「求める経験」が全部なくてもいいが・・・
転職エージェントと面談をし、求人票を見せて貰うと、こんな人本当にいるの?と思うような条件の厳しい募集要件が目につきます。
実は、求人を出している企業側も、「この条件を全部満たせる人なんていないよね。でもいたらいいよね。」「どんな人が欲しいかと言われたらこうなるよね。難しいけど。」という感じで求人を出している場合がままあります。
でも、それに甘えて、無いものはないと割り切って、面接で「経験がないです。出来ません。」と開き直って言ってもいいのかと言うと、それもまた微妙なところです。「出来ない人なら採用したくないよね、教育に時間がかかりそうだから。」と思われて見送りになってしまうからです。
では、どうすればいいのかと言うと、「経験は無いんだけど、すぐに出来るようになります。」ということが相手に伝われば良いです。企業側としては、いまは求めている経験が百パーセントでなくても、早期に百パーセントに近づくなら育成を含めて採用してみようか、という気分になります。
ただ、単に「できます、やります、信じてください。」と言うだけでは駄目です。よく、「企業からの面接のフィードバックで、熱意が感じられないとあったので、面接で情熱的に語るようにしたのに一向に選考に通過しない。」という話を聞くのですが、これは熱意を取り違えている典型的な例です。
企業が求めている熱意とは、経験をしていなくても、いざやるぞとなったときに、「こうすれば出来ます。」と見通しが言えるくらいの準備をしていることを指します。面接の場で情熱を見せることは、それはそれで大事なのですが、面接官はその場だけの熱意ではなく、それまでにコツコツ時間をかけて積み上げてきた姿勢や行動を、本当の熱意として評価します。
評価に値する準備とは
具体的に、評価に値する準備とは何かと言うと、大きく2つ、「仕事上での準備」と「仕事外での準備」があります。
仕事上での準備とは、どんな仕事をする時にも、三年後、五年後、十年後などの自分を想像して仕事に取り組むことです。
どんな仕事でも、必ずビジネス上の目的があります。その目的達成のために、まずは権限のある上位者が動き、いくつかのステップを経て下位者である自分まで仕事が下りてきます。
仕事が下りてくるその一連の流れを把握し、各ステップを実行する人々の仕事を想像したり、実際に仕事の内容を聞いて理解しておくと、いざ自分がやるぞとなったときに、少なくとも何を、どういう段取りで、どんな感じでやればいいのかを想像することができるようになります。これは、社内業務についてもプロジェクト業務においてもどちらにもあてはまります。
仕事外での準備としては、自己学習、自己研鑽です。
仕事上で準備をするといっても、その範囲は限られていますし、ひとつの仕事を終わらせるにはそれなりの時間がかかりますので、学べる量、質、スピード等様々な点で限界があります。また、種類の異なる仕事については、仕事上で疑似体験をすることは難しいです。
そのため、プライベートの時間を使って、本を読んだり、セミナーに出たり、トレーニングを受けたり、実践の場を作ってみたりして、仕事上では得られない知識・経験を積むことが必要となります。
これらは仕事外のため職務経歴とは言えませんが、職務を遂行する準備をしてきたとしてアピールすることが可能です。
例えば、将来会計系のシステムに携わりたいのであれば、会計大学院でIFRSの勉強をするとか、そこまでではなくとも、簿記2級や3級を取得するなどの準備は可能です。グローバルの要素をそこに入れたいなら、BATICやUSCPAを取得するといった手段もあります。
また、Web系の仕事に就きたいのであれば、土日にWeb系の仕事をスポットで請け負うとか、モバイルアプリを自作するといったこともできますし、コンサルタントを目指すなら、中小企業診断士の勉強をしたり、社会人向けMBAコースでディベートのスキルを磨くといったこともできます。
これらは仕事外のことではありますが、負荷のかかることであり、かつ実戦で使えるノウハウでもありますので、熱意を持って準備をしてきた人だなと企業側もみなしてくれます。
熱意は見せるものではなくて積み上げるもの
誰かに何かの仕事を任せようと思ったとき、本当にその人に任せて良いのかを判断する基準は、任せようと考えているその人自身が仕事をイメージできるかどうかになります。
同じ「経験したことがない」人が二人いたとして、一人は全く何をすべきかが分からない人、もう一人は知識があり、業務外だけども似たような経験がある人だった場合、どちらに任せたいと思うでしょうか。結論は火を見るより明らかです。
熱意は、一朝一夕の努力で伝わるものではなく、ましてやその場の勢いだけで伝わるものでもありません。いつになるか分からないが、いつか来るであろうその日のために、本当の熱意をいまから積み上げて頂ければと思います。