DeNAのIT基盤部を率いる小野篤司氏に、リーベルのSE出身コンサルタント・鈴木裕行が迫る対談の後編。今回は、他社から転職して同部に入り、現在、サーバエンジニアとして働く李堯桓氏と竹内洸祐氏にも加わってもらい、転職先にDeNAのIT基盤部を選んだ理由や、入社してみて感じたことなどを率直に語ってもらう。さらには同部の極めてフレキシブルで自由度の高い働き方についても小野氏が説明。現在、あるいは近い将来に転職を考えているインフラエンジニアがDeNAを候補として検討する上で、参考になることは多いはずだ。
プロフィール
- 株式会社ディー・エヌ・エー
システム&デザイン本部
スマートハードウェア事業室 室長 兼 IT基盤部 部長
小野 篤司 氏 - 2004年DeNA入社。一貫してシステム基盤管理に従事しソーシャルゲームをはじめDeNAの数多くの事業で高トラフィック、高可用システム設計・運用を実施。
aws東京リージョン開設以前からのクラウド利用推進や、2011年の震災時にはactive-activeなディザスターリカバリー構成の設計なども行う。
近年ではSDxを用いたprivate cloud環境の導入など中長期的技術施策に取組む傍ら、スマートハードウェア事業室を立上げ、技術部門による事業創出も行っている。 - 株式会社ディー・エヌ・エー
システム&デザイン本部
IT基盤部
李 堯桓 氏 - 韓国/ソウル出身。2005年から韓国にて就業を開始し、2007年に来日。CやJavaでの開発を経て、2011年からはBtoCサービスのインフラ構築に従事。2013年にはWebサービス企業へ転職し、ネットワークからセキュリティまでインフラに関して広く業務を担当。現在はDeNAにてサーバの構築、監視モニタリングを担当している。
- 株式会社ディー・エヌ・エー
システム&デザイン本部
IT基盤部
竹内 洸祐 氏 - 2013年からマネージドサービス企業にてサーバ・インフラに関わり始め、インフラの導入設計から構築、および監視・保守までを担当。その後、2017年にDeNAへ転職。現在は同社のソーシャルゲーム用のインフラの保守・運用をメインで担当している。
- 株式会社リーベル
取締役 コンサルタント
鈴木 裕行 - 沖電気工業(OKI)にて、官公庁を中心とした要件定義・企画構想からインフラやネットワークの構築、アプリケーション開発などを担当。一貫してマネジメントに関わった後、2012年からリーベルへ参画。マネージャー人材やインフラエンジニアなど、IT業界に特化した転職支援を実施している。
ハードルは高いがチャレンジしてみたいと入社を決意
鈴木:まずはお二人がこれまでどういうお仕事をされてきて、今、DeNAではどんなことをしているのかを教えていただけますか?
李氏:前職は企業向けのASPサービスの会社で、インフラ周りのエンジニアとして働いていました。それほど規模の大きな会社ではなかったので、ネットワークからサーバ、セキュリティまで、全てを見ていましたね。DeNAでは、基本的にサーバに絞って、構築や監視モニタリングなどを担当しています。
鈴木:ずっとインフラ周りのエンジニアとして仕事をされてきたんですか?
李氏:そうですね。前職以前も全てサーバやネットワーク関連です。10年くらい前に、1~2年、C言語を使った開発をしたこともありますが。
鈴木:ありがとうございます。では、竹内さん、お願いします。
竹内氏:はい。私は、前職はサーバの運用会社で、クラウドやオンプレなど、サーバの運用監視保守をやっていました。現在はソーシャルゲームのチームで、弊社がサービスを提供しているソーシャルゲームのサーバの運用保守を担当しています。
李氏:同じIT基盤部の第二グループに所属していて、竹内はソーシャルゲームチーム、私はソーシャルゲーム以外を担当している感じですね。
鈴木:なるほど。お二人とも、転職先としてなぜDeNAを選んだんですか?
竹内氏:そうですね。転職活動を始めて、実は他にもゲーム関連の会社と、インターネット事業関連の会社から内定をいただいていたんです。そうした中で、DeNAにも内定をもらったんですが、正直、DeNAにはレベルが高い印象を持っていて。不安だな、という思いはありました。
鈴木:確かにDeNAの技術力の高さは、業界内でも有名ですからね。
竹内氏:ただ、周りの人に相談した時に、やはりDeNAという会社はみんな知っていて、そこに受かったってすごい、と言ってもらえて。不安だと打ち明けても、頑張ってその不安を乗り越えれば成長につながるんじゃない? と後押ししてくれたんです。それだけ多くの人に知られているブランド力のある会社から声がかかったのは大きなチャンス。せっかくご縁をいただいたんだし、頑張ってチャレンジしてみよう、と思いました。
鈴木:なるほど。李さんはいかがですか?
