COLUMN
コラム:転職の技術
第1058章
2022/01/28

厳しい面接官の気持ち

今回のコラムでは厳しい面接をする面接官の気持ちについて考えてみたいと思います。
以前転職者から「面接官が終始厳しい表情だった…この会社に入社しても大丈夫でしょうか?」との相談を受けました。最終的にその方は入社を決め、入社後はかつて厳しい表情だった面接官も優しいお人柄だったことがわかって安心したのですが、面接官の印象によっては「入社後はこの人と一緒に働くのかな?大丈夫かな?」と心配になってしまいますよね。

実はこの相談を受けたとき、私はシェイクスピアの有名な戯曲「テンペスト」のある場面を思い出しました。それはミラノ公国の王がナポリ王の息子から娘への求婚を受けた際に、「手軽に勝ち得てはせっかくの宝も手軽にあしらわれる。ひと苦労させなくてはなるまい。」と、わざわざナポリ王の息子に苦労をさせた場面です。ミラノ公国の王は元々娘とナポリ王の息子を結婚させようと計画を練っていたわけなので、内心大喜びで結婚に賛成するはずですが、あえて苦労を仕掛けているのです。

面接でも上記の場面と同じことが起こりうるのではないかと私は思います。つまり、企業は面接や適性検査のような試験によって転職者の入社可否を判断しますが、これは良い人材を獲得したいという気持ちだけでなく、転職者にとっても厳しい試験をくぐり抜けたことに誇りを持って長期的に働いてほしいという気持ちもあるのではないかと思うのです。何の苦労もせずに入社した人は企業に対する強い思い入れもなく、何か困難があったときにすぐに辞めてしまうかもしれません。逆に苦労して入社した方であれば、何か困難があったときに、あのとき苦労して入社したのだから今は踏ん張るぞ、と頑張れることもあるでしょう。

他にも厳しい面接の背景には、ストレス耐性を見たい、という意図があるかもしれませんし、単純に面接官の体調が良くなかっただけかもしれません。転職者からすると「何で厳しい面接をするの?」と思われるかもしれませんが、「厳しい面接官とは相性が悪い」とは一概には言えませんので、しっかりと見極める必要があります。(もちろん過剰な圧迫面接は論外です。)
ぜひ面接官には面接官なりの立場や気持ちがあることを想像して、総合的な判断をしていただけると良いのではと思います。

<参考書籍>
ちくま文庫『テンペスト — シェイクスピア全集〈8〉』ウィリアム シェイクスピア著 松岡 和子訳

筆者 橋本 怜奈
コンサルタント実績
インタビュー記事
資格
  • 国家資格 キャリアコンサルタント
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