コンサルタントにおける医者の不養生とは?
こんにちは、ケンゾウです。皆さん、「医者の不養生」という言葉をご存知ですよね?海外でも「Doctors make the worst patients.(医者が一番厄介な患者だ)」「Physician, heal thyself!(医者よ、汝自身を治せ! 新約聖書ルカによる福音書より)」といった表現があるように、ある意味で人間の本質をついた言葉なんじゃないかと思います。
もしこの言葉が人間の本質を付いているならば、コンサルタントに当てはめて考えてみることも出来るのではないでしょうか? 今日は、そんなことについて考えてみたいと思います。
では、具体的にどんな観点で考えてみましょうか?戦略ファームのコンサルタントの仕事は、究極的に考えると、クライアント企業の財務諸表の数字を向上させることと言えるかもしれません。利益を増やす(PL:損益計算書)、純資産を増やす(BS:貸借対照表)、キャッシュ・フロー(CF)を改善するといったことを目指して、様々な課題を解決していると言えそうですね。
それでは、コンサルタントが自分自身のPL、BS、CF(つまり家計の状態)について考えてみましょう。そう考えると、まさに「医者の不養生」状態に陥っている同僚の顔がいくつか浮かんできますので、やはりこの言葉は人の本質を付いていると言えそうな気がしてきました(笑)。
具体的にはどういう状態になっているのでしょうか?戦略ファームのコンサルタントの給与は世間の相場よりも高いと言えますので、PL上の売上(給与)は大きいといえそうです。それでは必然的に利益(→貯金に回るお金)も大きくなるかというと、ここがポイントで、かなり個人差があるようです。コンサルタントによっては、コスト(支出)も十分大きいため、利益が殆ど残らないような人もいるようです。
私が知る範囲では、コンサルタントだけあって、さすがにCFがマイナスになっている(給料以上に使っている)人はあまり聞いたことがありませんが、利益が殆ど出ずに、BS上の純資産(=貯金)がなかなか増えないという人はチラホラいるようです。不思議なのは、プロモーションして幹部クラスになってもなかなか利益が増えない人もいるようだということです。まあ、売上(給与)が増えるたぶんだけ、コスト(支出)も増えているんでしょうね(笑)。
何が起こっているのか?
米国の富裕層研究の第一人者であるスタンリー博士とダンコ博士の著書で「となりの億万長者」という本があります。この本によると、中小企業の経営者など、意外なほど身近な人が実は資産を築いていることが多いそうです。そういった人々は、事業で着実に資産を蓄積し、かつ投資(金融商品や不動産等)についても積極的で、一方で、実生活では非常に倹約家なのだそうです。なので、パッと見ただけではお金持ちに見えない、普通の隣人だったりします。
一方、コンサルタントというのは、お金が貯まらない人種の典型例なのだそうです。収入は多いものの、高級住宅街に住み、車や服、趣味にお金を惜しみなく使うため、貯蓄額という観点で見ると、驚くほど少ない人が多いのだそうです。つまり、フローは大きいが、ストックは小さいということです。
これらの記述は米国での調査結果を学術的に分析した結果らしいのですが、では日本の同僚コンサルタントを見ていてどう思うか?もちろん、コンサルタント毎に個人差はありますが、結構、日本でも似たような状況かなあというのが率直な感想です(笑)。元エンジニアで地味目な私からすると、わりと豪快に使う人もいるもんだなと。中には、本人は意外と質素なんですが、奥さんがお金を遣うのが大好きという人もいます(笑)。
しかし、これらは別に悪い話ではなく、コンサルタントとして普段は激務をこなしているんですから、ストレス発散とか自分へのご褒美としてお金を使うのも良いんじゃないかと思います。また、景気低迷の時によく言われるのは、先ずは富裕層がお金を使うようになって、デパートや高級品、不動産などで経済が回り出し、そこから徐々に消費の裾野が広がると言われています。そういう意味でも、ストックが小さいコンサルタントは富裕層とは言えなさそうですが、お金を使える人が使うというのは、日本経済にとっては必要なことなのです。つまり、一部のコンサルタントは、クライアントとの仕事だけでなく、プライベートでも日本経済に貢献しているということですね。
また、もう一つ思うのは、コンサルタントという人種には、意外にも自分自身の資産運用には疎い人が多いような気がします(あくまで私の主観ですが)。コンサルタントにはワーカホリックな人が多く、仕事が忙しくて投資に時間を使えていないのかもしれないですし、そもそもそこまでお金に執着していないのかもしれません。本当にお金を稼ぎたければ、投資銀行やファンドに行った方が稼げるわけですからね。私の同僚で、金融機関に対して金融商品の商品開発やマーケティングのコンサルを長年やっているにも関わらず、自分自身では定期預金しかやったことがないという人もいるくらいですから。
まあ、不養生な医者というのは意外と名医だったりしますが、そういう意味では、フローに依存している不養生なコンサルタントというのは、頑張って働いて稼ぎ続けないといけないわけですから、クライアントのためにしっかりと働くことでしょう。しかも、個人支出で日本経済にも貢献してくれるわけですから、大切にすべき貴重な存在なのかもしれませんね。