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AIエンジニアに求められる高い専門性
生成AIの登場によって、日常業務における革新的な変化が進んでいます。社内での活用が急速に進んでおり、定常業務として時間を取られていたものが一瞬で終わることも増えました。各社の話を伺ってみると現在は社内での活用が多いように感じますが、今後は商用サービスへの組み込みがさらに進み、社会への実装が急ピッチで進んでいくはずです。
そんな中、実はAIエンジニアのニーズにも変化が出ています。
従来AIシステムを構築するためには、複雑なデータモデルの設計や、深い統計知識をもとにしたアルゴリズムの構築等が求められていました。膨大なデータを分析し、それに基づいたモデルを設計する能力が必要になるのです。開発するためには高度な数学的スキルや統計学の知識を駆使して、アルゴリズムの開発や最適化を行う必要がありました。なので、AIエンジニアになりたいと思っても、誰でも簡単に挑戦できる世界ではなかったのです。
AIの世界に飛び込むためには、システム開発の知見だけでなく統計や機械学習に関する学習が必要でした。
さらに、AIシステムを実運用するためには、データの収集・前処理、モデルの学習、精度の評価、最適化など、複雑な工程を一貫して管理できる能力も重要です。そのため、AIエンジニアには専門性が高く、多くの時間と労力を投じる覚悟が求められました。
生成AIの登場によって起こっている変化
それがChatGPTに代表される生成AI技術の登場により、求められるスキルセットにも変化が現れています。これらのAIモデルは、既に学習された大規模なデータを基に、テキストや画像を生成する能力を持っています。このオープン化された生成AIにリーチがしやすくなったことで、仮に深い技術知見を有していないエンジニアであっても、API連携をすればAIシステムが構築しやすくなっています。結果的にAIを“作る”というよりも、AIを“使いこなす”エンジニアのニーズが高まりました。
そのためには、サーバサイドの開発スキルやクラウド上の開発経験がAI開発における重要な要素になっています。従来のように高い専門性を有していなくても、クラウド上での開発経験があるならAIシステムの開発に格段に挑戦しやすくなっています。
高度な専門スキルも引き続き重要
一方で、世の中のあらゆる業務に学習データがそろっているわけでは当然ありません。ゼロからデータを収集しなければならない個別業務や特定領域もまだまだ存在しています。未知の業務プロセスをAIに置き換えるためには、業務への深い理解とそれにAIをどう適応できるのか、落とし込む力が求められます。データ基盤の構築や分析モデルの設計、それに向けた必要なアーキテクチャの検討等、高度な専門的なスキルも求められるのです。
それに加えて、生成AIを活用する上ではプライバシーや倫理的な側面での問題も出ています。品質管理やセキュリティ等、AIシステムにおける検討・対応事項も増えており、対応するエンジニアが必要となるはずです。
これからの転職市場
生成AIがもたらした変化は、AIエンジニアのキャリアに新たな方向性を示しています。今後のAIエンジニアには、従来の専門的な技術を持つだけでなく、AIを使いこなし、より広い視野でビジネス価値を生み出す力が求められるでしょう。転職市場においても、より柔軟なキャリアパスが求められる時代に突入しています。