「会社の将来性」とは、いったい何を指すのでしょうか。
もちろん長期にわたって会社の成長が見通せる環境の方が、安心感もあって良いのは分かります。ただ将来性と一口に言っても曖昧な基準で幾らでも判断が出来てしまい、見通す人の視点によって大きく変わります。良い会社とも不安な会社とも捉えることが可能で、言い換えればどんな企業で合ってもポジティブな見通しは割と立てやすいのです。
一般的に、会社として扱う商材や提供サービス、関わる業界・業種等で将来性の有り・無しを判断されることが多いように感じます。社会的にずっと続いてきた業種や、これからの時代に価値が上がるだろうと目されるサービス等は、今後も将来性もあり、安泰な企業とされがちです。ただその見通しは、果たして正しいと言えるのでしょうか。
安定企業の将来性
どんなにそのサービスが長年安定して提供されていたとしても、決して安泰ではありません。どんな大企業であっても、社会的なインシデントによってあっという間に不安定な状況に陥ることはあるのです。
コロナ禍では航空・鉄道業が、震災時には電力会社が、リーマンショック時は金融業界から波及して多くの製造業が。会社として大きなダメージを受け、それによって在籍していた多数の社員にも何らかの影響が出ました。どんなに優位性の高いサービスを提供している企業であっても、1年後は安泰とは言えないのです。一つの事件によって世界が変われば、影響は少なからず出るのです。
新進気鋭企業の将来性
その一方で、時流に乗った新進気鋭の会社だからといって、将来性が輝かしいとも限りません。逆に注目が集まる業界であればあるほど、立ちはだかる壁がいきなり現れます。
競合となる大手外資が日本参入を果たすこともあるでしょう。国の規制が突如強化されるかもしれません。競合にせよ外的環境にせよ、一つの変化で大きなインパクトが生まれます。
先進的なサービスでも。イノベーティブなテクノロジーでも。それが社会的に盛り上がれば盛り上がるほど、覆すビッグウェーブが簡単に起きてしまうのです。
スマートフォン市場の移り変わり
「ブラックベリー」という映画があります。
かつて存在したキーボード付きの携帯電話「BlackBerry」がテーマの作品で、新興のスマートフォン市場で快調なヒットを飛ばしていたカナダのベンチャー企業を舞台とした、実話ベースの作品です。BlackBerryは日本でも発売されて、街中でも利用する若者を見かけるようになったのを覚えています。2010年ごろには全世界の携帯電話市場でも、高いシェアを誇るまで成長しました。
同社の快進撃を支えたのはギークなエンジニアたちでした。高いスキルのエンジニアが世界中から集められ、世界を驚かすテクノロジーでクールなプロダクトを提供する。一見、会社としても抜群の将来性が感じられるのですが、これが悲しいほどに長く続きません。
アップルがiPhoneを発売したことで、全てが変わってしまうのです。
BlackBerryの特徴は、スマホに搭載されたキーボードでした。押しボタンの存在こそが操作性を際立たせているとして、キーボードが無い斬新なiPhoneに対して、発売当初は意に介さずにいます。ただ、社会からの反響は非情です。iPhoneの爆発的に人気に押され、市場から徐々に存在感が無くなって行きます。
将来性を生み出す源泉
企業が扱うサービスそのものも、もちろん大事です。ただ個人的には、それに加えて会社が有する志もとても大事だと思うのです。
自社の価値を何に据えて、どんなサービスをクライアントへ提供しようとしているのか。逃げずにそこに立ち返り続ける会社であれば、どんな変化が起きようともビジョンを描き続けることが可能なはずです。
その志を忘れ、自社の優位性を過信してしまうと将来性にも雲行きが怪しくなります。短期的な将来予測だけでなく、その会社の将来を生み出す源泉となる志をしっかり把握することも大事だと思っています。