都合の悪いことは隠した方が有利か
転職活動を始めてみると、触れたくない過去をどう扱うか、といった問題に直面することがあります。例えば、留年や浪人、会社と会社の就業期間のブランク、短期転職、全く違う業界での就業、自社待機、休職などです。
これらは、できれば履歴から消してしまいたいものですが、過去を変えることはできないため、さて、それをどう扱うべきかと頭を悩ませる方も少なくないのではないでしょうか。
私がよく見るパターンは、都合の良いところだけを表に出し、都合の悪いところは隠しておく、といったものです。中には、自分は表に出した方がいいと思ったものの、隠した方がいいと転職エージェントからアドバイスを貰ったという方もいます。
実際、それが選考において本当に有利に働くものなのでしょうか。
選考官は粗探しのプロ
新米ならともかく、通常、書類選考官や面接官は、それまで非常に多くの応募書類に目を通していますし、実際に面接にて多くの転職希望者に会っています。当然ながら、ほとんどの転職希望者は自分をアピールするために必死であり、あの手この手を尽くして自分を良く見せようとしてきます。
しかし、選考官はそれを前向きに理解しようとする一方、転職希望者が主張することを鵜呑みにせず、何か違和感がないかを探しはじめます。その際、真っ先に確認するのは、経歴の不整合や穴だったりします。つまり、隠しておいたはずのことが、逆に突っ込んでくれと言わんばかりの状態になってしまうのです。
疑惑の総合商社になるとリカバリーが効かない
『疑惑の総合商社』とは、かつて不審なことが五月雨に出てきた国会議員に対し、ある国会議員がその人物を評した言葉です。その内容の真偽や是非はさておき、人の心理・印象というものをうまく表している表現だなと思った記憶があります。
何もない、問題ないと言っていたのに次から次へと不審なことが明るみに出てくると、仮にその人の実績が如何に素晴らしくても、『この人は疑惑の総合商社だな』と思われてしまいます。一旦そう思われてしまうと、人として信頼されなくなってしまい、それからあとは何を弁解してもリカバリーが効かなくなります。
中途採用における選考も同じで、隠しておいて、突っ込まれて話をして、また突っ込まれて、話をして・・・を繰り返してしまうと、一回目で不審、二回目で疑惑、三回目で疑惑の総合商社が確定となります。選考官は、『きっとこの人は、入社後もまずいことは嘘をついてごまかして、いつか危ないことをやらかす人なんだろうな』と考え、どんなに経歴が良くとも一緒に働きたいと思わなくなります。
みなさんも、ニュースで弁解する企業のトップや議員などを見て、『最初から言っておけばいいのにバカだなー』と一度や二度は思ったことがあるはずですが、選考において都合の悪いことを隠すのは、まさにそれと同じことをしている訳です。
そのため、都合が悪く、しかし突っ込まれそうなことほど、最初から明らかにしておいて頂きたいと思います。
なお、ここでは、『ネガティブなことを余さず表に出しましょう』と言っているわけではありません。やはり選考はアピールの場ですので、企業側に期待を持って貰えるようにするのが基本です。都合の悪いことをどの程度、どの様に表すべきかはケースバイケースですので、困った時は私どもにご相談ください。