李氏:ほぼ同じですね。私もインターネット事業関連の会社2社とDeNAから内定をもらっていて、DeNAはハードルが高いんじゃないかというイメージがありました。ただ、だからこそ自分の培ってきた経験やスキルが、その中でどれだけ通用するか試してみたいと感じて。
もう1つ、DeNAはモバゲーでグッと伸びてきて、今、新たな軸となるサービスを探しているところ。次に何が出てくるかわからず、そこがまた面白いなと。そういうところで自分もチャレンジしていきたいと思いました。
DeNAには「フォローする文化」が根付いている
鈴木:よくわかりました。お二人とも、DeNAにはハードルが高いイメージがあったとのことですが、やはり実際に入社してみてギャップを感じるところはありましたか?
李氏:確かに、技術的に特化されたエンジニアや、レベルの高いエンジニアがたくさんいると感じましたね。しかも意識も高い。
鈴木:ただ技術だけあるのではないと。
李氏:そうですね。わからないことを知ろうとする意欲が高いし、問題があればどんどん改善しようとするし。
鈴木:なるほど。竹内さんはどうですか?
竹内氏:そうですね。先ほど申し上げたように、やはり漠然と、DeNAという会社にはスーパーエンジニアみたいな人がたくさんいて、その人たちがガンガン個人で仕事をして引っ張っている、という思い込みがあって、自分が通用するのか不安だったんです。ただ、入社してみると、確かに皆さん技術レベルもプロ意識も高いのですが、それ以上にきちんとフォローしてもらえる環境がありました。
鈴木:決してポツンと放っておかれるようなことはないと。
竹内氏:ええ。エンジニアというと自分の世界に入り込んでしまうようなイメージもありますが、そうじゃなくて。私みたいな新しい人が入ってきてわからないことがあったら皆さんフォローしてくれますし、こういうふうにしたほうがいいよ、とか、こういう視点を持ったほうがいいよ、といった的確なアドバイスもいただけます。会社自体に、みんなでやっていこう、という「フォローする文化」が根付いているんだなと思いましたね。
鈴木:なるほど。実は我々がご紹介する時も、DeNAは技術力が高いということは皆さんご存知で、「入社してついていけるでしょうか?」とおっしゃる方も多いんです。
竹内氏:中に入ってからの心配は全くする必要はないと思いますよ。会社でもチーム間でもすごくフォローしてくれますから。私も入社直後、ミーティングで上司から「DeNAには独自の文化があるから、わからなかったら何でも訊いて」と言ってもらって、すごく楽になりました。また、ヒューマンリソースの部署も、普段の業務に関する不安の相談に乗ってくれますし。会社全体としてフォロー体制が整っています。
李氏:全く同意見ですね。
入社後、どうやってキャッチアップしていった?
鈴木: DeNAに入ってから身につけなくてはいけない知識もあると思うのですが、そのあたりはどうやってキャッチアップしていきましたか?
李氏:そうですね。まず、サーバやネットワークにしてもDeNAオリジナルの環境があるので、そういうものにどう向き合っていくかが最初のポイントになると思います。ただ、今まで触ったことがないものでも、仕事をしているうちに「こういうふうに使うのか」「こういう見方をするのか」とだんだんわかってくるのが面白く、それがモチベーションにもなりますね。いろんな視点が自分の中にできてくるというか。逆にやることが最初から全部わかっていたら面白くないじゃないですか。
鈴木:確かに。あと、先ほど小野さんが、DeNAさんの場合、サーバやネットワークのエンジニアでも、アプリケーション開発の知識を持っていないと仕事にならないとおっしゃっていましたが、そのあたりはいかがですか?
李氏:それもそのとおりで、やはり最初のうちは苦労しましたね。そもそも私の場合、10年ほど前にアプリケーション開発をやっていましたが、当時は正直苦手としていましたから。
鈴木:それをどうやってキャッチアップしていきましたか? そのあたりも周囲の方からフォローしてもらえるんでしょうか?
李氏:もちろんフォローはしてもらえますが、全部教えてくださいというわけにもいかないので(笑)。インターネットで調べるとか、あとは既存のコードはたくさんあるので、それらをサンプル的に見ながら、「ああ、こういう書き方をするんだな」と理解していくという感じでしたね。
竹内氏:実は僕は今、李が言っていた状況のまさに真っ只中で(笑)。ウチのツールってPerlで書かれているんですけど、知らずにいきなりPerlで書かれたコードを見ても、「なんだ?!」となるじゃないですか?
