に能力値が出るものであれば、「私は数学が得意です」と言うのは全く問題ありませんが、コミュニケーション能力のように数値化できないもの、特に相手がいるものについては、自分で判断するのではなく、相手が判断するのです。
「私はロジカルな人間です」というのも同じです。本来は相手が判断するものを、私は得意ですというには危険なので、これも避けたほうが良いでしょう。
そして、明確な理由はないのですが、私がお会いして、コミュニケーション能力が高いと思った方は、不思議とほとんど例外なく「私はコミュニケーション能力が高いです」とは言いませんでした。ただ、その逆はよくあるので気をつけましょう。
「やりたい」ばかりは誰でも言える
最後に、面接で「あれがやりたい」「これがやりたい」と自分がやりたいことばかりを答える方がいます。もちろん、入社したら何をやりたいのか、その答えを持つことは必要ですが、私(or面接官)が言いたいことは、「やりたいのは分かった。それで、あなたにできるの?」ということです。
「やりたい」は誰にでも、何とでも言えます。ぶっ飛んだ話ですが、私が「2020年までに火星に家を建てて、家族で移住したいです」と言うのも自由です。ただ、「それで、あなたにできるの?」と聞かれた際に、「今は難しいですが、でも頑張ります!」と答えたら、おそらく面接官はシラけます。一発でお見送りですね。もし私が、「私は宇宙機構の主任研究員であり、半年に一度は火星へ飛んで人類が住めるかを調査しております。その結果、火星には人類が住める可能性が高いと分かったので、まずは我々家族に協力してもらい…」なんて話せれば多少は納得してもらえるかもしれませんね。
転職の話に戻しましょう。極端な例をお伝えしましたが、根本はこれと変わりません。あなたを採用とするということは、あなたを採用することで自社に利益をもたらせることができるか判断するということ。仕事は趣味ではなく、ビジネスである以上、どこで貢献できるのかが重要です。「やりたいです。今はできないですが頑張ります」では、新卒を採用したほうがマシです。
中途採用で受けている以上は、即戦力なのです。「やりたい」ばかりを言うのではなく、なぜあなたはそれが自分にできると思っているのかの根拠を話せるようにしておきましょう。根拠が無い以上は、「この人が活躍するイメージがわかないのでお見送り」という結果になってしまいます。
面接時のNGワードはこれ以外にもいくつかありますが、回答をしてしまう方が特に多い3つのパターンをお伝えしました。面接対策をする際には、最低限この3つのNGワードには気をつけていきましょう。
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