社内SEと一口に言っても
このところ「社内SE」ポジションが、弊社の求人でも増えてきました。SIerやITコンサルとは違い、事業会社における情報システム部門としてシステム開発や運用に関わるというポジションなのですが、実は注意が必要。いわゆる社内SEというポジションは、その業務内容が本当に多岐にわたり、企業によっても大きくそのタスクが異なるという特徴があります。
今回は、事業会社の社内SEを4つに大別して、それぞれご紹介したいと思います。
① 既存システムに対して、社内SEが改修・運用を行っている状態
まず一つ目のケースとして、現行システムの運用および改修を社内SEが自ら行い、既存システムの正常稼働を支えているケースです。これは現行システムが長く稼働している事業会社等で多く見られるケースで、10年以上稼働しているレガシーなシステムに対して、改修と運用を行っているという環境です。メインフレームが稼働している企業などでよくあり、言ってしまえば淡々と業務を廻していくことと、必要最低限の改修を行っていくミッションを有しています。
このケースの社内SE職は、業務的には非常に落ち着いていて、ワークライフバランスが取りやすいという特徴がある反面、技術者としては新しい刺激や成長を感じにくいというデメリットも存在しています。
一昔前の社内SEと言えば、この①のケースがほとんどでした。社内SEにはプログラミング力と技術力、およびユーザーの業務知識が求められ、逆に言えばそれ以外の知見はそれほど重要視されていないという環境と言えます。
② 既存システムに対して、ベンダーに任せて運用を行っている状態
次のケースとして、現行システムの運用をベンダーに大きく任せ、社内SEはそれを管理・コントロールしているというケースがあります。いわゆるベンダーコントロールと呼ばれる状態で、社内SEには技術力よりもマネジメント力を強く求められるケースです。
このケースは、現状は社内SEとして最も多い業務内容ではないかと思います。元々社内SEが行っていた運用業務そのものを、効率化を目的として外部のベンダーへと委託する形へ移行し、この形態がメジャーとなってきました。運用業務自体は、勝手知ったる「ユーザー系SIer」へと任せ、社内SE自身はそれを管理・是正するという役割に分かれるケースが、日本のIT業界では一般的と言えるでしょう。
このケースでは、社内SEとして上流工程を多く担えるという魅力はありますが、現行システムを長く稼働しているという状況には変わりありません。新規システム導入や次期システムへのリプレースなど、ダイナミックなシステム更改にはなかなか立ち会えないというもどかしさは含まれています。
③ 次期システムの企画・検討を社内SEが主導で行っている状態
次のケースとして、「運用」よりも「企画」という役割を社内SEに求められている状態です。これはITの投資意欲が強い企業や、企業としてITリテラシーが高い企業で昨今増えてきたケースで、経営陣や現場との距離が近く、企業にとって必要なシステムを自分達主導で考えていくことが求められています。
データ分析やAIの活用ニーズが高まり、企業にとって「攻めのIT」が強く求められるようになってきてから、この③のケースが増えてきたと言えるでしょう。コンサルティングファーム出身者なども多く活躍しており、社内SEにはビジネスとITを上手く結びつけるバランス感覚が求められています。長年、社内SEには「コストセンター」という不名誉なレッテルが貼られてきたのですが、昨今は「企業経営にとって重要な戦略部隊」というステージまで引き上げられてきました。
IoTの需要等からも、今後はより一層この新規サービスを担えるSEの需要が高まるはずです。英語力や社内調整力を生かしつつ、全社の各事業部を巻き込みながらも、社内SEが主体者としてプロジェクトを推進する役割を求められているのです。
④ システムの新規構築も、社内SEが内製化で行っている状態
最後は、上記の③で自分達が企画したシステムを、自分達で内製までしているというケースです。まだあまり日本には多くありませんが、ITの開発もベンダー任せにするのではなく、自分達で主体的に行えるように内製化部隊を備えているという状態です。今後、デジタル戦略を取り入れていく企業にとっては、このように内製化部隊を有していくケースも十分に考えられます。
社内SEの進化モデル
上記の①から④のケースは、言ってしまえば日本企業における社内SEの進化モデルとも言えます。淡々と運用だけをやっていた社内SEは、徐々に時代から求められなくなり、外部ベンダーへのアウトソーシングが主流となりました。ユーザー系SIerが台頭してきたのも、ちょうどその頃と言えるでしょう。ただ、さらに時代が進み経営とITの結びつきが強くなるにつれ、必要なITを自分達で考え、そこからスピード感を持って自分達で実装・構築を行うことまでが社内SEに求められています。運用だけを行うコストセンターとしての役割は終わりを告げ、企業経営にとって重要なミッションを負うまでに進化を遂げてきたのです。