鈴木:そうですよね。
竹内氏:そのへんについてもフォローはしてくれますが、自己研鑽しないと人の時間を奪ってしまいますし。勉強の一環として、Perlで書かれているモバゲーのゲームのソースコードを読んで、「これはこういうことですよね?」とメンターの方に質問する、というやり方をしています。実際に動いているものを見ながら勉強している状態ですね。それと、外部の研修などもどんどん行って構わないと言われているので、時間を見ながらそういうものにも参加しています。
鈴木:やりがいはすごくありそうですね。
竹内氏:そうですね。今までやってこなかったことですけど、「こういうふうになっていたんだ」と理解すると面白いなあと感じますね。
鈴木:インフラ周りのエンジニアでもアプリケーション開発のスキルを身につけてフルスタック的に働くというのは、今後のキャリアを考えても非常に有益ですよね。
李氏:最近、というか結構前から、インフラエンジニアもコードを書けないといけない時代になっていますよね。
何時に来て何時に帰るかは自由。連絡の必要もなし。
鈴木:それではここから、再び小野さんにも加わっていただき、DeNAのIT基盤部での「働き方」について伺っていきます。やはりインフラなので、夜中に急遽、障害対応にあたらなくてはならない、といったこともあると思うんです。そのあたりも含めて、「働き方」についてどのような取り組みをされているのでしょう?
小野氏:僕は2004年からDeNAにいるんですが、その当時は「健全に働く」なんて考えたこともありませんでした。ただ、会社のステージとして、もはやそれ一辺倒ではダメだということで、近年は労働環境をかなり重視するようになっています。
具体的な制度でいうと、3年前からIT基盤部では、いわゆる在宅勤務にあたる「ワークフロムホーム」というものを導入しました。インフラ部門ではどうしても障害対応などが発生するので、土日や深夜などに急に作業をしなくてはならなくなることがあります。それなのに朝10時に必ず会社に来なさい、というのはどうなんだ? と思い。
鈴木:そこで在宅で仕事をしてもいいことにしたと。
小野氏:ええ。実際僕らも、夜中や朝方まで作業をしていた時は、時間を気にせずに勤怠していたので、それを制度として認めた形ですね。「前日に障害対応をしていたので遅れます」ではなく、理由は問わずに「ワークフロムホーム」で自由に好きな場所で勤怠していいですよ、と。今のところ週2回までと決まっていますが。これは全社的な制度ではなく、IT基盤部など一部の部門だけのものです。
鈴木:それは良いですね。
小野氏:もう1つ、普段から、何時に会社に来て何時に帰るということは連絡しなくていいようにしています。少し前までは、一応基準となる時間はあって、12時半より遅くに来る時や17時前に帰る時は連絡してもらうようにしていたのですが、それもやめてしまいました。
鈴木:ええっ、そうなんですか! それはすごいですね。
小野氏:「今日は午前中に用事があるから、会社にちょっと遅れて行きたいな」という日だってあるわけですよね。我々の仕事は、1日に出すアウトプットで評価するものでもないですし。単にゆるいだけということではなくトータルでのパフォーマンスを求めるのは当然ですが、プライベートと仕事のバランスを自分の裁量で取ってもらったほうが、長くウチの会社で働いてくれるだろうという考えから、このような形にしています。
鈴木:かなり自由度が高いですね。自律的な人が多ければそれでも大丈夫ということですね。一方で、結婚をしてお子さんが生まれたり、共働きをしていたりと、社員の方々のライフステージも変わっていくと思うんですが、そうしたライフステージに合わせた働き方についても、フレキシブルに対応されているんでしょうか?
小野氏:そうですね。IT基盤部は今のところ女性が1名と非常に少ないんですが、先日も男性で育休を取った人がいました。特に女性の場合、男性と分担できない、お母さんにしかできないということもやはりあると思うので、そういうところには配慮していきたいと思っています。
鈴木:李さんと竹内さんは、実際に働いていてどのように感じていますか?
竹内氏:私は結婚していないのですが、前職に比べると天国だな、というのが率直な感想ですね(笑)。前職だと、遅くまで障害対応にあたっていても、翌日9時半に出社しなくてはならず、体調を崩したりもしていたんですよ。今は、仮に深夜まで障害対応にあたっても、家に帰ってゆっくり寝られますから。本当に感謝しています。
李氏:IT系の会社はある程度裁量に任せるところが多いと思うのですが、まさに裁量の中の裁量といった感じですね(笑)。私は来週、子供が生まれる予定なんです。
鈴木:おめでとうございます!
李氏:ありがとうございます。その関係で、最近は朝8時に出社して、夕方17時には帰ってしまうことがほとんどなんですが、それでも誰も何も言わないですし。仕事がちょっと残っていたら、自宅に戻って続きをやることもありますが、それも勤務時間として認めてもらえます。勤怠に関しては本当に自由ですね。これ以上の自由はないんじゃないと思っています。
鈴木:ワークライフバランスもしっかり実現できる環境ですね。
DeNAはチャレンジを評価してくれる会社
鈴木:李さんと竹内さんは、DeNAで働くやりがいやモチベーションを、どんなところで感じていますか?
