COLUMN
コラム:転職の技術
第901章
2019/05/31

緊張は悪か

— 緊張したときに思い出してほしいこと —

面接というのは多かれ少なかれ緊張するものです。私は面接に対して余り苦手意識がないのですが、そんな私でも、いざ面接!となるとやっぱり緊張します。ましてや面接に苦手意識のある方であれば、より緊張されるものと思います。

面接のときに緊張しなければ楽なのに。そのように思いながら面接に臨み、やっぱり緊張してしまい、その結果、焦って不用意な回答をしてしまったり、思ってもいないことをなぜか口走ってしまった、ということは、誰しも一度は経験したことがあるのではないでしょうか。

では、緊張をなくすにはどうすれば良いかですが、私はそもそも緊張は無理に無くさなくていい、むしろ、緊張する自分を前向きに受け止めて頂きたいと思っており、実際に面接に臨む方にもそのようなアドバイスをさせて頂いています。

緊張を克服したが

私はもともと、人前で話すのが苦手でした。

中学生の頃、役割上、イベントのたびに朝礼台の上で何かを話さなければなりませんでした。

その中学校は県下でも有数のマンモス校で、朝礼台に登ると1200~1300人の目が一斉に自分を見てきます。するとその瞬間、それまで覚えていたセリフが全て頭から吹き飛んでしまい、恥ずかしさと焦りで頭に血がのぼり、ますます何も話せないという状態によくなりました。「みなさん、おはようございます」と言ったあとに一言も話せず、30秒くらい沈黙してしまった時のことは今でも苦い思い出として鮮明に記憶に残っています。

その経験から、緊張は悪だと思い、緊張をなくすための努力をしてきました。場数をたくさん踏んで慣れることはもちろん、セリフを敢えて覚えず言いたいことの要点だけ覚えてアドリブで話せるように練習したりして、緊張しにくい自分を作ってきました。そして、徐々に大きな失敗をすることが減ってきました。

ただ、高校生の時の模試で、リラックスして受けることができたものの、いまいち成績が伸びないという時期がありました。その時は理由が分からなかったのですが、その後の経験により、理由が分かることになります。

身体が震えるほどの緊張体験

私がその後に経験した大きな緊張は2つあります。

1つは大学受験の時、もう1つは部活での公式試合です。

まず、大学受験のときのことです。前日一睡もできずに迎えた受験日当日、最初の科目は数学だったのですが、余りに緊張して手がブルブル震えてしまい、直線が波線になってしまいました。それを消して改めて直線を書こうとしても震えが止まらず、何度も書き直しをしてしまいました。身体ってこんなに震えることがあるんだと、我ながらびっくりしたものです。

次に、公式試合のことです。大学ではアーチェリー部に入ったのですが、2年時に初めてレギュラーに抜擢されました。試射を終えて公式戦初の1射目を打とうとしたところ、足がガクガク震えてしまい、まともに立っていられなくなりました。
膝が笑うという言葉は知っていたのですが、膝の関節と半月板が勝手にバラバラな方向に動き出してしまう始末。膝が笑うとは言い得て妙と納得してしまいました。

そのような、その後の人生でも味わったことのない大きな緊張を2つ経験したのですが、意外にこれらは共に良い結果をもたらしました。模試ではいつもCやDの判定だったのに大学に合格することができましたし、試合の結果も、四年間を通じて最も高い点数を出すことができました。

その時になってようやく、模試で成績が伸びなかったのは、緊張がなさすぎたからだったのではということに思い至りました。

緊張を感じたら今日はいける!と思う

緊張をすると、心身ともに大きなエネルギーを使ってしまうため酷く疲れます。その活動が真剣であればあるほど疲労が激しくなり、やりきったという感覚を味わう余裕もなくなります。そこでもし大きな失敗をしてしまったら、その原因を緊張と紐付けてしまい、緊張してはダメだ、緊張しないようにしなければと考えてしまいます。

しかし、失敗というものは、緊張してもしなくても一定の割合で発生しています。緊張するような場面での失敗は記憶に焼き付けられてしまいますが、実は、緊張しない場面でも失敗は起きていて、ただ、それが重要な局面でないため、記憶に残らないだけだったりします。

そもそも緊張というものは、動物が獲物を捕らえようとするときや、生命を脅かすような強敵と相対したときに、いつも以上の力を出させるために起こる「勝つための反応」です。緊張を作り出し、各種神経を鋭敏にさせることで、普段以上の戦闘力を出せるようにする、プラスの働きなのです。

もちろん、極度の緊張は心身を硬直させてしまい、敗北へと人を誘ってしまいますが、緊張しても、とにかく頭や身体を動かすことができれば、その能力は普段の何倍にも高められているため、実力以上の成果を出すことができるのです。

そのため、緊張したらどうしようと不安に思ったり、緊張してしまって焦りを感じてしまうのではなく、緊張するのは良い傾向だ、身体がいつも以上の力を出す準備をしているのだ、今日はラッキーだな、と前向きに捉えて頂ければと思います。

筆者 田中 祐介
コンサルタント実績
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