李氏:そうですね。やはり先ほど申し上げたように、DeNAにはオリジナルの基盤もたくさんありますので、それを1つずつ理解して、改善していくのが面白いですね。また、その改善したことがみんなの役に立つというところにモチベーションを感じます。
鈴木:なるほど。竹内さんはいかがでしょう?
竹内氏:DeNAは、新しい技術を取り入れることに積極的ですし、何よりもチャレンジすることに評価してくれるんです。今まで触ったことがない技術にもどんどん挑戦して、それで結果が出れば評価を得られます。
日々、新しいことを知れますし、新しい技術にも挑戦できるし、またそのための環境も整っている、ということで、自分からいろいろなことにチャレンジしたいという人にはすごく良い会社だと思います。私にとってもそこがモチベーションになっていますね。
鈴木:ありがとうございます。それでは小野さんに、ビジネスの観点から、DeNAは今後こういうことをやっていく、こういう面白い仕事ができる、ということをお話し願えますか?
小野氏:はい。DeNAは、いい意味で事業ドメインを定めていないんです。ゲームが主力の時期もありましたが、その一本足から脱却して、経営の柱を2本、3本作る、というのがここ数年の大きな課題。なので、これからもいろいろな事業にチャレンジしていきます。
そのチャレンジをするにあたってですね…。自分が人生経験を積むうちに興味を持つようになる世の中の仕組みってあるじゃないですか? 例えば私だと、親が病気になって、この日本という国の医療や介護はどうなるんだろう? と思いを馳せるみたいに。
そこまで大したことではなかったとしても、それぞれの人に、人生のフェーズごとに変わる興味があるはずです。その点、DeNAは、今後ますます多角的に事業を展開しようとしているので、ここで働けば、そうした自分の興味に近いサービスに携われる可能性がある。「新しい興味の受け皿になれる」というのが、この会社で働く一番面白いところかなと思います。
鈴木:なるほど。それはインフラエンジニアとして働く上でも、ということですね?
小野氏:もちろんそうです。インフラエンジニアをやっていて、自分が興味を持って実現したいサービスが出てきた時に、それに取り組めるチャンスも多い会社だと思いますので。
実際、私自身、これまでずっとインフラを担当してきましたが、そこで培ったキャリアを活かして新しい事業やサービスの創出に取り組んでみたいと思うようになりました。そのためのハコとして、2017年5月、技術本部の中に、技術系部門からの事業創造を目指す「スマートハードウエア事業室」という部署を立ち上げました。
鈴木:そこからどういう事業が生まれるかも楽しみですね。
現状のスキルレベルどうこうより、意志やモチベーションを持った人に来てほしい
鈴木:それでは最後に、これからDeNAに転職を希望する人に対して、「こういう人と一緒に働きたい」ということを含めて、メッセージをいただければと思います。
李氏:先ほどから話に出てきているように、DeNAは個人に与えられる裁量が非常に大きな会社です。自分にやりたいことがしっかりあれば、チャレンジできるし、それに対するバックアップも受けられる。ぜひとも主体性とチャレンジ精神を持った方に来てほしいですね。
竹内氏:李の言うとおりで、DeNAはやりたいことがあればいくらでもやらせてくれる会社なので、「自分はこれをやりたい」という強い思いを持っている方と一緒に働きたいですね。社員を大切にしてくれて、入社後のフォロー体制もしっかりしているので、不安を持たずに飛び込んできてもらえればと思います。
小野氏:今のスキルが高い低いに関わらず、しっかりした意志やモチベーションを持っていて、それに対して前のめりに取り組んでいける人であれば、DeNAでは必ずやっていけると思います。なんとなく入って、自分探し的なことをウチの会社でやるのはちょっと厳しい。何かモチベーションを掻き立てられるものがDeNAにはある、と感じてもらえる方は、現状のスキルレベルはいったん置いておいて、ぜひとも応募してみていただきたいと思いますね。
鈴木:大変よくわかりました。本日は長時間、ありがとうございました。
小野氏・李氏・竹内氏:こちらこそありがとうございました。
ライター プロフィール
- 荒濱 一(あらはま・はじめ)
- 1971年、東京生まれ。上智大学文学部教育学科卒。高校教諭、タイ・インドでの広告代理店勤務を経て、1998年からライターとして活動を開始する。現在、ビジネス(特に人材・起業)、IT/デジタル機器、著名人インタビューなど幅広い分野で記事を執筆するほか、広告コピー分野でも活躍。
- ◇主な著書
- 『新版 結局「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(高橋学氏との共著)
『新版 やっぱり「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(高橋学氏との共著)